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えげつない不定積分の問題 ∫(1-x^4)^(-1/4)dx

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問題

1(1x4)14の不定積分を求めてください。

超幾何関数を使うと1(1x4)14dx=x 2F1(14,14;54;x4)+C(C:)となりますが、初等関数だけで表していきたいと思います。とはいえ、何をすればいいんだと呆然としてしまう人もいるでしょう。

これを解く前に、もうちょっと簡単な問題を見てみましょう。

簡単な問題

1(1x2)12の不定積分を求めてください。

arcsin(x)+C(C:)が答えなのですが、ちょっと迂回してみます。

分母の(1x2)12を見ると、円x2+y2=1を想像したくなるものです。
取り敢えず、x>0,y>0の部分だけ考えると、(他の場合もほぼ同様なので省略)
1(1x2)12dx=1ydx
と簡単に表せます。

次に、直線y=txと円x2+y2=1の交点のx座標を求めます。代入して式変形すると
x2+(tx)2=1x2(1+t2)=1 (1)x=1(1+t2)12
となりますが、このx=1(1+t2)12で置換すると実はうまくいきます。
dxdtの関係式は(1)tで微分して求めましょう。

x2(1+t2)=1 (1)2x(1+t2)dxdt+2tx2=0 (t)(1+t2)dxdt+tx=0 (2x)1txdx=11+t2dt ()1ydx=11+t2dt (2)(y=tx)

さて、(2)の左辺1ydxは見たことがありますね。求めたい積分の形になっています。

1ydx=11+t2dt()=arctan(t)+C=arctan((1x2)12x)+C(C:)

というわけで1(1x2)12dxを求めることができました。arcsinとは随分見た目が違いますが、実際にarctan((1x2)12x)を微分すると、ちゃんと(1x2)12になっています。

キーポイントは、直線y=txとの交点に着目したことでx2(1+t2)=1に辿り着き、そして見事に有理関数の積分に帰着できたことです。

問題1の解答

まず、1(1x4)14の分母(1x4)14に注目です。
問題2では2乗だったので、円x2+y2=1を考えました。今度は4乗なので、曲線x4+y4=1とします。
1(1x4)14dx=1ydx

次に、直線y=txx4+y4=1の交点に着目することで、
x4(1+t4)=1(3)
となります。
(3)の両辺をtで微分して、
4x3(1+t4)dxdt+4t3x4=0(1+t4)dxdt+t3x3=01txdx=t21+t4dt1ydx=t21+t4dt
となるので、求める積分はt=(1x4)14xの置換により、
1(1x4)14dx=t21+t4dt
となり、有理関数の積分になります。

2乗のときとは違い、ここから先の計算も大変です。
t21+t4を部分分数分解しましょう。

分母のt4+1
t4+1=t4+2t2+12t2=(t2+1)22t2=(t22t+1)(t2+2t+1)
と因数分解でき、係数比較すれば、

t21+t4=t2(t22t+1)(t2+2t+1)=24(tt2+2t+1tt22t+1)
がわかります。求める積分は24(tt2+2t+1tt22t+1)dtとなります。
2つの分数はどちらも(1)(2)の形をしているので、分母の2次式をf(x)として、f(x)f(x)+()f(x)2つの分数にそれぞれ分けて、合計4つの分数の積分をすることになります。
f(x)f(x)の積分はlog()f(x)の積分はarctanを使った式になります。

24(tt2+2t+1tt22t+1)dt=28(2t+2t2+2t+12t2+2t+12t2t22t+12t22t+1)dt (f(x)f(x)+()f(x))=28(2t+2t2+2t+1dt2t2+2t+1dt2t2t22t+1dt2t22t+1dt)=28((t2+2t+1)t2+2t+1dt22(2t+1)2+1dt(t22t+1)t22t+1dt22(2t1)2+1dt)=28(log(t2+2t+1)2arctan(2t+1)log(t22t+1)2arctan(2t1))+C (log)=28(log(t2+2t+1t22t+1)+2arctan(2tt21))+C (4)=28(log(1x4+2x1x44+x21x42x1x44+x2)+2arctan(2x1x441x4x2))+C (x)=24(log(1x4+2x1x44+x2)+arctan(2x1x441x4x2))+C (log)

(4)の変形について

式が横に長いので、logarctanを纏めています。

log(t2+2t+1)log(t22t+1)=log(t2+2t+1t22t+1)は高校で習う対数の計算です。

arctan(2t+1)+arctan(2t1)arctan(2tt21)になっている部分は、タンジェントの加法定理tan(p+q)=tan(p)+tan(q)1tan(p)tan(q)から導きます。

p=arctan(2t+1),q=arctan(2t1)を代入すると、
tan(arctan(2t+1)+arctan(2t1))=tan(arctan(2t+1))+tan(arctan(2t1))1tan(arctan(2t+1))tan(arctan(2t1))
ここで、tan(arctan(a))=aなので、右辺は
(2t+1)+(2t1)1(2t+1)(2t1)=22t22t2=2tt21となります。

tan(arctan(2t+1)+arctan(2t1))=2tt21の両辺のarctanをとると、
arctan(tan(arctan(2t+1)+arctan(2t1)))=arctan(2tt21)ですが、
左辺のarctan(tan(a))の形をしている部分に問題があって、これはtan(arctan(a))とは違い、=aになるとは限りません。

π2<a<π2の範囲ではarctan(tan(a))=aですが、
π2<a<3π2のときarctan(tan(a))=aπ
3π2<a<π2のときarctan(tan(a))=a+πと、区分的に定数の違いが出てしまいます。
この定数の違いは微分すると消えてしまうものなので、積分定数に取り込んで、計算結果には表していませんが、
計算結果の24(log(1x4+2x1x44+x2)+arctan(2x1x441x4x2))は不連続になっているところがあるので、
この不定積分を使って定積分を01(1x4)14dx=[F(x)]01のように計算する場合に注意してください。

この定数の誤差が困るという場合は、纏めないで
24(log(1x4+2x1x44+x2)arctan(21x44x+1)arctan(21x44x1))
としても構わないですが、それはそれでx=0のところで不連続ですね。
問題2の(1x2)12dx=arctan((1x2)12x)+Cも同様の注意が要ります。
積分定数の扱いにはご注意ください。

というわけで、なんとか初等関数で求めることができましたね。
1(1x4)14dx=24(log(1x4+2x1x44+x2)+arctan(2x1x441x4x2))+C (C:)
が答えです。

もうこんな式、TEXで書きたくない・・・。

まとめ

直線y=txとの交点を考えるのは、曲線のパラメータ表示(の1つ)を求めたり、曲線の概形を描く足がかりにしたりできることは高校の教科書にも書いてあるのですが、このような積分の問題での置換のヒントにもなったりします。
(実はガウス積分もy=txを使って求める方法があります。)
結構便利なテクニックですね。

同じように、正の整数nに対して、1(1xn)1ndxを求められますが、n=4の時点で上記のように大変なので、それ以上となると相当気分の悪くなる計算を強いられることでしょう・・・。
(n=3でも結構しんどさがあります。)

以上、読んでいただきありがとうございました。

投稿日:20201227
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SunPillar
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