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ブラウアー指標(Brauer指標)の定義

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はじめに

こんにちは、MakkyoExistsです。だいぶMathlogを放置していました。みなさんいかがお過ごしでしょうか? だいぶ寒くなってきましたね。昼起きるのすらつらい季節になりました。暖房付けて寝ると暑すぎて途中で起きちゃうのでこまったもんですね。まぁどうでもいいやそんな話は…笑

さて本日はタイトルにもある通りBrauer指標を定義したいと思います。最近僕のTwitterでも頻繁に言っているんですが、具体的な群のBrauer指標表を作る練習をしているので、Mathlogを再び稼働させるときはこの辺の話題の方が良いなと思ってこの題材を選んだという背景があります(いやまぁこんな話もどうでも良いね笑)

では、みて行きましょう。

記号の準備と基礎事項の確認

Brauer指標を定義するにあたってまずは基礎事項を確認したいと思います。

αを複素数とする。αがある整数係数モニック多項式の根になっているとき、つまり
αn+c1αn1++cn2α2+cn1α1+cn=0
となる整数c1,c2,,cnがとれるとき、α代数的整数(algebraic integer)という。

代数的整数のベーシックな事実として代数的整数同士の和と積はまた代数的整数になるというものがあります。01は代数的整数になるので、代数的整数全体の集合は環をなすことが分かりますね。ここでは代数的整数全体の集合をRとおくことにします。
R:={αC|α}

さて次にpをひとつ素数として固定して標数pの体を作りたいと思います。まずイデアルpRを含む極大イデアルをひとつとり、それをMとします。極大イデアルで環を割ったら体になるのでその体をFとします。つまり
F:=R/M
というシチュエーションです。このときMpRを含んでいるのでFの標数はpになります。これで晴れて標数pの体が作れました。またRからFへの自然な全射準同型写像をπとします。自然な準同型写像とはαRに対しπ(α)=α+Mという意味です。割ったところに自然に対応させるということですね。

最後に、1m乗根についてです。(mpで割れない)
U:={ξC|ξm=1(mZ,pm)}
とします。1m-乗根ξをとるとξm1=0となるのでξは代数的整数となります。したがってURとなります。のちにBrauer指標を定義するときこの部分集合が大事になります。定義を先取りするとBrauer指標は1m-乗根の和になります。

p-rootとFの元の対応~changing the characteristic

前節で色々記号を準備しました。ここから自然な準同型πが標数0の体Rと標数pの体Fの架け橋になっていることを説明します。それは以下で示す補題に集約されています。

以下が成り立つ。
(1) π(Z)=Z/pZ
(2) πによりUF×は同型となる。
(3) Fπ(Z)の代数閉包である。

(1) Rの極大イデアルはpRを含むように取ったのでpZMZである。
もしpの倍数ではないMZの元xが存在したとすると、xpは互いに素なので
ax+bp=1
となる整数a,bがとれる。xMなのでaxMでありbppZMなので、
1=ax+bpM
となる。これはMが極大イデアルであることに矛盾するのでpZ=MZであることが分かった。よって準同型定理より
π(Z)Z/MZ=Z/pZ

  1. and (3)
    (1)ξUを任意にとりmξの位数とする(mpで割り切れないことに注意)
    つまりξ1の原始m乗根なので
    1+x+x2++xm1=xm1x1=(xξ)(xξ2)(xξm1)
    となる。ここでx=1を代入し、
    m=(1ξ)(1ξ2)(1ξm1)
    つまりmは(R内において)1ξで割り切れることが分かった。

これを踏まえて、まずπUに制限した写像πUが単射であることを示す。つまりkerπU=1であることを言えばよいのであるが、もしπ(ξ)=1だとするとπ(1ξ)=0となり、mR内にて1ξで割り切れるのでm+M=π(m)=0となる。つまりmMということになるが、(1)よりmMZ=pZとなり、これはmpで割り切れないことに矛盾する。以上よりまずπUが単射であることがわかった。

あとはπUが全射であることとFが閉包であることを言えばよいが、fF×を任意にとりf=π(r)をとると、rは代数的整数なので
rn+a1rn1++an1r+an=0
となる整数aiがとれる。これにπを施して、
fn+π(a1)fn1++π(an1)f+π(an)=0
よってfπ(Z)上整であることがわかった。ここでK/Fを代数拡大とする。以下最後にK×π(U)であることを示す。これが示せればFtimesK×π(U)となり、πUが全射であることとFが閉包であることが言える
(ニュアンス的にはKをとっても上に"膨らまない"といった感じでしょうか)

任意にkKtimesをとる。今KtimesFKが代数拡大なのでkπ(Z)上整である。よってZ/pZ[k]は有限集合となりk0ではないのでk|Z/pZ[k]|1=1となる。ここで|Z/pZ[k]|1pで割り切れないことに注意するとx|Z/pZ[k]|11π(U)内の根はπ(ξ),π(ξ)2,,π(ξ)|Z/pZ[k]|1のどれかとなるのでkπ(ξ)nと表せる。よってkπ(U)となる。

意外と長かったですね。お疲れさまでした…笑

Brauer指標の定義

前章までで色々準備したのでやっとBrauer指標が定義できます。まず
G:={xG|po(x)}
とします。つまりGGの元で位数がpで割れないもの全体です。そしてρGからGL(n,F)への準同型写像、つまりGF上表現とします。Gの任意の元xをとる。前節の補題からFは代数閉包なのでρ(x)の固有値はすべてF×の中に属することがわかります。(ちなみに、この固有値たちを足したものは普通の意味でのF上指標になります。)
この固有値たちをε1,ε2,,εnとしておきます。

またxの位数はpで割れないので、前節の補題より
ε1=π(ξ1),ε2=π(ξ2),,εn=π(ξn),
となるξiUがとれる。このようにして拾ってきたξiをすべて足したものをφとします。このように定義したGからCへの写像φρに付随するGブラウアー指標(Brauer character of G afforded by ρ)、またはモジュラー指標(modular character)といいます。通常の指標と同じように、表現ρが既約であれば、それに対応するBrauer指標も既約と言います。既約なBrauer指標全体の集合をIBr(G)と表記することが多いです。

さいごに

今回は定義するだけだったのですがTeXに起こすとまぁ大変ですね…笑 あんまり眠れなくて4時位に起きちゃったのでそこから書いているのですが目が痛くなりました。ひと仕事した気持ちでいっぱいなので眠れるかもです笑

ちなみに、一応Brauer指標の定義はしたのですが、本当は極大イデアルMの取り方によらず定義できることを言わなければいけません。この辺は割愛しました。あと今回は定義するだけだったので全然内容に入っていないのですが、既約Brauer指標がGの類関数の基底になっていることや、通常の指標をGに制限したものは(既約とは限らない)Brauer指標になることなど、大事な性質はたくさんあります。この辺も気力があったら紹介したいと思います。

よし終わり!
最後まで読んで頂きありがとうございました。今回もザっと見直したのですが如何せん眠気の中読み直したので書きミス誤字脱字があるかもしれません。もし見つけた方いらっしゃいましたら教えて下さい。

また良いねやコメント、読んだ感想などめっっっっちゃ待ってます笑

では、また!('-'*)

投稿日:20201212
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投稿者

音楽してます。数学科です。エースバーンが好きです。

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