はじめに
前回の記事
で,行列の固有値と固有ベクトルについて書きましたが,そのときにタイトルのことを思い出したので,それについてもまとめてみることにしました.なお,この記事では基本的に行列について考えることにします(高校数学でよくでてくるので).
よく知られた事実
つのベクトルによって作られる平行四辺形の(符号付)面積はで与えられる.
vec1
このが行列の行列式であり,などともかく.これは,次の(これまたよく知られた事実)と一致している.
つのベクトルによって作られる三角形の面積はである.
こちらの方が高校生にはなじみがあると思われる(おそらく教科書にも問題として掲載があることが多い).この証明は三角形の面積を愚直に計算すればよい.
理由を考える
まず,行列と固有値について次が成り立っている(一般に次でも成り立つ)ことを認めよう.
また,行列の固有ベクトルとその固有値においてはが成り立っていた.これは行列を掛けるという線形変換においては固有ベクトルは回転されず,定数倍の伸び縮みしかしないということである.ここでのつの固有ベクトルを,と,その固有値,とすると,,で作られる四角形(平行四辺形)の面積は行列による変換を考えると,次のようになっているということである.
線形変換
つまり,行列による線形変換ではつの固有ベクトルが作る平行四辺形の面積はつの固有値の積倍変化するということである.ここで,先に紹介した事実を用いればであるから結局,面積は倍される.
固有ベクトルではない,が作る平行四辺形の面積についても,,を,の線形結合で書き直すことができるので,から作られる平行四辺形の面積はやはり倍される.
まとめ
つまり,によって作られる平行四辺形の面積は,次元ベクトル空間の正規直交基底,により作られる平行四辺形の面積がであり,,をいつでも行列の固有ベクトルを用いて書き直すことができるので,その面積は固有値の積だけ拡大される.つまり倍され,元の面積はであったから結局,面積はとなる.
固有ベクトルがつとれる場合はそのつの固有ベクトルは次独立になる.