こんにちは,龍孫江です.この記事では可換環の素イデアルに関する次の定理をご紹介します.
可換環 R のイデアル I と有限個の素イデアル Pt(1≤t≤s) が与えられたとする.総ての t に対し I⊄Pt ならば I⊄⋃1≤t≤sPt.
Avoidanceには「避ける」という意味があります.Pt のどれにも包まれないイデアル I があれば,どの Pt からも「避けて」取れる I の要素が取れるという定理です. 素イデアルの合併から避けて取れることの何が嬉しいのか,一口に説明するのはなかなか難しいのですが,しかし可換環論の展開の上では欠かせない重要定理です.
素イデアル {Pt} の2要素に包含関係があれば小さい方を除けるので,{Pt} の2要素の間には包含関係がないとしてよい.
このとき xt∈(⋂u≠tPu)∖Ptなる要素 xt が存在する.実際,Pu⊄Pt なので yu∈Pu∖Pt がとれて,xt=∏u≠tyu とおけばよい.u≠t のとき yu∈Pu ゆえ xt∈Pu,また各 u に対し yu∉Pt ゆえ xt∉Pt である.
各 t に対し,I⊄Pt から zt∈I∖Pt をとれる.ここで x:=x1z1+x2z2+⋯+xszsとおく.zt∈I から x∈I,一方 u≠t のとき xuzu∈Pt かつ xuzu∉Pt なので x∉Pt,特に x はどの Pt にも含まれない.
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