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指数関数についてとりとめもなく その1.5「ネイピア数と指数関数」

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はじめに

この記事は1弾のおまけです。その1も良かったら読んでみてください。
正直この辺りは高校数学感が否めないですが、せっかく指数関数を扱うのですからここに触れてもいいと思い筆を執った次第です。

前回のおさらい

自然数の指数、つまり$a$を何回かけたか?というところから始まって、実数乗まで定義するところまで前回はやりました。そして指数法則
$a^x\times a^y=a^{x+y}$が成り立つことを見ました。

今回は微分を考えるところから始めていこうと思います。

微分と出会って

微分とは一般に開区間$I$上定義された関数$f$について

$$f'(x)=\lim_{h\to}\frac{f(x+h)-f(x)}{h}$$
という極限が存在するとき微分可能と定義したのでした。また、任意の$x\in I$に対して$f'(x)$が存在するとき$I$上の関数と考えられるので$f'$$f$の導関数と呼んでいましたね。

さて、$f(x)=a^x,\ a>1$と置いてみましょう。このとき
$$\lim_{h\to 0}\frac{a^{x+h}-a^x}{h}$$
となります。
$$a^x\lim_{h\to 0}\frac{a^h-1}{h}$$
となります。つまり極限値
$$\lim_{h\to 0}\frac{a^h-1}{h}$$
が存在するのか、つまり原点で微分可能なのか?が重要なポイントになるわけです。

さて、これが存在するかは定かではないですが、もしそうだとすると面白いことがわかります。

$$k=\lim_{h\to 0}\frac{a^h-1}{h}$$

と置いてみましょう。そうすると上の変形から

$$f'(x)=kf(x)$$
と書くことができます。つまり指数関数は導関数が自身に比例するという性質を持つことがわかります。

ではこの比例定数$k$が1となるのは$a$がどんな時なのでしょうか?というか原点で本当に微分可能なのでしょうか?次章でそこんところについて考えてみましょう。

ネイピア数

ネイピア数

$$e=\lim_{n\to\infty}\left(1+\frac{1}{n}\right)^n$$
とする。この$e$をネイピア数という。

突然定義からはじめてみました。たまにはこういうのもいいでしょう。
筆者が高校生だった当時は「なんかよくわからん数が出てきた」というのが正直な感想でした。のちのちこんなに目にすることになるとは当時は考えてもなかったです。

さて、筆者の無駄話はおき、極限で定義しましたがこのような数は存在するのか?というのは気になるところです。

これは二項定理を用いることで証明ができます。

$\displaystyle\lim_{n\to\infty}\left(1+\frac{1}{n}\right)^n$は収束する。

実際$\displaystyle a_n=\left(1+\frac{1}{n}\right)^n$とおくと

$$a_n=\sum_{k=0}^n\frac{n!}{(n-k)!k!}\frac{1}{n^k}=\sum_{k=0}^n\frac{1}{k!}\left(1-\frac{1}{n}\right)\times\cdots \left(1-\frac{k-1}{n}\right)\\ \leq \sum_{k=0}^n\frac{1}{k!}\left(1-\frac{n-1}{n+1}\right)\times\cdots \left(1-\frac{m-k+1}{n+1}\right)=\sum_{k=0}^n\frac{1}{k!}\frac{(n+1)!}{(n-k+1)!}\\ \leq \sum_{k=0}^{n+1}\frac{1}{k!}\frac{(n+1)!}{(n-k+1)!}=a_{n+1}$$

より単調増加です。また

$$\sum_{k=0}^n\frac{1}{k!}\left(1-\frac{n-1}{n}\right)\times\cdots \left(1-\frac{m-k+1}{n}\right)\leq \sum_{k=0}^n\frac{1}{k!}<3$$
から上に有界となるので上に有界な単調増加な関数より収束します。(証明終了)

