次のようなツイートを見て,なんだかよくわからなかったので考えました。
@CLCbXY8IVF7BsPV さんのツイート
$0$でない$3$数$a$,$b$,$c$が
$$ \dfrac{b+c}{a} = \dfrac{c+a}{b} = \dfrac{a+b}{c}$$
を満たすとき,この式の値を求めよ。
授業する側が,そもそもこの問題をなぜ授業で扱うのか、この問題で何が学べるのかを理解していないランキングでかなり上位に入りそう。
$ \dfrac{b+c}{a} = \dfrac{c+a}{b} = \dfrac{a+b}{c} = k$とおく。すると,
$$
\begin{eqnarray}
\left\{
\begin{array}{l}
ak = b+c \\
bk = c+a \\
ck = a+b \\
\end{array}
\right.
\end{eqnarray}
$$
が得られ,これらの辺々を加えると$k(a+b+c) = 2(a+b+c)\cdots (*)$となる。
元ツイートに対して以下のような反応がありました。
@miyamath84 さんのツイート
固有値。
先の固有値発言は$3\times 3$行列
$0$ $1$ $1$
$1$ $0$ $1$
$1$ $1$ $0$
の固有値がその式の値と一致するという意味です。
ということで,$ A = \left( \begin{array}{ccc} 0 & 1 & 1 \\ 1 & 0 & 1 \\ 1 & 1 & 0 \end{array} \right)$の固有値を計算します。$E$を$3$次正方行列として,固有方程式$\det(k E - A)=0 $を解きます。$kE - A = \left( \begin{array}{ccc} k & -1 & -1 \\ -1 & k & -1 \\ -1 & -1 & k \end{array} \right)$なので,これの行列式をサラスの方法などを用いて計算すると,$(k-2)(k+1)^2$となり,この多項式の根は$2$,$-1$となり,確かに先に計算した式の値と一致しています。
ここで固有値,固有ベクトルのことについてもう少し考えます。固有値,固有ベクトルとはそもそも$n$次元ベクトル空間上の線形変換を表す行列$A$に対して,$A\boldsymbol{x} = k\boldsymbol{x}$を満たすような実数$k$を$A$の固有値,ベクトル空間上の元$ \boldsymbol{x}$を固有値$k$に対する$A$の固有ベクトルと呼んでいました。
ここで, $ \boldsymbol{x} = \left(
\begin{array}{c}
a \\
b \\
c
\end{array}
\right)$として,先の$A$に対して$A\boldsymbol{x} = k\boldsymbol{x}$を計算してみる。
すると,
$k\left(
\begin{array}{c}
a \\
b \\
c
\end{array}
\right) = \left(
\begin{array}{c}
b+c \\
c+a \\
a+b
\end{array}
\right)$となり,これは最初に求めた比例式の式の値を求める計算そのものである。