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大学数学基礎解説
文献あり

モノイダル圏に関する基本的な性質2つ

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普段からモノイダル圏が前提の世界に生きていると基本的な命題すら証明できなくて焦ることになります(なりました)。備えておきましょう。

図式のレイアウトなどについて、本稿はこの命題を初めて証明したMax Kellyの論文[1]に大いに基づいて構成されています。

定義

モノイダル圏

モノイダル圏C,,I,α,λ,ρとは、

  • C
  • 関手:C×CC
  • 単位対象IC
  • A,B,CCについて自然な同型
    αA,B,C:A(BC)(AB)C
  • ACについて自然な同型λA:IAA, ρA:AIA

の組で、次の2つの図式を可換にするもの。
A(B(CD))AαB,C,DαA,B,CDA((BC)D)αA,BC,D(AB)(CD)αAB,C,D(A(BC))DαA,B,CD((AB)C)D
A(IB)αA,I,BAλB(AI)BρABAB

本題

モノイダル圏C,,I,α,λ,ρおよび任意のX,YCについて、以下の図式は可換。
I(XY)αI,X,YλXY(IX)YλXYXY

次の図式を考える。このうち、?が記された三角形が可換であることを示せば、λが自然な同型であることから命題が従う。
I(I(XY))IαI,X,YIλX,YαI,I,XYI((IX)Y)I(λXY)αI,IX,Y?I(XY)αI,X,Y(II)(XY)ρI(XY)αII,X,Y(IX)Y((II)X)Y(ρIX)Y(I(IX))YαI,I,XY(IλX)Y
?の書かれていない部分について、2つの三角形はモノイダル圏の公理から可換、2つの四角形はρおよびαの自然性から可換となる。また、外側の四角形は五角図式であるためモノイダル圏の公理から可換。

従って?の三角形も可換であり、λXYαI,X,Y=λXYが成り立つ。

命題1

モノイダル圏C,,I,α,λ,ρおよび任意のX,YCについて、以下の図式は可換。
X(YI)αX,Y,IXρY(XY)IρXYXY

先ほどの図式の左右を全て入れ替えればよい。

モノイダル圏C,,I,α,λ,ρについて、λI=ρI

λの自然性から次の図式は可換である:
I(II)λIIIλIIIλIIIλII
ここで、λが自然同型であることからλII=IλI
次に、命題1およびモノイダル圏の公理から次の2つの図式が可換となる。
I(II)αI,I,IλII(II)IλIII(II)αI,I,IIλI(II)IρIIII
αは同型であり、かつλII=IλIであったので、2つの図式は同一でありλII=ρII、従ってλI=ρI

あとがき

モノイダル圏などにはコヒーレンス定理が成り立つので、モノイダル圏が前提の世界では本稿に書かれていたたくさんの括弧はすべてないものとして扱ってよい(どの順番で計算しようがすべて同値)のですが、本稿の2つの性質はそのコヒーレンス定理の証明にも使われるほど基本中の基本となる性質です。備えておきましょう(自戒)。

参考文献のDOI

参考文献

[1]
G. M. Kelly, On MacLane's Conditions for Coherence of Natural Associativities, Commutativities, etc., Journal of Algebra, 1964, pp. 397-402
投稿日:202117
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merliborn
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圏論や普遍代数に興味があります。現在の専門は型理論および圏論的意味論です。

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