4
大学数学基礎解説
文献あり

Minkowskiの定理を使った四平方和定理の証明

596
0
$$\newcommand{abs}[1]{\left\lvert#1\right\rvert} \newcommand{floor}[1]{\left\lfloor#1\right\rfloor} $$

数の幾何学において最も基本的な定理として、Minkowskiの定理がある。

Minkowskiの定理

$L$$\mathbb{R}^n$ 上の格子とし、 $\det L$$L$ に対応する行列の行列式とする。$\mathbb{R}^n$ 内の、原点に関して対称で体積が $2^n \det L$ より大きい凸集合は、その内部に原点とは異なる $L$ 上の点を有する。

証明は Wikipediaの該当記事 あるいは Cassels (1997), Chapter III.2.2, pp. 71--72, Nathanson (1996), Chapter 6.2, pp. 174--176 などを参照されたい。また、Wikipediaの該当記事にはこの定理を用いたFermatの二平方和定理($4m+1$ の形の素数は2つの平方数の和であらわされる)の証明も掲載されているので、そちらも参照されたい。

さて、Wikipediaの該当記事にあるように、Minkowskiの定理を使ってLagrangeの四平方和定理、つまりすべての自然数は4個の平方数の和であらわされることを示すこともできる。本記事ではその証明を行う。証明は Cassels (1997), Chapter III.7.3, pp. 99--102 を参考とした。Nathanson (1996), Chapter 6.3, pp. 177--179 にはやや筋道の異なる証明(先に $a^2+b^2+1\equiv 0\pmod{n}$ を一般の $n$ について示す)がある。

まず、半径 $R$ の4次元球体の体積を求める。これは
$$ \begin{split} \int_{x^2+y^2+z^2+w^2\leq R^2} dxdydzdw= & \int_{-R}^R \left(\int_{x^2+y^2+z^2\leq R^2-w^2} dxdydz\right)dw \\ = & \int_{-R}^R \frac{4\pi}{3}(R^2-w^2)^{3/2}dw \\ = & \frac{4\pi}{3}R^4 \int_{-1}^1(1^2-t^2)^{3/2}dt \end{split} $$
となる。最後の積分は
$$\int_{-1}^1 (1^2-t^2)^{3/2}dt=\int_{-\pi/2}^{\pi/2} \cos^4 \theta d\theta$$
と変形できるが、よく知られているように $k=1, 2, \ldots$ に対して
$$\begin{split} \int_{-\pi/2}^{\pi/2} \cos^{2k} \theta d\theta =& (2k-1)\int_{-\pi/2}^{\pi/2}\sin^2 \theta \cos^{2(k-1)}\theta d\theta \\ =& (2k-1)\left(\int_{-\pi/2}^{\pi/2}\cos^{2(k-1)}\theta d\theta-\int_{-\pi/2}^{\pi/2}\cos^{2k}\theta d\theta\right) \end{split}$$
となることを用いて
$$\int_{-1}^1 (1^2-t^2)^{3/2}dt=\int_{-\pi/2}^{\pi/2} \cos^4 \theta d\theta=\frac{3}{4}\int_{-\pi/2}^{\pi/2} \cos^2 \theta d\theta=\frac{3}{8}\pi$$
がわかるので、半径 $R$ の4次元球体の体積は
$$\frac{4\pi}{3}R^4\times \frac{3\pi}{8}=\frac{\pi^2 R^4}{2}\ \ \ \cdots (1)$$
である。

次に$p>0$ が素数ならば $a^2+b^2+1\equiv 0\pmod{p}$ となる整数 $a, b$ がとれることを示す。

$p=2$ のときは $(a, b)=(1, 0)$ ととれるので、$p$ が奇素数の場合を考える。
$0\leq u< v\leq (p-1)/2, u\neq v$ のとき $0< v-u, v+u< p$ だから $v^2\neq u^2\pmod{p}$ である。
よって $A$$a^2 (a=0, 1, \ldots, (p-1)/2)$$p$ で割った余り全体の集合、
$B$$-(b^2+1) (b=0, 1, \ldots, (p-1)/2)$$p$ で割った余り全体の集合とすると
$$\#A = \#B = (p+1)/2$$
が成り立つ。 $A, B$ はいずれも $\{0, 1, \ldots, p-1\}$ の部分集合だから
$$\#(A\cap B)=\#A+\#B-\#(A\cup B)\geq p+1-p=1$$
より $A\cap B\neq\emptyset$ である。したがって $a^2\equiv -(b^2+1) \pmod{p}$ つまり
$$a^2+b^2+1\equiv 0\pmod{p}$$
となる $a, b$ がとれる。

