問題
例えば次のような問題を考える。
手元にカードが枚あり、片面は黒でもう片面が白くなっているとする。サイコロを振っての目がでたらカードを裏返すという操作を繰り返し行う。最初カードは黒い面を向いており、この操作を回行った後に白い面を向いている確率を求めよ。
回目終わった後に白か黒か、回目終わった後に白か黒かそれぞれで場合わけ、言い換えるとカードの色の遷移を黒白白白、黒白黒白、黒黒白白、黒黒黒白のそれぞれで場合わけして確率を計算すると
と計算できる。
より一般に回後に白となる確率は、
という漸化式をたて、これを解くことでも求めることができる。
遷移行列
これを行列の言葉を用いて次のように表現しよう。まず、遷移行列を次のように定める。
この行列の成分は、状態から状態にうつる確率を表している。ここで、状態を白としを黒とすることにしよう。つまり上の行列は左上が白から白へ遷移する確率、右上が白から黒へ遷移する確率、左下が黒から白へ遷移する確率、右下が黒から黒へ遷移する確立をそれぞれ表現している。
このに対して、を計算してみると となる。これの成分ははじめ白で回振った後にまた白である確率
と一致している。これは
であり、白白白の順に遷移する確率と白黒白の順に遷移する確率の和である。これ以外の成分も同様に成分ははじめ状態で回振った後に状態となる確率である。実際、の成分は
であるから、状態がの順で遷移する確率との順で遷移する確率の和となっている。
同じようには となり、成分ははじめ状態で回振った後に状態となる確率である。例えば成分は、であり、白白白白、白黒白白、白白黒白、白黒黒白の遷移確率の和になっている。
したがって、サイコロを振る前に黒で回振った後に白になっている確率はの成分を見ればよく、これははじめに計算した通り
となることがわかる。
一般にはじめの状態がで回後に状態となる確率はの成分となることがわかる。
周期条件
次にある時刻での位置が初期位置と一致する、という条件をつけて何らかの条件付き確率を計算したいとしよう。あるいは、カードの状態遷移が周期的であるという仮定をつける。
たとえば周期という条件の下での条件付き確率を計算したい場合、最初が白で回後も白である確率と、最初が黒で回後も黒である確率の和によって正規化する必要がある。つまり、最初と回後の色が同じ事象をとしたとき、事象のを条件とした条件付き確率は
であり、この分母を計算する。
前と同様に状態白を、黒をとしよう。上での考察から、回サイコロを振って白から白へ、つまりからへうつる確率はの成分であり、回サイコロを振って黒から黒へ、つまりからへうつる確率はの成分である。したがって、となることがわかる。
一般にはじめの状態と回後の状態が一致する確率はとなる。
終わりに
この記事に関連する内容として、次元格子モデルの転送行列についての話を後日公開します。