こんにちは,龍孫江です.この記事では群の作用に関する次の定理をご紹介したいと思います.
群 $G$ が集合 $X$ に作用するとする.このとき,$X$ の関係 $\sim$ を
$$ x \sim y \iff \exists g \in G~(y = g \cdot x)$$と定めるとき,$\sim$ は同値関係である.
群 $G$ の集合 $X$ への作用とは,写像
$$a \colon G \times X \to X~~;~~(g,x) \mapsto g \cdot x$$ で,以下の2条件を充たすものをいう:
(1) 任意の $x \in X$ に対し $1 \cdot x = x$,
(2) 任意の $g, h \in G$,$x \in X$ に対し $g \cdot (h \cdot x) = (gh) \cdot x$.
群 $G$ の集合 $X$ への作用が存在するとき,$G$ が $X$ に作用するといいます.ここで,作用 $a$ は一般に一意的とは限りません.同じ群 $G$ が同じ集合 $X$ へ異なるやり方で作用することは日常的に起きることで,$G$ の作用が多様にあるほど $G$ のことがよくわかると言えましょう.
同値関係の定義に従って,反射律,対称律および推移律の3条件を示します.
任意の $x \in X$ に対し $1 \cdot x = x$ なので $x \sim x$.
$x \sim y$ とする.このとき $g \in G$ を $y = g \cdot x$ なるものとすると,$$ g^{-1} \cdot y = g^{-1} \cdot (g \cdot x) = (g^{-1}g) \cdot x = 1 \cdot x = x,$$特に $x \sim y$.
$x \sim y$ かつ $y \sim z$ とする.$g, h \in G$ を $y = g \cdot x$,$z = h \cdot y$ なるものとすると,$$z = h \cdot y = h \cdot (g \cdot x) = (hg) \cdot x,$$特に $x \sim z$.
この,作用から定まる同値類をこの作用の軌道といいます.同値関係は集合をいくつかの互いに交わらない部分集合(同値類)の合併に分解します.集合に群を作用させて軌道に分解することは,群を観察する上でとても重要な方法です.