$m=p_1 p_2 \cdots p_k$ を相異なる素数の積とすると、先に述べたことから各 $p_i$ に対して $a_i^2+b_i^2+1\equiv 0\pmod{p}$ となる整数 $a_i, b_i$ がとれる。中国式剰余定理より
$$a\equiv a_i\pmod{p_i}, b\equiv b_i\pmod{p_i} \ \ \ \ \cdots (2)$$
がすべての $i=1, 2, \ldots, k$ に対して同時に成り立つ $a, b$ がとれる。
$$(m, 0, 0, 0), (0, m, 0, 0), (a, b, 1, 0), (b, -a, 0, 1)$$
で生成される格子を $L$ とおくと $(u_1, u_2, u_3, u_4)\in L$ のとき
$$u_1\equiv au_3+bu_4, u_2\equiv bu_3-au_4\pmod{m} \ \ \ \ \cdots (3)$$
2021/8/4訂正 : $u_1, u_2$$u_3, u_4$ の役割を取り違えていたのを訂正)
が成り立つ。さらに
$$\det L=\det\begin{pmatrix} m & 0 & a & b \\ 0 & m & b & -a \\ 0 & 0 & 1 & 0 \\ 0 & 0 & 0 & 1\end{pmatrix}=m^2$$
となる。

すると原点を中心とする、半径 $\sqrt{2m}$ の4次元球体を $B$ とすると $B$ の体積は (1) より $2\pi^2 m^2>16m^2=2^4 \det(L)$ となるからMinkowskiの定理より、 $B$ の内部には原点とは異なる $L$ の点が含まれる。つまり $0< u_1^2+u_2^2+u_3^2+u_4^2<2m$ かつ (3) が成り立つ整数 $u_1, u_2, u_3, u_4$ がとれる。
$$u_1^2+u_2^2\equiv (au_3+bu_4)^2+(bu_3-au_4)^2\equiv (a^2+b^2)(u_3^2+u_4^2)\pmod{m}$$
なので
$$u_1^2+u_2^2+u_3^2+u_4^2\equiv (a^2+b^2+1)(u_3^2+u_4^2)\pmod{m}$$
となる(2021/8/4訂正 : $u_1, u_2$$u_3, u_4$ の役割を取り違えていたのを訂正)。(2) と $a_i, b_i$ のとり方から各 $i$ に対して
$$a^2+b^2+1\equiv 0\pmod{p_i}$$
つまり各 $p_i$$a^2+b^2+1$ を割り切るから $m=p_1 p_2 \cdots p_k$$a^2+b^2+1$ を割り切るので
$$u_1^2+u_2^2+u_3^2+u_4^2\equiv (a^2+b^2+1)(u_3^2+u_4^2)\equiv 0\pmod{m}$$
である。しかし 先に述べたように $0< u_1^2+u_2^2+u_3^2+u_4^2<2m$ であるから
$$u_1^2+u_2^2+u_3^2+u_4^2=m\ \ \ \ \cdots (4)$$
である。つまり $m$$4$つの平方数の和であらわされる。

最後に $n$ を一般の正の整数とすると、$n=md^2$ となる整数 $d$ と、相異なる素数の積からなる数 $m$ がとれる($m$$n$ をちょうど奇数回割り切る素数すべての積となる)。
(4) をつかって
$$n=d^2(u_1^2+u_2^2+u_3^2+u_4^2)=(du_1)^2+(du_2)^2+(du_3)^2+(du_4)^2$$
とあらわされる。

もちろん$0$$0^2+0^2+0^2+0^2$ とあらわされるから、任意の自然数は$4$つの平方数の和であらわされることが示された。

参考文献

J. W. S. Cassels, An Introduction to the Geometry of Numbers, Springer-Verlag, 1959, pbk of 2nd ed., 2013, doi: 10.1007/978-3-642-62035-5

Melvyn B. Nathanson, Additive Number Theory: Inverse Problems and the Geometry of Sumsets (Graduate Texts in Math. 165), Springer-Verlag, 1996.

参考文献

[1]
J. W. S. Cassels, An Introduction to the Geometry of Numbers, Classics in Mathematics, Springer-Verlag, 2013, pp. 71-72, pp. 99-102
[2]
Melvyn B. Nathanson, Additive Number Theory: Inverse Problems and the Geometry of Sumsets , Undergraduate Texts of Mathematics, Springer-Verlag, 1996, pp. 174-179
投稿日:202119

この記事を高評価した人

高評価したユーザはいません

この記事に送られたバッジ

バッジはありません。

投稿者

tyamada
29
1853
主に整数論について、よく知られた話題から、自身の研究に関することまで記事にしていきます。

コメント

他の人のコメント

コメントはありません。
読み込み中...
読み込み中