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プチ小技集:Prime Avoidance

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$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

こんにちは,龍孫江です.この記事では可換環の素イデアルに関する次の定理をご紹介します.

Prime_Avoidance

可換環 $R$ のイデアル $I$ と有限個の素イデアル $P_t$$1 \le t \le s$) が与えられたとする.総ての $t$ に対し $I \not\subset P_t$ ならば $I \not\subset \bigcup_{1 \le t \le s} P_t$

Avoidanceには「避ける」という意味があります.$P_t$ のどれにも包まれないイデアル $I$ があれば,どの $P_t$ からも「避けて」取れる $I$ の要素が取れるという定理です.
 素イデアルの合併から避けて取れることの何が嬉しいのか,一口に説明するのはなかなか難しいのですが,しかし可換環論の展開の上では欠かせない重要定理です.

素イデアル $\{P_t\}$ の2要素に包含関係があれば小さい方を除けるので,$\{P_t\}$ の2要素の間には包含関係がないとしてよい.

このとき $$x_t \in \left(\bigcap_{u \ne t} P_u \right) \setminus P_t $$なる要素 $x_t$ が存在する.実際,$P_u \not\subset P_t$ なので $y_u \in P_u \setminus P_t$ がとれて,$x_t = \prod_{u \ne t} y_u$ とおけばよい.$u \ne t$ のとき $y_u \in P_u$ ゆえ $x_t \in P_u$,また各 $u$ に対し $y_u \not\in P_t$ ゆえ $x_t \not\in P_t$ である.

$t$ に対し,$I \not\subset P_t$ から $z_t \in I \setminus P_t$ をとれる.ここで $$ x := x_1 z_1 + x_2 z_2 + \cdots + x_s z_s $$とおく.$z_t \in I$ から $x \in I$,一方 $u \ne t$ のとき $x_u z_u \in P_t$ かつ $x_uz_u \not\in P_t$ なので $x \not\in P_t$,特に $x$ はどの $P_t$ にも含まれない.

投稿日:2020117

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龍孫江
龍孫江
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代数学(群論・環論・体論)の問題を解説するYouTubeチャンネル「龍孫江の数学日誌」を運営しております(リンクからどうぞ).YouTubeでは扱いきれないまとまった記事を書いていきたいと思います.どうぞご贔屓に.

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