可換環論においてジャコブソン根基は地味な印象がありますが "大きくないイデアル" の代表的存在です.
ジャコブソン根基は極大イデアルと密接に関係しています.いくつかの観点から,ジャコブソン根基の要素となるための条件を言い換えてみましょう.
(1)
(2) 任意の
(3) 任意のイデアル
(1)
(2)
(3)
この条件 (3) を加群に一般化したものとして,中山の補題が挙げられます.
一般的に,ジャコブソン根基は極大イデアルが少ない環でこそ有力な道具となります.少ない場合に有効というよりは,極大イデアルが多いとジャコブソン根基が小さくなるのでご利益が薄いというべきかもしれません.翻って,最も極大イデアルが少ない(1個!)環が局所環ですが,この場合は極大イデアル自身がジャコブソン根基となるので,わざわざ呼ばないことが多いです.なんとなく地味な印象があるのは,そのあたりの巡りあわせのためなのでしょうね.