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双複素関数

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双複素解析入門 第7回
今回でようやく,双複素関数が登場します.前回でBCに位相を入れることができたので,これから関数の解析を少しずつしていくことにしましょう.ですが,いきなり複雑な関数を扱うのは大変です.まずは簡単な多項式から考えていくことにします.

不定元Xに対して,高々N次の双複素係数多項式環BC[X]Nの元を考えることにしましょう.

F(X)=m=0NA(m)Xm(A(m)BC)
とします.ここでA(m)は双複素数環の元なので,べき等元分解することができます.すなわち,
A(m)=Φe(A(m))e+Φe(A(m))e=A(m)ee+A(m)ee
と表示することができます.Fに代入すると,
F(X)=(m=0NA(m)eXm)e+(m=0NA(m)eXm)e
とできます.ここで,べき等元分解表示したあとのe,eの係数A(m)e,A(m)eは複素数の元なので,
Fe(X)=m=0NA(m)eXm,Fe(X)=m=0NA(m)eXm
とおくと,Fe(X),Fe(X)は高々N次の複素係数多項式環C[X]の元になります.つまり,このFe(X),Fe(X)は複素関数と思うことができそうです.さらに,Φe,Φeは自然にBC[X]C[X]と拡張することができます.さて,ここで不定元と扱ってきたXを双複素数環の元とするとどのようなことが起きるでしょうか.つまり,X=ZBCとします.X=Zも双複素数環の元となると,これもべき等元分解することができます.つまり,
Z=Zee+Zee
とできます.このとき,自然数mに対して,
Zm=Zeme+Zeme
なので,
Zme=Zeme,Zme=Zeme
となります.再びこれをF(Z)に代入すると,
F(Z)=(m=0NA(m)eZem)e+(m=0NA(m)eZem)e
となります.よって,Fe,Feは複素関数となります.以上のことから,不定元Xを双複素数環の元だとしても"意味"があるということになります.さらに,この議論は形式的冪級数環BC[[Z]]で考えればNとしてもよいことがわかります.

F(Z)BC[Z]Nとする.このとき,高々N次のFe(Z),Fe(Z)C[Z]を用いて,
F(Z)=Fe(Z)e+Fe(Z)e
と表せる.逆に,高々N次のFe(Z),Fe(Z)C[Z]をとれば,双複素関数F(Z)BC[Z]Nを構成することが可能である.

これは,双複素多項式のべき等元分解だと思えます.いくつか例を見てみましょう.

次の双複素関数をべき等元分解せよ.
  1. F(Z)=eZ2+Z G(Z)=Exp(Z) (指数関数)
  1. F(Z)=e(Zee+Zee)2+(Zee+Zee)=(Ze2+Ze)e+(Ze)e.

  2. G(Z)=Exp(Z):=m=0Zmm!=m=0Zem!e+m=0Zem!e=Exp(Ze)e+Exp(Ze)e.

このように,双複素多項式を1つもってくることは,独立な複素多項式を同時に2つ扱うことと同値になります.(2)では冪級数ですが,やはり同様に1つの双複素関数から2つの複素関数が得られたことになります.

今回はここまでにしましょう.ありがとうございました.

投稿日:20201214
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投稿者

まい.
まい.
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1966
大学院修士課程まで主に解析数論(素数定理周り)の研究をしていました。今はデータサイエンス関連の仕事をしています。Xでは大学数学入門資料を投稿してます。

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