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反復Mathias強制により基数hが大きくなること

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$$\newcommand{cf}[0]{\operatorname{cf}} \newcommand{forces}[0]{\Vdash} \newcommand{M}[0]{\mathbb{M}} \newcommand{P}[0]{\mathbb{M}_{\omega_2}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} $$
  1. $x, y \subseteq \omega$について$x$$y$のほとんど部分集合であるとは$x \setminus y$が有限集合となることを言う。
  2. $D \subseteq [\omega]^\omega$が開集合であるとは、$D$がほとんど部分集合について閉じていることを言う。
  3. $D \subseteq [\omega]^\omega$が稠密であるとは、どんな$x \in [\omega]^\omega$についても$y \in D$が存在し、$y \subseteq x$となることを言う。

項目2の意味で$[\omega]^\omega$に位相を入れたとき、開集合に限定すれば、項目3の意味での稠密性と通常の位相空間論の意味での稠密性は同じ概念であることに注意する。

$\mathfrak{h}$$[\omega]^\omega$の稠密開集合の族であって共通部分が空なものの最小サイズとする。すなわち
$$ \mathfrak{h} = \min \{|\mathcal{D}| : \text{$\mathcal{D}$は稠密開集合の族} \land \bigcap \mathcal{D} = \varnothing \} $$
とする。

$\mathbb{M}$をMathias強制法とする。すなわち
$$ \mathbb{M} = \{ (s, A) : s \in [\omega]^{<\omega} \land A \in [\omega]^\omega \land \max s < \min A \} $$
で順序は
$$ (t, B) \le (s, A) \iff s \subseteq t \land B \subseteq A \land t \setminus s \subseteq A $$
で定める。

順序数$\alpha$に対して$\mathbb{M}_{\alpha}$でMathias強制法の$\alpha$回加算台反復強制を表す。

この記事の目的は次を示すことである。

CHを仮定する。このとき
$$ \mathbb{M}_{\omega_2} \forces \mathfrak{h} = \aleph_2. $$

まずワンステップのMathias強制で言えることを述べておく。

$G$$(V, \mathbb{M})$ジェネリックフィルターとする。$g = \bigcup \{ s : (s, A) \in G \}$とおく ($g$をMathias実数という)。
このとき$V$の中にある$[\omega]^\omega$の稠密開集合$D$に対してある$x \in D$があって、$g \subseteq x$である。

$V$で議論する。$(s, A) \in \mathbb{M}$とする。$D$が稠密なので$A' \in D$があって$A' \subseteq A$である。すると
$$ (s, A') \forces_\mathbb{M} \dot{g} \subseteq^* A'. $$
よって
$$ (s, A') \forces_\mathbb{M} \exists x \in D \ (\dot{g} \subseteq^* x). $$

定理1の証明。

CHを仮定していて、$\mathbb{M}$はサイズが連続体のproper強制法なので、$\mathbb{M}_{\omega_2}$はproper強制でかつ$\aleph_2$-ccを満たすことに注意する。とくに$\mathbb{M}_{\omega_2}$はすべての基数を保存している。

$(\dot{D}_\xi : \xi < \omega_1)$$p \in \P$$p \forces_{\omega_2} \forall \xi < \omega_1 (\dot{D}_\xi \subset [\omega]^\omega \text{稠密開集合})$を満たすnameとする。

$p$以下のある条件$q$により次が強制される:

  • ある$\alpha < \omega_2$があって、どんな$\xi < \omega_1$についても$\dot{D}_\xi \cap V_\alpha \in V_\alpha$かつ$V_\alpha$の中で$\dot{D}_\xi \cap V_\alpha$$[\omega]^\omega$の稠密開集合。

ただし$V_\alpha$$V[G_\alpha]$の略記である。ここに$G_\alpha$はジェネリックフィルター$G \subseteq \mathbb{M}_{\omega_2}$$\mathbb{M}_\alpha$への射影とする。

