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合成関数の極限に関する一考察

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初めに

一変数実微分積分学の初歩程度の知識を仮定しています。

主張

$a>a^{\prime}$を実数とする。関数$f(x)$$[a^{\prime},a]$で定義されており、関数$f(x)$は以下5つの性質をもつものとする。

  1. ある$b\in (a^{\prime},a)$が存在して、$f(b)=b$

  2. $b\in (a^{\prime},a)$$f$は二回微分可能である。

  3. $f^{\prime}(b)=1$

  4. $f^{\prime \prime}(b)<0$

  5. $f^{\prime \prime}$$x=b$で右連続である。

このとき、テイラーの定理より、任意の$x\in(b,a )$に対し、ある$c_x\in(b,x)$が存在して、$$f(x)=f(b)+f^{\prime}(b)(x-b)+\frac{f^{\prime \prime}(c_x)}{2}(x-b)^2$$よって、仮定(2)から連続性よりある実数$d\in(b,a)$が存在して、$x\in(b,d)\Rightarrow f^{\prime}(x)>0 \land f^{\prime \prime}(x)<0$であり、仮定(1)と合わせて$x\in(b,d)$に対し
$$f(x)-b=x-b+\frac{f^{\prime \prime}(c_x)}{2}(x-b)^2 \cdots(p)$$を得る。これより仮定(4)から
$$(x-b)-(f(x)-b)=-\frac{f^{\prime \prime}(c_x)}{2}(x-b)^2>0$$ である。

次に、$n$を任意の自然数として、$x\in(b,d)$に対し、 $$f^{\circ 1}(x)=f(x),\,\,\,f^{\circ (n+1)}(x)=f\circ f^{\circ n}(x)$$により再帰的に$f^{\circ n}$を定める。(2)および(p)で得られた結論より、$x\in(b,d)$に対し
$$f(b)-b < f(x)-b < x-b\,\,\,\,\therefore b < f(x) < x\cdots(q)$$が得られ、この定義はwell-definedである。 このもとで、$x\in(b,d)$を任意に一つ固定して、極限
$$\lim_{n\to\infty}{n\cdot (f^{\circ n}(x)-b)}$$ を考えると、これは
$$-\frac{2}{f^{\prime \prime }(b)}$$に収束する。この命題を以下の手順で証明する。

以降指定がなければ$x\in(b,d)$とし、$c_x$はテイラーの定理により存在が保証されているので各$x$に対し適当に一つを選び関数$c(x)$で表記する。具体的には、各$x\in(b,d)$に対し集合
$$C(x)=\{c|f(x)=f(b)+f^{\prime}(b)(x-b)+\frac{f^{\prime \prime}(c)}{2}(x-b)^2 \land c\in(b,x)\}$$を考え、その直積 $$\prod_{x\in(b,d)}C(x)$$を考えると、各$C(x)$は先述の議論により空ではないので、選択公理より
$$\prod_{x\in(b,d)}C(x)$$は空ではない。この元を一つ(どれでもよい)とり、それを$c(x)$とする。

証明

数列$\{ f^{\circ n}(x)\}_{n\in\mathbb{N}}$は狭義単調減少であり、$$\lim_{n\to\infty}{f^{\circ n}(x)}=b$$

$(q)$より、$b < f(f^{\circ n}(x)) < f^{\circ n}(x)$であり、これより$b < f^{\circ (n+1)}(x) < f^{\circ n}(x)$を得る。したがって、数列$\{ f^{\circ n}(x) \}_{n\in\mathbb{N}}$は狭義単調減少であり下に有界だから収束する。収束値を$\alpha$と置くと、(q)より$d>\alpha \geq b\,$。(2)より$f$の連続性から、$$\lim_{n\to\infty}{f^{\circ (n+1)}(x)}=\lim_{n\to\infty}{f(f^{\circ n}(x))}=f(\alpha)$$よって、$\alpha=f(\alpha)$を得る。(1)および$(q)$より、$\alpha= b$、すなわち$\alpha=b$である。

$$\lim_{n\to \infty}{\left(\frac{1}{f^{\circ (n+1)}(x)-b}-\frac{1}{f^{\circ n}(x)-b}\right)}=-\frac{f^{\prime \prime}(b)}{2}$$

