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フィボナッチ数列を拡張したk-ナッチ数列の一般項についての予想(その3)

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はじめに

この記事は先に投稿した記事「  フィボナッチ数列を拡張したk-ナッチ数列の一般項についての予想(その2)  」の続きになります。まだ読んでいない方はそちらを先に読んでみてください。

また、以前の記事と同様に四捨五入を表す関数として $\left\lfloor x\right\rceil$ を使います。すなわち
    $\left\lfloor x\right\rceil=\left\lfloor x+\frac{1}{2}\right\rfloor$

ということです。
以下では特に断りがない限り $k$ は2以上の自然数とします。$(2\leqq k,k\in\mathbb{N})$

予想の内容とこれまでにわかっていること

k-ナッチ数列の一般項(予想)

k-ナッチ数列の第$n$項を $a_k(n)$ と表記する。このとき、$a_k(n)$ は次の式で求めることができる。

    ${\displaystyle a_k(n)=\left\lfloor \frac{A_k^n}{B_k} \right\rceil }$
ただし、$A_k,B_k$は次の定数である。
    $f_k(x)=x^k-x^{k-1}-x^{k-2}-\cdots-x^2-x-1$
として、

    ${\displaystyle A_k\cdots\cdots f_k(x)=0\text{ の正の実数解} }$

    ${\displaystyle \begin{align} B_k &=f_k'(A_k) \end{align} }$

次に、これまでにわかっていることを確認します。
k-ナッチ数列の一般項を次のように表現できることは確認済でした。

k-ナッチ数の一般項

    ${\displaystyle a_k(n) = \sum_{i=1}^{k} \frac{\beta_i^{n}}{f_k'(\beta_i)} }$

ただし、$f_k(x)=x^k-x^{k-1}-\cdots-x^2-x-1$ として $\beta_1,\beta_2,\cdots,\beta_k$$x$の方程式 $f_k(x)=0$$k$個の解を表し、$f_k'(x)$$f_k(x)$ の導関数である。

また、 $f_k(z)=0$ の解について次のことが分かっています。

$f_k(z)=0$$k$ 個の解のうち $k-1$ 個の(複素数範囲の)解の絶対値は1未満である。また、残りの1個の解は $1< z<2$ の範囲の実数である。

この記事では、予想について検討中に見つけた内容を書いています。(予想そのものはまだ解決できていません。)

$f_k(z)=0$ の 絶対値が1未満の解は、複素数平面上、単位円に内接する中心が偏角$\frac{2j\pi}{k}(j=1,2,3,\cdots ,k-1)$ 方向で直径が $\left(1-\frac{1}{\sqrt[k]{3}}\right)$$(k-1)$ 個の円内の領域に存在する。

$f_k(z)=0$ の 絶対値が1未満の解は、複素数平面上、単位円に内接する中心が偏角$\frac{2j\pi}{k}(j=1,2,3,\cdots ,k-1)$ 方向で直径が $\left(1-\frac{1}{\sqrt[k]{3}}\right)$$(k-1)$ 個の円内の領域に存在する。

上記のとおりですが、式ではわかりにくいかもしれませんので、図でみてみましょう。
複素数解 複素数解

この図の青い丸のところが今回見つけた複素数解が存在しうる領域で、赤い点は解が実際に存在するところです。
かなりいい感じに評価できた気がします。

これまでと同じように
$f_k(z)=z^k-z^{k-1}-\cdots-z^2-z-1$
\begin{align} E_k(z)&=z^{k+1}−2z^k+1\\ &=(z−1)f_k(z) \end{align}
とします。さらに

\begin{align} G_k(z)&:=z+z^{-k}-2\\ &=z^{-k}E_k(z) \end{align}
とすると、 $G_k(z)$ の零点と $E_k(z)$ の零点は一致します。
絶対値が1未満の零点を一つ選び $z_0$とします。
$z_0+z_0^{-k}-2=0$
を変形して
$z_0^{-k}=2-z_0$
とすると、 $z_0^{-k}$ は複素数平面上、$z=2$ を中心とする半径1の円内の領域にあることがわかります。
複素数平面上の領域について逆数をとる操作をすると、単位円に対して反転して実軸に対して鏡像となり、また、円形の領域は円形の領域に移ることから、 $z_0^{k}$ は複素数平面上、実軸方向に中心を持ち単位円に内接する半径 ${\displaystyle \frac{1}{3}}$とする半径1の円内の領域にあることがわかります。
複素数平面上の領域についてべき乗をとる操作をすると、絶対値がべき乗され、偏角はべき指数倍され、また、円形の領域は円形の領域に移ることから、 $z_0$ は複素数平面上、中心が偏角$\frac{2j\pi}{k}(j=0,1,2,3,\cdots ,k-1)$ 方向で直径が $\left(1-\frac{1}{\sqrt[k]{3}}\right)$$k$ 個の円内の領域に存在することになります。
ただし、 $j=0$ すなわち実軸方向にある領域についての解は $z_0=1$ ということになりますが、これは $f_k(z)$ の零点ではありませんので、結局、 $f_k(z)=0$ の 絶対値が1未満の解は、複素数平面上、中心が偏角$\frac{2j\pi}{k}(j=1,2,3,\cdots ,k-1)$ 方向で直径が $\left(1-\frac{1}{\sqrt[k]{3}}\right)$$(k-1)$ 個の円内の領域に存在することがわかりました。