補題3が示されたとしよう。補題3の主張する$q$をとる。$q$を含む$(V, \P)$ジェネリックフィルター$G$をとる。$D_\xi$でname $\dot{D}_\xi$$G$で解釈したものとする。補題の主張の$\alpha$をとる。$V_\alpha$から$V_{\alpha+1}$へ行くときに追加されるMathias実数を$g$とすると、補題2より各$\xi$について$x_\xi \supseteq g$$x_\xi \in D_\xi \cap V_\alpha \subseteq D_\xi$となるものを持つ。$D_\xi$の開集合性より$g \in D_\xi$である。
したがって、$V$に戻ると、
$$ q \forces_{\omega_2} \exists g \in [\omega]^\omega \ \forall \xi < \omega_1 \ (g \in \dot{D}_\xi) $$
を得る。すなわち、
$$ q \forces_{\omega_2} \bigcap_{\xi \in \omega_1} \dot{D}_\xi \neq \varnothing. $$
以上より$\forces_{\omega_2} \mathfrak{h} = \aleph_2$がわかる。 (定理の証明終了)

補題3の証明

$V$で議論する。

$\forces_{\omega_2} |\R| = \aleph_2$なのでname $\dot{f}$$q \le p$$q \forces_{\omega_2} (\dot{f}: \R \to \omega_2 \text{全単射})$なものをとる。

$q \forces_{\omega_2} \dot{E}_\xi = \dot{f}(\dot{D}_\xi)$とする。

主張A

あるclub set $C^0_\xi$があって$\beta \in C^0_\xi$について$q \forces \dot{E}_\xi \cap \beta \in V_\beta$である。

$\alpha < \omega_2$に対し、$\{ r \le q : (r \forces \alpha \in \dot{E}_\xi) \lor (r \forces \alpha \not \in \dot{E}_\xi) \}$$q$以下の稠密集合。よってその部分集合で$q$以下の極大反鎖となっている$A_{\xi,\alpha}$がとれる。$\aleph_2$-ccより$|A_{\xi,\alpha}| \le \aleph_1$である。

台が可算なことと合わせて考えると$h_\xi(\alpha) < \omega_2$であって
$$ \bigcup \{ \operatorname{support}(r) : r \in A_{\xi,\alpha} \} \subseteq h_\xi(\alpha) $$
なものがとれる。

$C^0_\xi = \{ \alpha : h_\xi``\alpha \subseteq \alpha \}$とおく。

name $\dot{F}$
$$ \dot{F} = \{ (\check{\alpha}, r) : \alpha < \beta \land r \in A_{\xi,\alpha} \land r \forces \alpha \in \dot{E}_\xi \} $$
で定める。

$q \forces \dot{F} = \dot{E}_\xi \cap \beta$を示す。$q \forces \dot{F} \subseteq \dot{E}_\xi \cap \beta$は明らか。

逆向きの包含について。$(V, \P)$ジェネリックフィルター$G$$q$を持つものをとる。$\alpha \in \dot{E}_\xi[G] \cap \beta$とする。すると$s \in G$$s \forces \alpha \in \dot{E}_\xi$なものがとれる。$s \le q$としてよい。ジェネリック性より$A_{\xi,\alpha} \cap G$から元$t$をとれる。すると$(\check{\alpha}, t) \in \dot{F}$.ゆえに$\alpha \in \dot{F}[G]$である。したがって、$V[G]$$\dot{E}_\xi[G] \cap \beta \subseteq \dot{F}[G]$なので$V$に戻れば示したい式を得る。

また、$\dot{F}$$C^0_\xi$の定め方より$\mathbb{M}_{\beta}$-nameである。よって、$q \forces \dot{E}_\xi \cap \alpha \in V_\beta$が分かる。

これで主張Aが示された。


$S = \{ \alpha < \omega_2 : \cf(\alpha) = \omega_1 \}$とおく。

主張B

$q \forces (\exists C^1 \subseteq \omega_2 \text{ club set}) \ (C^1 \cap S \subseteq \{ \alpha < \omega_2 : \dot{f}``(\R \cap V_\alpha) = \alpha \})$

$q$を含む$(V, \P)$ジェネリックフィルター$G$をとる。$f = \dot{f}[G]$とする。各$\alpha$に対して$|\R \cap V_\alpha| \le \aleph_1$なので$f``(\R \cap V_\alpha) \subseteq g(\alpha)$なる$g(\alpha) < \omega_2$がとれる。また各$\alpha < \omega_2$に対して$f^{-1}(\alpha) \in V_{h(\alpha)}$となる$h(\alpha) < \omega_2$をとる。

$C^1 = \{ \alpha < \omega_2 : g``\alpha \subseteq \alpha \} \cap \{ \alpha < \omega_2 : h``\alpha \subseteq \alpha \}$とおく。$C^1 \cap S$の元$\alpha$をとる。$x \in \R \cap V_\alpha$とする。すると$\cf(\alpha) = \omega_1$とproper強制の性質よりある$\beta < \alpha$があって$x \in V_\beta$.すると$f(x) < g(\beta) < \alpha$.よって$f``(\R \cap V_\alpha) \subseteq \alpha$.
逆に$\beta < \alpha$とすると、$h(\beta) < \alpha$より$f^{-1}(\beta) \in V_\alpha$.したがって、$f^{-1}``\alpha \subseteq \R \cap V_\alpha$.

