この文章では、平方剰余の相互法則について、アイゼンシュタインによる三角関数を用いた方法を紹介する。また、この証明中に出てくる特徴的な等式と、ドミノタイリングの総数を表示する公式との奇妙な類似について触れる。この文章は 日曜数学のアドベントカレンダー の10日目の記事です。昨日はキグロさんの ネジの山の形について でした。
奇素数
が成り立つ。
が成り立つ。
ここから相互法則の証明を行なっていくが、その前に特に強調したい等式について書いておく。それは次のようなものである:
この式は平方剰余の値が三角関数の特殊値によって決まるという点で興味深いが、ひとたびこの等式が証明されれば平方剰余の相互法則はほぼ自明である。実際この等式で
この等式は平方剰余とは無関係に思えるドミノタイリングの総数に関する公式と奇妙な類似がある。正の偶数
この
これらの類似については11月下旬のトポスで取り上げたが、単なる偶然なのか、何かしらの数学的背景があるものなのか現時点では不明である。
証明の概略を紹介する(参考:J.-P.セール「数論講義」)
が成り立つ。
第2種チェビシェフ多項式
を満たす。また、この表示より、
である。また、
と因数分解できる。この式で
となる。
平方剰余記号に関する次の補題を示し、それと補題2を用いて相互法則の証明を導く。
まず、平方剰余に関する次の表示がある。
を満たす符号として定める。対応
より
ここでEulerの基準
より求める等式が導かれた。
と補題3より、
となるが、補題2の三角関数についての等式より
であるから、平方剰余に関する目的の式が得られた。したがってこれで平方剰余の相互法則の証明も完了した。
なお、アイゼンシュタインはこの方法と類似の方法で楕円関数を用いて三次剰余の相互律を証明したという(参考文献3. 参照)。平方剰余の相互律はガウス以後240余りの証明が与えられているらしく、アイゼンシュタインも5通りの方法で証明したようだ。ここにそのリストがある。
http://www.rzuser.uni-heidelberg.de/~hb3/fchrono.html