本稿では,単調収束定理を認めてFatouの補題と逆Fatouの補題の証明を与える.Fatouの補題とは異なり,逆Fatouの補題では可積分な優関数の存在を仮定しなければならないことに注意が必要である.
以下では測度空間$(X,\mathcal{M},\mu)$上で考える.
本稿では単調収束定理(monotone convergence theorem)を証明無しに認める.
$f$を非負可測関数,$(f_n)_{n\geq1}$を非負可測関数列であって
Fatouの補題(Fatou's lemma)は単調収束定理を用いて証明することができる.
非負可測関数列$(f_n)_{n\geq1}$に対して
$$
\int_X\liminf_{n\to\infty}f_n(x)\,d\mu(x)\leq\liminf_{n\to\infty}\int_Xf_n(x)\,d\mu(x)
$$
が成り立つ.
$g_n=\displaystyle\inf_{m\geq n}f_m$とおくと,$(g_n)_{n\geq1}$は
逆Fatouの補題(reverse Fatou lemma)はFatouの補題の系として得られる.
非負可測関数列$(f_n)_{n\geq1}$に対して,任意の$n\geq1$および$x\in X$に対し$f_n(x)\leq g(x)$を満たすような非負可積分関数$g$が存在するとき
$$
\int_X\limsup_{n\to\infty}f_n(x)\,d\mu(x)\geq\limsup_{n\to\infty}\int_Xf_n(x)\,d\mu(x)
$$
が成り立つ.
$g_n=g-f_n$とおくと,任意の$n\geq1$および$x\in X$に対し$f_n(x)\leq g(x)$であることから,$(g_n)_{n\geq1}$は非負可測関数列である.よって,Fatouの補題より
$$
\int_X\liminf_{n\to\infty}g_n(x)\,d\mu(x)\leq\liminf_{n\to\infty}\int_Xg_n(x)\,d\mu(x)
$$
が成り立つ.一方,$g_n=g-f_n$より
$$
\int_X\liminf_{n\to\infty}g_n(x)\,d\mu(x)
=\int_Xg(x)\,d\mu(x)-\int_X\limsup_{n\to\infty}f_n(x)\,d\mu(x)
$$
かつ
$$
\liminf_{n\to\infty}\int_Xg_n(x)\,d\mu(x)=\int_Xg(x)\,d\mu(x)-\limsup_{n\to\infty}\int_Xf_n(x)\,d\mu(x)
$$
である.従って
$$
\int_X\limsup_{n\to\infty}f_n(x)\,d\mu(x)\geq\limsup_{n\to\infty}\int_Xf_n(x)\,d\mu(x)
$$
を得る.
Fatouの補題とは異なり,逆Fatouの補題では可積分な優関数の存在が仮定されている.