これで$e$の存在はわかりました。ですが、だからなんだというのでしょう?というのが次の疑問になります。まずは関数の極限に拡張することから考えてみましょう。

$$\lim_{x\to\infty}\left(1+\frac{1}{x}\right)^x=e$$

証明は難しくはないですが、思いつくのは結構難しい気がします。さて、$x$について$n\leq x< n+1$となる$n$を取りましょう。そうすると
$$\frac{1}{n+1}<\frac{1}{x}\leq \frac{1}{n}$$
より
$$\left(1+\frac{1}{n+1}\right)< \left(1+\frac{1}{x}\right)\leq\left(1+\frac{1}{n}\right)$$
となります。ゆえに
$$\left(1+\frac{1}{n+1}\right)^n\leq \left(1+\frac{1}{x}\right)^x\leq \left(1+\frac{1}{n}\right)^{n+1}$$
が成り立ちます。よって$x\to\infty$とすると$n\to\infty$なので挟み撃ちの原理より結論が得られます。(証明終了)

これの系としてネイピア数の指数関数が極限によってあらわすことができます。

$x\in\mathbb{R}$に対して
$$e^x=\lim_{n\to\infty}\left(1+\frac{x}{n}\right)^n$$
が成り立つ。

証明は簡単で、$t=n/x$おくと$n\to\infty$ならば$t\to\infty$であって

$$\left(1+\frac{x}{n}\right)^n=\left(1+\frac{1}{t}\right)^{tx}=\left(\left(1+\frac{1}{t}\right)^{t}\right)^x$$
なので指数法則と指数関数の連続性から

$$\lim_{\to\infty}\left(\left(1+\frac{1}{t}\right)^{t}\right)^x=e^x$$

となるので結論が得られます。(証明終了)

さて、ここまでは高校数学でもやったと思います。今回はここから少しだけステップアップして次の式を示してみましょう。

べき級数表示

$0< x<2$に対して
$$e^x=\sum_{n=0}^{\infty}\frac{x^n}{n!}$$
が成り立つ。

証明としては
$$a_n=\left(1+\frac{x}{n}\right),\ b_n=\sum_{k=0}^n\frac{x^k}{k!}$$

とおいて頑張って評価するとしか言いようがないです。ネイピア数の収束性を調べる際と同様に$a_n$は単調増加であって$a_n\leq b_n$は成り立つことがわかります。いま$b_n$
$$k!=1\times 2\times\cdots \times k\geq 2^k\quad (k\geq 2)$$
を用いると
$$b_n\leq \sum_{k=0}^{\infty}\frac{x^k}{2^k}=\frac{2+x}{2-x}$$
となるので有界であることがわかります。したがって$b_n$も有界でかつ単調増加なので極限が存在します。この極限を$b(x)$とすると$e^x\leq b(x)$が成り立ちます。他方で$m>n$となる$n$を一つ固定するとき、二項定理から

\begin{eqnarray} a_n=\sum_{k=0}^m\frac{a^k}{k!}\left(1-\frac{1}{m}\right)\cdots \left(1-\frac{k-1}{m}\right)\\ \geq \sum_{k=0}^m\frac{a^k}{k!}\left(1-\frac{1}{m}\right)\cdots \left(1-\frac{k-1}{m}\right) \end{eqnarray}
となります。そうすると$m\to\infty$とすれば$e^x\geq b_n$となるので
$e^x\geq b(x)$も成立することがわかりました。(証明終了)

みなさんは既にご存じでしょうが、この等式は$0< x<2$でなく$x\in\mathbb{R}$で成立します。この右辺のべき級数は指数関数$e^x$のマクローリン展開であり、この級数が指数関数にさらなる拡張を与えてくれます。次回をお楽しみに。

