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ポアソン和公式で遊ぶ

2029
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$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{d}[0]{\displaystyle} \newcommand{f}[0]{<} \newcommand{i}[1]{\int_0^{#1}} \newcommand{l}[0]{\left(} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{qed}[0]{~~~~~~~~~~\square} \newcommand{r}[0]{\right)} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{sgn}[0]{\text{sgn}} \newcommand{tria}[0]{\tau\rho\iota\alpha} \newcommand{v}[0]{\varnothing} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} \newcommand{z}[0]{\zeta} $$

はじめに

ポアソン和公式というものがあります。簡単に説明すると、

$\d\sum_{n=-\infty}^\infty f(n)=\sum_{n=-\infty}^\infty \hat{f}(n) $

が成立する、というものです。ただし、$~~~~~\d\hat{f}(n)=\int_{-\infty}^\infty f(x)e^{-2\pi inx}dx~~~~~ $です。

この公式を使って様々な級数を求めてみましょう。

$f(n)=e^{-|2\pi an|}~~~(a>0)$

まず、$f(n)$をフーリエ変換してみましょう。

$ \begin{eqnarray*} &&\hat{f}(n)\\ &=&\int_{-\infty}^\infty e^{-|2\pi ax|}e^{-2\pi inx}dx\\ &=&\int_{-\infty}^\infty e^{-(|2\pi ax|+2\pi inx)}dx\\ &=&\int_{-\infty}^0 e^{-(2\pi inx-2\pi ax)}dx+\i\infty e^{-(2\pi ax+2\pi inx)}dx\\ &=&\left[-\frac1{2\pi in-2\pi a}e^{-(2\pi inx-2\pi ax)} \right]_{-\infty}^0+\left[-\frac1{2\pi a+2\pi in}e^{-(2\pi ax+2\pi inx)} \right]_0^\infty\\ &=&\frac1{2\pi a-2\pi in}+\frac1{2\pi a+2\pi in}\\ &=&\frac12\l\frac{\pi a+\pi in+\pi a-\pi in}{\pi^2a^2+\pi^2n^2} \r\\ &=&\frac a{\pi(a^2+n^2)} \end{eqnarray*} $

できましたね。これにポアソン和公式を適用してみましょう。

$\d\sum_{n=-\infty}^\infty e^{-|2\pi an|} =\sum_{n=-\infty}^\infty \frac a{\pi(a^2+n^2)} $

$ \begin{eqnarray*} &&\sum_{n=-\infty}^\infty \frac a{a^2+n^2}\\ &=&\pi \sum_{n=-\infty}^\infty e^{-|2\pi an|}\\ &=&\pi \l2\sum_{n=0}^\infty e^{-2\pi an} -1\r\\ &=&\pi \l\frac2{1-e^{-2\pi a}}-1 \r\\ &=&\pi \frac{1+e^{-2\pi a}}{1-e^{-2\pi a}}\\ &=&{\pi\coth a\pi} \end{eqnarray*} $

よって、

$\d\sum_{n=-\infty}^\infty \frac a{a^2+n^2}=\pi\coth a\pi ~~~~~$

がわかりました。これは双曲線函数の部分分数展開になっています。

$f(n)=\frac{\sin^2\frac{\pi n}2}{n^2} $

まず、$f(n)$をフーリエ変換しましょう。計算量が多いですが気合でがんばります。

$ \begin{eqnarray*} &&\hat f(n)\\ &=&\int_{-\infty}^\infty \frac{\sin^2\frac{\pi x}2}{x^2}e^{-2\pi inx}dx\\ &=&2\i\infty\frac{\sin^2\frac{\pi x}2\cos2\pi nx}{x^2}dx\\ &=&\frac12\i\infty\frac{2 \cos2 n \pi x - \cos(x-2nx)\pi - \cos(x+2nx)\pi}{x^2}dx\\ &=&-\frac12\left[\frac{2 \cos2 n \pi x - \cos(1-2n)x\pi - \cos(1+2n)x\pi}x \right]_0^\infty-\frac12\i\infty\frac{4n\pi\sin2n\pi x-(2n-1)\pi\sin(2n-1)x\pi-(2n+1)\pi\sin(2n+1)x\pi}xdx\\ &=&-\frac\pi4\l4n\pi~\sgn2n\pi-(2n-1)\pi~\sgn(2n-1)\pi-(2n+1)\pi~\sgn(2n+1)\pi \r\\ &=&-\frac\pi4\l4n\pi~\sgn n-(2n-1)\pi~\sgn(2n-1)-(2n+1)\pi~\sgn(2n+1) \r\\ \end{eqnarray*} $

できましたね。$\sgn~x$$x$の符号で、$x>0$なら$\sgn~x=1~,~x<0$なら$\sgn~x=-1~,~x=0$なら$\sgn~x=0$です。

これにポアソン和公式を適用してみましょう。

$\d\sum_{n=-\infty}^\infty \frac{\sin^2\frac{\pi n}2}{n^2}=-\frac\pi4\sum_{n=-\infty}^\infty\l4n\pi~\sgn n-(2n-1)\pi~\sgn(2n-1)-(2n+1)\pi~\sgn(2n+1) \r$

右辺は、

$\d-\frac\pi4\sum_{n=-\infty}^\infty\l4n\pi~\sgn n-(2n-1)\pi~\sgn(2n-1)-(2n+1)\pi~\sgn(2n+1) \r=\frac{\pi^2}2$

左辺ですが、$n=0$の時に不定形になってしまいます。なので、ここでは$n\rightarrow0$の極限を取り、$n=0$の時は$\d\frac{\pi^2}4 $とします。

左辺を計算すると、

$ \begin{eqnarray*} &&\sum_{n=-\infty}^\infty\frac{\sin^2\frac{\pi n}2}{n^2}\\ &=&\frac{\pi^2}4+2\sum_{n=1}^\infty\frac{\sin^2\frac{\pi n}2}{n^2}\\ &=&\frac{\pi^2}4+2\sum_{n=0}^\infty\frac1{(2n+1)^2}\\ &=&\frac{\pi^2}4+2\l\sum_{n=1}^\infty\frac1{n^2}-\frac14\sum_{n=1}^\infty\frac1{n^2} \r\\ &=&\frac{\pi^2}4+\frac32\sum_{n=1}^\infty\frac1{n^2} \end{eqnarray*} $

より、

$\d\frac{\pi^2}2=\frac{\pi^2}4+\frac32\sum_{n=1}^\infty\frac1{n^2} $

$\d\frac32\sum_{n=1}^\infty\frac1{n^2}=\frac{\pi^2}4 $

$\d\sum_{n=1}^\infty\frac1{n^2}=\frac{\pi^2}6 $

よって、$\d\sum_{n=1}^\infty\frac1{n^2}=\frac{\pi^2}6 $がわかりました。これはバーゼル問題ですね。バーゼル問題を新しい切り口(既出ですが)で証明することができて良かったです。

おわりに

フーリエ変換の計算は大変ですね。ですがかなり楽しかったです。

皆さんもポアソン和公式を使って是非遊んでみてください。

投稿日:20201214
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投稿者

神鳥奈紗
神鳥奈紗
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遭難者です.高専1年です.MZV,級数,積分をメインにやっています.

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