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cosh, sinhのお話

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$$\newcommand{a}[0]{\alpha} \newcommand{b}[0]{\beta} \newcommand{beq}[0]{\begin{eqnarray*}} \newcommand{c}[2]{{}_{#1}\mathrm{C}_{#2}} \newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{cb}[0]{\binom{2n}{n}} \newcommand{ds}[0]{\displaystyle} \newcommand{eeq}[0]{\end{eqnarray*}} \newcommand{G}[1]{\Gamma({#1})} \newcommand{g}[0]{\gamma} \newcommand{hp}[0]{\frac{\pi}2} \newcommand{I}[0]{\mathrm{I}} \newcommand{l}[0]{\ell} \newcommand{limn}[0]{\lim_{n\to\infty}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{nck}[0]{\binom{n}{k}} \newcommand{p}[0]{\varphi} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{space}[0]{\hspace{12pt}} \newcommand{sumk}[1]{\sum_{k={#1}}^n} \newcommand{sumn}[1]{\sum_{n={#1}}^\infty} \newcommand{t}[0]{\theta} \newcommand{tc}[0]{\TextCenter} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

はじめに

この記事では, 受験生の方向けに, 共通テストで出たと噂の$\cosh, \sinh$のお話をしようと思います. 数Ⅲから暫く離れていた方も多いと思うので, 読んでもらえたらいいなと思います.
${}$

定義

$$\cosh x=\frac{e^x+e^{-x}}{2},\ \sinh x=\frac{e^x-e^{-x}}{2}$$
$$\tanh x=\frac{\sinh x}{\cosh x}=\frac{e^x-e^{-x}}{e^x+e^{-x}}$$

と定義します.

これらは, 双曲線関数と呼ばれます. この由来は後に書くことにします.

読み方は, 正式には「はいぱぼりっくこさいん/さいん」が正しいようですが, 私は「こっしゅ/しゃいん」と読んでいます. (そうすると$\tanh$は何と読むのでしょうか...)

これを用いると, 共通テストで出た関数は
$$ f(x)=\cosh(\log2\cdot x)$$
$$ g(x)=\sinh(\log2\cdot x)$$
となります.

${}$

基本的な性質

まずは具体的な値を求めてみます.

$$\cosh0=1,\ \sinh0=0$$

これは三角関数と同じですね.

また, 定義より明らかに$\cosh$は偶関数, $\sinh,\tanh$は奇関数となります. これも三角関数と同じですね.
${}$

グラフの概形は, 以下のようになります. ( Wikipedia より )

双曲線関数 双曲線関数

これは三角関数とは全く違いますね.
${}$

次に, 微分に関する性質を考えてみると

$$\frac{d}{dx}\cosh x=\sinh x$$
$$\frac{d}{dx}\sinh x=\cosh x$$

となります. 三角関数の場合と少し違いますが, 互いに移り合うという関係は同じですね.

寧ろ, 双曲線関数では微分にマイナスがつかないので, こちらの方が性質が良く, 綺麗にも思えます.
${}$

次に,

$$\cosh^2x-\sinh^2x=1$$

が成り立ちます. 今度はここにマイナスが出てくるんですね.

これは, 両辺を微分するか, 具体的に2乗してみれば良いです.

ちなみに, これが, 双曲線関数というお名前の由来です. 双曲線$x^2-y^2=1$のパラメタ表示が$(x,y)=(\pm\cosh t,\sinh t)$と表せるから, という理由みたいです.
${}$

最後に, 加法定理を書いておきます. 使い道はそんなにない気がしますが, 三角関数と比較したりすると面白いです.

$$\cosh(x+y)=\cosh x\cosh y+\sinh x\sinh y$$
$$\sinh(x+y)=\sinh x\cosh y+\cosh x\sinh y$$

これはとっても綺麗で覚えやすいですね ♪ (別に覚える必要もないですが)

また, これを使うと, 和積公式, 積和公式, 合成公式とかも作れたりするのでしょうか.
${}$

積分での利用

数Ⅲで三角関数の活躍する場所と言えば, やっぱり置換積分ですよね. ということで, 双曲線関数の置換積分を考えてみます.
${}$

(例題) $\ds \int \sqrt{x^2+1}\,dx$

一部では, 高校数学で一番面倒な積分との噂もあるやつです. (まあなので, 入試には出ませんけどね.) これを解いてみます.

$\ds\sinh^2t+1=\cosh^2t$を思い出して, $x=\sinh t$とおいてみます. $dx=\cosh t\,dt$なので,
$$\beq \int \sqrt{x^2+1}\,dx&=&\int\sqrt{\sinh^2t+1}\cdot\cosh t\,dt\\[5pt] &=&\int\cosh^2t\,dt\\[5pt] &=&\int\frac{1+\cosh2t}{2}\,dt\\[5pt] &=&\frac t2+\frac{\sinh2t}{4}+C \eeq$$

となります. ただし2行目から3行目の変形で, 半角公式を使いました.

また, ここで$t$は, $\ds x=\frac{e^t-e^{-t}}{2}$$t$について解いて$\ds t=\log\big(x+\sqrt{x^2+1}\big)$ と表されます.
${}$

オイラーの式との関係

これは高校範囲ではないのですが, 少し面白いと思います.

ここでのオイラーの式とは,

$$ e^{ix}=\cos x+i\sin x$$

のことです. この式で両辺の逆数を取ると$e^{-ix}=\cos x-i\sin x$となるので, 以下の表示ができます.

$$\cos x=\frac{e^{ix}+e^{-ix}}{2}$$
$$\sin x=\frac{e^{ix}-e^{-ix}}{2i}$$

と, いうことで, 実は双曲線関数はほとんど三角関数と同じものだったのでした! 実際, 以下の関係式が成り立ちます.

$$\cos x=\cosh ix,\ \cosh x=\cos ix$$
$$ i\sin x=\sinh ix,\ i\sinh x=\sin ix$$

これのせいで, 双曲線関数の公式は, 三角関数の公式の2乗のところの符号が変わっていたりしていたのです.

${}$

おわりに

ここまで読んで下さった方, どうもありがとうございました! 至らない点がありましたらご指摘願いたいです.
${}$

${}$

投稿日:2021118

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投稿者

東大理数B4です

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