さて、ここで多少インチキをします。いま、$h>0$を十分小にとって$0< h<2$となるようにとりましょう。このとき、定理3より
$$e^h-1=\sum_{n=1}^{\infty}\frac{h^n}{n!}$$
となります。なので$h$で割れば
$$\frac{e^h-1}{h}=1+\sum_{n=2}^{\infty}\frac{h^{n-1}}{n!}$$
そうすると、
$$\sum_{n=2}^{\infty}\frac{h^{n-1}}{n!}$$
の各項は$h\to 0$ですべて$0$になるので右極限
$$\lim_{h\to +0}\frac{e^h-1}{h}=1$$
が存在することがわかります。はい、ここで、無限級数と$\lim$の交換はしてよいのか?というのが今回のインチキポイントにはなりますが、結論から言うと別に問題はありません。なぜ問題がないのか?については一様収束極限というのが関連してきますが、ここでは脱線になるので触れないでおきます。

さて、他方で$h<0$ならばこれも十分$|h|$を小にとって$-2< h<0$となるようにしましょう。このときわかりやすく$t>0$用いて$h=-t$であらわすと

$$e^h=e^{-t}=\frac{1}{e^t}=\frac{1}{\sum^{\infty}_{n=0}{\frac{t^n}{n!}}}\leq \frac{1}{1+t}$$

となるので
$$e^h-1\leq \frac{1}{1+t}-1=\frac{-t}{1+t}$$
が得られます。これより特に
$$\lim_{h\to -0}\frac{e^h-1}{h}=\lim_{t\to +0}\frac{e^{-t}-1}{-t}\leq \lim_{t\to +0}\frac{1}{1+t}=0$$
となって左極限の存在もわかります。

これより、結局比例定数$k$$1$となる$a$が実は$e$であり
$e^x$の微分可能性がわかりました。

では$e$以外の指数関数$a$は微分可能なのでしょうか?

この記事の最後として、次の章ではこれについて考えてみましょう。

指数の逆を考える

さて、ネイピア数ネイピア数といってきていますが、このネイピアとは一体何なんだ?と思った方もいるでしょう。じつはネイピアは対数というものを始めて考えた人です。(現代的な定義はかの有名なオイラーです)

前回我々が素朴な指数から実数乗まで拡張していく議論を行いましたが、ネイピアも指数の概念の拡張を試みる一人でした。その中で、指数法則によって積が和に帰着することから指数に注目することでこの拡張ができないかと考えたわけです。

ここからはネイピアの定義ではなく、現代的な定義に戻って話しますが、
ようするに

$$a^L=M$$
となる$L$とは一体何なのか?ということに着目したというのが対数の基本的な発想になります。

つまり、これまでは$y=f(x)$という関係について$x$を決定することでそれに対応する$y$を考えていましたが、その逆で$y=f(x)$となるときに$x$はどんな値なのか?ということを考えたということです。

これは現在では逆関数と言われ、逆関数の微分可能性については実際次のことが成り立ちます。

関数$f$が開区間$I=(a, b)$上で微分可能であり、かつ狭義単調増加とする。$I$$f\neq 0$ならば$f$の逆関数が存在して$(f(a), f(b))$上微分可能であり
$$\frac{df}{dx}=\frac{1}{\frac{df}{dy}}$$
が成り立つ。

さて、指数関数$e^x$は微分可能であり、狭義の単調増加なので$e^x$の逆関数が存在します。この逆関数は$e^x>0$から$x>0$で定義されて$\log x$と表します。この$\log x$を対数関数と呼ぶわけですね。つまり、

$$e^{\log x}=x$$
を満たすようなものが対数関数になります。そうすると次のことがいえます。

$a>0$に対して$f(x)=a^x$$\mathbb{R}$上微分可能であって
$$\frac{df}{dx}=a^x\log a$$
が成り立つ。

証明は簡単で、$a^x=e^{x{\log a}}$とかけるので合成関数の微分法より
$(a^x)'=\log a(a^x)$となるとわかります。(証明終了)

この定理によって結局のところ$a>0$なら微分可能だとわかりました。このように指数の方に注目することでネイピア数のときの微分可能性に帰着させることができるわけですね。

ということで今回は終わりになります。次節はべき級数展開を考えることでより指数関数が拡張できないかというところからスタートになります。

お楽しみに。それではまた近いうちに。

投稿日:2021116

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