これで主張Bが示された。


$F = f^{-1}$とおくと$F: \omega_2 \to \R$だが、これを$F: \omega_2 \times \omega \to 2$と見る。

主張C

$q \forces (\exists C^3 \subseteq \omega_2 \text{ club set}) (\forall \alpha \in C^3)(F \upharpoonright (\alpha \times \omega) \in V_\alpha)$

主張Cの証明は主張Aの証明とほぼ同様のため省略する。


主張D

$q \forces (\forall \xi < \omega_1)(\exists C^3_\xi \subseteq \omega_2 \text{ club set}) \ (C^3_\xi \cap S \subseteq \{ \alpha < \omega_2 : D_\xi \cap V_\alpha \in V_\alpha \Rightarrow \text{$D_\xi \cap V_\alpha$は稠密開集合 in $V_\alpha$} \})$

$q$を含む$(V, \P)$ジェネリックフィルター$G$をとる。$f = \dot{f}[G]$とする。$\xi < \omega_1$とする。$\alpha < \omega_2$について$\R \cap V_\alpha$の各元$x$について$D_\xi$の稠密性より$y_x \in D_\xi$であって$y_x \subseteq x$なものを得られる。$y_x \in V_{\alpha_x}$なる$\alpha_x < \omega_2$をとる。$k(\alpha) = \sup\{ \alpha_x : x \in V_\alpha \cap \R \}$とおき、$C^3_\xi = \{ \alpha < \omega_2 : k``\alpha \subseteq \alpha \}$とおく。

$\alpha \in C^3_\xi \cap S$としよう。このとき$D_\xi \cap V_\alpha \in V_\alpha$ならば$D_\xi \cap V_\alpha$は稠密開集合 in $V_\alpha$である。実際、まず、$D_\xi$$V_{\omega_2}$で開集合なので$D_\xi \cap V_\alpha$$V_\alpha$で開集合なことがわかる。次に$x \in D_\xi \cap V_\alpha$とすると$\beta < \alpha$があり$x \in V_\beta$であって$y_x \in D_\xi$$V_\alpha$に入ることがわかる。よって稠密性もOK。
これで主張Cが示された。


$q$を含む$(V, \P)$ジェネリックフィルター$G$をとる。主張Aのclub set $C^0_\xi$と主張Bのclub set $C^1$と主張Cのclub set $C_2$とclub set $C^3_\xi$をとり固定する。club setの性質より$C = \bigcap_{\xi < \omega_1} C^0_\xi \cap C^1 \cap C^2 \cap \bigcap_{\xi < \omega_1} C^2_\xi$もclubである。$\alpha, \beta \in C \cap S$$\alpha < \beta$なものをとれるのでとる。

すると主張Bより$f(\R \cap V_\beta) = \beta$.また主張Aより$f(D_\xi) \cap \beta \in V_\beta$である。よって$f(D_\xi \cap V_\beta) \subseteq \beta$かつ$f(D_\xi \cap V_\beta) \in V_\beta$.また主張Cより$f^{-1} \upharpoonright \beta \in V_\beta$なので$D_\xi \cap V_\beta = f^{-1}(f(D_\xi \cap V_\beta)) \in V_\beta$.
そこで主張Dより$D_\xi \cap V_\beta$$V_\beta$の中で稠密開集合になる。

(コメント)

ほぼ指導教員から教えてもらった証明そのままです。

なんか同じような議論を繰り返しているのでもうちょっと短縮できるかもしれない。特に、clubを使う代わりにelementary substructureを使って証明できないか?

参考文献

  1. Blass A. (2010) Combinatorial Cardinal Characteristics of the Continuum. In: Foreman M., Kanamori A. (eds) Handbook of Set Theory. Springer, Dordrecht. https://doi.org/10.1007/978-1-4020-5764-9_7
投稿日:2020129
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