$(p)$より、
$$\frac{1}{f^{\circ (n+1)}(x)-b}-\frac{1}{f^{\circ n}(x)-b}=\frac{f^{\circ n}(x)-f^{\circ (n+1)}(x)}{(f^{\circ (n+1)}(x)-b)(f^{\circ n}(x)-b)}=-\frac{f^{\prime \prime}(c(f^{\circ (n+1)}(x)))}{2}\cdot\frac{f^{\circ n}(x)-b}{f^{\circ (n+1)}(x)-b}$$

より、補題1から$n\to \infty$のとき$f^{\circ n}(x)\to b+0$であり、$c(x)$の定義、仮定(3)および仮定(4)の連続性より、
$$\lim_{n\to\infty}{f^{\prime \prime}(c(f^{\circ (n+1)}(x)))}=f^{\prime \prime}(b)$$
$$\lim_{n\to\infty}\frac{f^{\circ n}(x)-b}{f^{\circ (n+1)}(x)-b} =\lim_{x\to b+0}\frac{x-b}{f(x)-b}=\frac{1}{f^{\prime}(b)}=1$$
したがって、
$$\lim_{n\to \infty}{\left(\frac{1}{f^{\circ (n+1)}(x)-b}-\frac{1}{f^{\circ n}(x)-b}\right)}=-\frac{f^{\prime \prime}(b)}{2}$$

$$\lim_{n\to\infty} {n(f^{\circ n}(x)-b)} =-\frac{2}{f^{\prime \prime }(b)}$$

補題2の左辺の数列にチェザロ和の性質を適用すると、
$$\lim_{n\to\infty}\frac{1}{n}\sum_{k=1}^{n} \left(\frac{1}{f^{\circ (k+1)}(x)-b}-\frac{1}{f^{\circ k}(x)-b}\right)=-\frac{f^{\prime \prime }(b)}{2}$$
を得る。
$$\frac{1}{n}\sum_{k=1}^{n} \left(\frac{1}{f^{\circ (k+1)}(x)-b}-\frac{1}{f^{\circ k}(x)-b}\right) =\frac{n+1}{n}\frac{1}{((n+1)f^{\circ (n+1)}(x)-b)}-\frac{1}{n(f(x)-b)}$$
であるから、
$$\lim_{n\to\infty}{n(f^{\circ n}(x)-b)}=\lim_{n\to\infty}{\frac{n-1}{n}\cdot \frac{1}{\frac{1}{n-1}\sum_{k=1}^{n-1} \left(\frac{1}{f^{\circ (k+1)}(x)-b}-\frac{1}{f^{\circ k}(x)-b}\right)+\frac{1}{(n-1)(f(x)-b)}}}=-\frac{2}{f^{\prime \prime }(b)}$$ となる。

補足

「連続性よりある実数$d\in(b,a)$が存在して、$x\in(b,d)\Rightarrow f^{\prime}(x)>0\land f^{\prime \prime}(x)<0$

の部分について補足します。

(2)の仮定より$f^{\prime}(x),f^{\prime\prime}(x)$$x=b$で右連続です。 したがって、
$\forall \varepsilon_1>0,\exists\delta_1>0, \forall x \in (a^{\prime},a),0 < x-b<\delta_1 \Rightarrow |f^{\prime}(x)-f^{\prime}(b)|<\varepsilon_1 $
$\forall \varepsilon_2>0,\exists\delta_2>0, \forall x \in (a^{\prime},a),0 < x-b < \delta_2 \Rightarrow |f^{\prime \prime}(x)-f^{\prime \prime}(b)|<\varepsilon_2 $
(3),(4)より
$\varepsilon_1\leq 1,\varepsilon_2\leq -f^{\prime \prime}(b)$に対し、対応する$\delta_1,\delta_2$をとり、$\delta=\min(\delta_1,\delta_2)$と置くと、任意の$x\in(b,b+δ)$に対し、$$f^{\prime}(x)>f^{\prime}(b)-\varepsilon_1\geq0$$$$f^{\prime\prime}(x) < f^{\prime \prime}(b)+\varepsilon_2\leq 0$$となる。$d=b+\delta$ととることで求める$d$が得られます。鉤括弧内の記述はこの一連の操作を指します。

最後に

無駄な計算が非常に多いことがわかったので大幅に書き直しました。
(4)と$(5)$の仮定は「$f^{\prime\prime}(x)$$x=b$における右極限が存在して、その値は負である。」に変えても問題ないです。この場合$f^{\prime\prime}(b)$をその右極限に置き変えてください。
ちなみに(4)の符号を変えても同じような議論が可能です。

投稿日:2020117

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