本記事では、可換代数入門(通称アティマク)の演習問題に収録されているグロタンディーク群の構成を見ていこうと思います。(枠で囲ってある問題文は全て可換代数入門の136ページより引用しています。)
で生成されている
これが基本の定義です。それでは早速問題の解答に移りましょう。最初の問題はグロタンディーク群がある種の普遍性を持つことを示せというものです。
アーベル群
を満たす唯一つの準同型写像
加法的関数
と定める。 このとき
を可換にする
ここで、次の問題で使う命題を紹介します。これはアティマクの演習問題 7.18 の結果です。(証明は省きます)
ネーター環
が存在してある
が各
が存在してある
が各
は完全列なので
となる。同じことを
が成り立つので、題意が示された。
という一意的な分解を持つ。ただし
となるから
も完全列となる。したがってベクトル空間の次元公式から
が成り立ち、
したがって問題1で示した普遍性により
は完全列である。ただし左から2つ目の射は
より
図式
を考える。問題1で示した普遍性により2つの穴の部分は可換となり、したがってこの図式は全体としても可換となる。また、同様に普遍性から図式
も可換となる。この図式におけるスカラーの制限
となる。したがって
を得る。
問題はこれで全て解けたことになります。お疲れ様でした。問題3は結構強いことを主張していてなかなか面白いですよね。問題4は環とグロタンディーク群の対応が関手的になっていることを主張しています。果たしてこれを考えて何になるのかと思うかもしれませんが、一つの例としてデデキント整域におけるイデアル群はグロタンディーク群になるということがわかっています。
最後まで読んでいただいた方、ありがとうございました!!