$k$を体とし、$k$上の代数多様体の圏を$\Var_k$で表します.関手$F\colon \Var_k^\op\to \Set$が双有理不変であるとは、任意の双有理射$f\colon X\to Y$に対して$F(f)$が全単射であることを指すとします.また関手$F\colon \Var_k^\op\to \Set$が$\mathbb{A}^1$不変であるとは、任意の代数多様体$X$に対して標準的な射影$p\colon \mathbb{A}^1_X\to X$が誘導する写像$F(p)$が全単射であることを指すとします.ここでは次の定理を示します.
関手$F\colon \Var_k^\op\to \Set$が双有理不変ならば、$F$は$\mathbb{A}^1$不変である.
$X$を代数多様体とし、$q\colon \mathbb{P}^1_X\to X$を自然な射影とする.$F(q)$が全単射であることを示せばよい.単射性は$q$がセクション$X\to \mathbb{P}^1_X$を持つことからわかる.全射性を示そう.
$W$を$\mathbb{P}^1_X\times_X\mathbb{P}^1_X$の$\{\infty\}\times_X\{\infty\}$に沿ったブローアップとする.閉埋め込み
$$
i\colon \mathbb{P}^1_X\to \mathbb{P}^1_X\times_X\mathbb{P}^1_X;~x\mapsto (x,\infty)
$$
の$W$における強変換を$\tilde{i}\colon \mathbb{P}^1_X\to W$とする.
$$
\mathbb{A}^1_X\times_X \mathbb{A}^1_X\to \mathbb{P}^2_X; (x,y)\mapsto (x:y:1)
$$
は双有理射$\pi\colon W\to \mathbb{P}^2_X$に一意的に延長され、以下の可換図式が得られる:
$$
\xymatrix{
\mathbb{P}^1_X\ar[r]^-{\tilde i}\ar[d]^-q & W\ar[d]^-\pi\\
X\ar[r]^-{(0:1:0)} & \mathbb{P}^2_X.
}
$$
仮定より$F(\pi)$は同型なので、$F(\tilde{i})$の全射性を示せばよい.以下の図式は可換である:
$$
\xymatrix{
& W\ar[d]\\
\mathbb{P}^1_X\ar[r]^-i\ar[ur]^-{\tilde{i}} & \mathbb{P}^1_X\times_X\mathbb{P}^1_X.
}
$$
よって$F(i)$の全射性を示せばよい.これは$i$がレトラクションを持つことからわかる.
$\Var_k$における双有理射全体のクラスを$S_b$, 安定双有理射(支配的射であって関数体の拡大が純超越的であるもの)全体のクラスを$S_r$とします.明らかに$S_b\subset S_r$です.上の定理から直ちに次のことがわかります.
標準的な関手$S_b^{-1}\Var_k\to S_r^{-1}\Var_k$は圏同値を与える.
[KS15] B. Kahn and R. Sujatha, Birational geometry and localisation of categories, Doc. Math., Extra vol.: Alexander S. Merkurjev’s sixtieth birthday (2015) 277334.