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Birkhoff's variety theorem from Freyd's adjoint functor theorem

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ISer Advent Calendar 2020 12/16

普遍代数(等式理論)の主要な結果の一つであるBirkhoffの定理って、いかにも一般随伴関手定理使ってくれ〜って顔してませんか?してますね。というわけで一般に知られているものとは異なる、厄介な構成は圏論に投げた証明を考えてみました。自由代数は厄介じゃないです。

本記事では細かい用語の定義はしないのですが、示したい定理であるBirkhoffと使いたい道具である一般随伴関手定理の主張は並べておきます。また空集合もモデルとして認めるものとします。

Birkhoff

言語Σを固定し、Σ代数からなる部分クラスKΣ-Algを考える。このとき次が同値である。

  1. Kは部分代数・直積代数・準同型像で閉じている。
  2. あるΣ上の公理の集合Eが存在して、K=(Σ,E)-Algとなる。
Freyd

Bをlocally small かつ small complete とし、関手U:BAを考える。このとき次が同値である。

  1. Uは左随伴を持つ。
  2. Uは極限を保ち、また任意のobject AAに対し(AU)は解集合条件を満たす。
Birkhoff

2.ならば1.は簡単なので、1.から2.を示す。

Σ-AlgΣ代数とその準同型のなす圏、Kをその充満部分圏だと見なす。このときKは明らかにlocally smallであり、また直積代数と部分代数で閉じていることからsmall completeかつ集合の圏Setへの忘却関手が極限を保つ。さらに部分代数で閉じていることから各(AU)が解集合条件を満たすことも従うので、一般随伴関手定理から左随伴F:SetKが存在。この随伴におけるunitを一つ取りηFとする。

変数の集合をVarとすると随伴から、Kの任意のobjectBへの任意のvaluation J:VarUBは、ηVarFを通して一意的な準同型J~で分解できる。

valuation valuation

このとき任意のΣ-termtについて[[t]]B,J=[[t]]B,UJ~ηVarF=J~([[t]]FVar,ηVarF)であるので、Kの全てのobjectは次で定義されるΣ上の公理の集合Eを満たす。

E={s=t[[s]]FVar,ηVarF=[[t]]FVar,ηVarF}

逆に、任意の(Σ,E)代数はKに属することを示せば、証明は完了である。

(Σ,E)-Alg(Σ,E)代数全体のなすΣ-Algの充満部分圏とする。このとき先ほどと同様に一般随伴関手定理から、忘却関手U:K(Σ,E)-Alg及びU:(Σ,E)-AlgSetは共に左随伴を持つ。集合Aに対し自由(Σ,E)代数FAはその構成がよく知られていて、集合Aの元を0変数関数として言語Σに加えた(ΣA)-termのうち変数を含まないもの全体の集合の、Eから誘導される同値関係による剰余からなる。またこのときηAFa[a]である。

adjoint adjoint

今、U=UUより左随伴の一意性からFFFが従うので、以下ではF=FFとする。またこのときηF=(UηFF)ηFと取れる。

もしηFVarFが単射でなければ、あるΣ-termt,uが存在して[t][u]かつηFVarF([t])=ηFVarF([u])が成立するが、このとき

[[t]]F(Var),ηVarF=[[t]]F(Var),UηFVarFηVarF=ηFVarF([[t]]F(Var),ηVarF)=ηFVarF([t])=ηFVarF([u])=ηFVarF([[u]]F(Var),ηVarF)=[[u]]F(Var),UηFVarFηVarF=[[u]]F(Var),ηVarF

が従うので、Eの定義からFVar(Σ,E)代数であることに矛盾する。したがってηFVarFは単射である。同様に任意の無限集合Sに対しηFSFが単射であることを示す。

任意にUFSの元を2つを固定すれば、それらをそれぞれ[[t]]FS,ηSFJ, [[u]]FS,ηSFJと表せるような、Σ-termt,u及び写像J:VarSが自由代数の構成を考えれば存在する。特にJが単射であるようなものが存在するので、そのようなJとそのretractions:SVarを取る。

unit unit

すると任意のΣ-termkに対し、ηFSF([[k]]FS,ηSFJ)=[[k]]FS,UηFSFηSFJ=[[k]]FS,UFJUηFVarFηVarF=FJηFVarF([[k]]FVar,ηVarF)となる。

今、UFJはsectionUFsを持つため単射であり、ηFVarFは既に見たとおり単射なので、ηFSF([[t]]FS,ηSFJ)=ηFSF([[u]]FS,ηSFJ)ならば[[t]]FVar,ηVarF=[[u]]FVar,ηVarFである。さらにこのとき[[t]]FS,ηSFJ=[[t]]FS,UFJηVarF=FJ([[t]]FVar,ηVarF)=FJ([[u]]FVar,ηVarF)=[[u]]FS,UFJηVarF=[[u]]FS,ηSFJであるから、ηFSFは単射である。

ここまでで任意の無限集合Sに対しηFSFが単射であることがわかったので、Kは部分代数及び準同型像で閉じていることからFSは全てKに含まれる。さらに左随伴は余極限を保つことから、任意の非空(Σ,E)代数Aに対しF(J:VarUAVar)から全射準同型[J~]J:VarUAが伸び、よってAKに含まれる。

coproduction coproduction

最後に空集合だが、空集合が(Σ,E)代数であることとΣに0変数関数記号が含まれないことが同値なので、空集合は(Σ,E)代数ならば任意の(Σ,E)代数の部分代数になるためKに含まれる。

したがって任意の(Σ,E)代数はKに属するので、K=(Σ,E)-Algであることがわかった。

投稿日:20201218
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