$f_k(z)=0$$1< z<2$ の範囲の実数解 $A_k$ について、$A_k<2- \frac{2}{2^{k+1}-k}$ と評価できる

$A_k<2- \frac{2}{2^{k+1}-k}$

次に、残りの1つの解について上記の命題が成り立つことを示します。

$k=2$ のときは明らかなので、以下では $k>2$ の場合について考えます。
まず、 $G_k(z)$ をを微分すると
$G_k(z)=z+z^{-k}-2$
$G_k'(z)=-kz^{-k-1}+1$
$G_k''(z)=k(k+1)z^{-k-2}+1$
となります。

$A_{k-1}+A_{k-1}^{-(k-1)}-2=0$
を使って $A_{k-1}\leqq z\leqq2$ の範囲での $G_k(z)$ のふるまいを調べると

\begin{align} G_k(A_{k-1})&=A_{k-1}+A_{k-1}^{-k}-2\\ &=-(A_{k-1}^{-(k-1)}-A_{k-1}^{-k})\\ &=-A_{k-1}^{-k}(A_{k-1}-1)\\ &<0 \end{align}

\begin{align} G_k(2)&=2^{-k}\\ &>0 \end{align}

\begin{align} G_k'(A_{k-1})&=-kA_{k-1}^{-k-1}+1\\ &\geqq -k\varphi^{-k-1}+1\\ &>0 \end{align}

\begin{align} G_k'(2)&=-k\cdot2^{-k-1}+1\\ &>0 \end{align}

\begin{align} G_k''(z)&=k(k+1)z^{-k-2}+1\\ &>0 \end{align}

となりますので、 $G_k(z)$$A_{k-1}\leqq z\leqq2$ の範囲で下に凸で単調増加、かつ $A_{k-1}\leqq z\leqq2$ の範囲に零点 $(=A_k)$ を持ちます。
グラフの形から
$A_k<2- \frac{G_k(2)}{G_k'(2)}$
とわかります。上記の式を代入すれば、
\begin{align} A_k&<2- \frac{2^{-k}}{-k\cdot2^{-k-1}+1}\\ &=2- \frac{2}{2^{k+1}-k}\\ \end{align}

と評価できます。

誤差の項についても漸化式が成り立つ

k-ナッチ数と ${\displaystyle\frac{A_k^n}{B_k}}$ との差を次のように $R_k(n)$とする。

${\displaystyle R_k(n):=a_k(n)-\frac{A_k^n}{B_k}}$

このとき、 $R_k(n+k)=R_k(n+k-1)+\cdots+R_k(n+1)+R_k(n)$ が成り立つ。

 
${\displaystyle R_k(n)=a_k(n)-\frac{A_k^n}{B_k}}$
${\displaystyle R_k(n+1)=a_k(n+1)-\frac{A_k^{n+1}}{B_k}}$
${\displaystyle R_k(n+2)=a_k(n+2)-\frac{A_k^{n+2}}{B_k}}$
   $\vdots$
${\displaystyle R_k(n+k-1)=a_k(n+k-1)-\frac{A_k^{n+k-1}}{B_k}}$
${\displaystyle -R_k(n+k)=-a_k(n+k)+\frac{A_k^{n+k}}{B_k}}$

これらの式の辺々を足し、$a(n+k)=a(n+k-1)+\cdots+a(n+1)+a(n)$ 及び 
$A_k^{n+k}=A_k^{n+k-1}+\cdots+A_k^{n+1}+A_k^{n}$ を適用すれば

$R_k(n+k)=R_k(n+k-1)+\cdots+R_k(n+1)+R_k(n)$

$B_k$ の別表現 $B_k=\frac{(k+1)A_k^k-2kA_k^{k-1}}{A_k-1}$

$(z-1)f_k(z)=z^{k+1}-2z^k+1$
$f_k(z)+(z-1)f_k'(z)=(k+1)z^k-2kz^{k-1}$
$z\ne1$ のときは
${\displaystyle f_k'(z)=\frac{(k+1)z^k-2kz^{k-1}-f_k(z)}{z-1}}$
したがって
${\displaystyle \begin{align} B_k&=f_k'(A_k)\\ &=\frac{(k+1)A_k^k-2kA_k^{k-1}-f_k(A_k)}{A_k-1}\\ &=\frac{(k+1)A_k^k-2kA_k^{k-1}}{A_k-1}\\ \end{align} }$

予想との関係

今回得られた評価をうまく使えば予想を証明できるのではないかと考えています。
引き続き情報等ありましたらコメント等お願いします!

投稿日:20201229
更新日:317

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