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大学数学基礎解説
文献あり

行列式と面積

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$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathrm{div}} \newcommand{division}[0]{÷} \newcommand{grad}[0]{\mathrm{grad}\ } \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{rot}[0]{\mathrm{rot}\ } \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

はじめに

前回の記事 で,行列の固有値と固有ベクトルについて書きましたが,そのときにタイトルのことを思い出したので,それについてもまとめてみることにしました.なお,この記事では基本的に$2\times2$行列について考えることにします(高校数学でよくでてくるので).

よく知られた事実

$2$つのベクトル$\vec{a}=(a,c),\ \vec{b} = (b,d)$によって作られる平行四辺形の(符号付)面積は$ad-bc$で与えられる.

vec1 vec1

この$ad-bc$が行列$ A = \left( \begin{array}{cc} a & b \\ c & d \\ \end{array} \right)$の行列式であり,$\det A$などともかく.これは,次の(これまたよく知られた事実)と一致している.

$2$つのベクトル$\vec{a}=(a,c),\ \vec{b} = (b,d)$によって作られる三角形の面積は$\dfrac{1}{2}|ad-bc|$である.

こちらの方が高校生にはなじみがあると思われる(おそらく教科書にも問題として掲載があることが多い).この証明は三角形の面積を愚直に計算すればよい.

理由を考える

まず,行列と固有値について次が成り立っている(一般に$n$次でも成り立つ)ことを認めよう.

$2$次正方行列$A$の固有値を$\lambda_1$$\lambda_2$とすると$\det A= \lambda_1 \lambda_2 $

また,行列$A$の固有ベクトル$\vec{p}$とその固有値$\lambda$においては$A\vec{p} = \lambda \vec{p}$が成り立っていた.これは行列$A$を掛けるという線形変換においては固有ベクトルは回転されず,定数倍の伸び縮みしかしないということである.ここで$A$$2$つの固有ベクトルを$\vec{p_1}$$\vec{p_2}$と,その固有値$\lambda_1$$\lambda_2$とすると,$\vec{p_1}$$\vec{p_2}$で作られる四角形(平行四辺形)の面積は行列$A$による変換を考えると,次のようになっているということである.
線形変換 線形変換
つまり,行列$A$による線形変換では$2$つの固有ベクトルが作る平行四辺形の面積は$2$つの固有値の積$\lambda_1\lambda_2$倍変化するということである.ここで,先に紹介した事実を用いれば$\lambda_1\lambda_2=\det{A}$であるから結局,面積は$\det A$倍される.
固有ベクトルではない$\vec{q_1}$$\vec{q_2}$が作る平行四辺形の面積についても,$\vec{q_1}$$\vec{q_2}$$\vec{p_1}$$\vec{p_2}$の線形結合で書き直すことができるので$\vec{q_1}$$\vec{q_2}$から作られる平行四辺形の面積はやはり$\det A$倍される.

まとめ

つまり,$\vec{a}=(a,c),\ \vec{b} = (b,d)$によって作られる平行四辺形の面積は,$2$次元ベクトル空間の正規直交基底$e_1=\left( \begin{array}{c} 1 \\ 0\\ \end{array} \right) $$e_1=\left( \begin{array}{c} 0 \\ 1\\ \end{array} \right) $により作られる平行四辺形の面積が$1$であり,$\vec{e_1}$$\vec{e_2}$をいつでも$^1$行列$A$の固有ベクトルを用いて書き直すことができるので,その面積は固有値の積だけ拡大される.つまり$\det A$倍され,元の面積は$1$であったから結局,面積は$\det A = ad-bc$となる.

$^1$固有ベクトルが$2$つとれる場合はその$2$つの固有ベクトルは$1$次独立になる.

参考文献

[1]
硲野 敏博, 加藤 芳文, 理工系の基礎線形代数学, 学術図書出版社, 1994
投稿日:202112
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投稿者

とも
とも
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12401
広島県の高校で数学の教員をやっていたはずなのに,気づけば違う仕事をしております。高校数学と大学で学ぶ数学の橋渡しのようなことができればいいなと思っています。記事に誤り等あれば教えてください。

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