この記事では, 受験生の方向けに, 共通テストで出たと噂の$\cosh, \sinh$のお話をしようと思います. 数Ⅲから暫く離れていた方も多いと思うので, 読んでもらえたらいいなと思います.
${}$
と定義します.
これらは, 双曲線関数と呼ばれます. この由来は後に書くことにします.
読み方は, 正式には「はいぱぼりっくこさいん/さいん」が正しいようですが, 私は「こっしゅ/しゃいん」と読んでいます. (そうすると$\tanh$は何と読むのでしょうか...)
これを用いると, 共通テストで出た関数は
$$ f(x)=\cosh(\log2\cdot x)$$
$$ g(x)=\sinh(\log2\cdot x)$$
となります.
${}$
まずは具体的な値を求めてみます.
これは三角関数と同じですね.
また, 定義より明らかに$\cosh$は偶関数, $\sinh,\tanh$は奇関数となります. これも三角関数と同じですね.
${}$
グラフの概形は, 以下のようになります. ( Wikipedia より )
双曲線関数
これは三角関数とは全く違いますね.
${}$
次に, 微分に関する性質を考えてみると
となります. 三角関数の場合と少し違いますが, 互いに移り合うという関係は同じですね.
寧ろ, 双曲線関数では微分にマイナスがつかないので, こちらの方が性質が良く, 綺麗にも思えます.
${}$
次に,
が成り立ちます. 今度はここにマイナスが出てくるんですね.
これは, 両辺を微分するか, 具体的に2乗してみれば良いです.
ちなみに, これが, 双曲線関数というお名前の由来です. 双曲線$x^2-y^2=1$のパラメタ表示が$(x,y)=(\pm\cosh t,\sinh t)$と表せるから, という理由みたいです.
${}$
最後に, 加法定理を書いておきます. 使い道はそんなにない気がしますが, 三角関数と比較したりすると面白いです.
これはとっても綺麗で覚えやすいですね ♪ (別に覚える必要もないですが)
また, これを使うと, 和積公式, 積和公式, 合成公式とかも作れたりするのでしょうか.
${}$
数Ⅲで三角関数の活躍する場所と言えば, やっぱり置換積分ですよね. ということで, 双曲線関数の置換積分を考えてみます.
${}$
(例題) $\ds \int \sqrt{x^2+1}\,dx$
一部では, 高校数学で一番面倒な積分との噂もあるやつです. (まあなので, 入試には出ませんけどね.) これを解いてみます.
$\ds\sinh^2t+1=\cosh^2t$を思い出して, $x=\sinh t$とおいてみます. $dx=\cosh t\,dt$なので,
$$\beq
\int \sqrt{x^2+1}\,dx&=&\int\sqrt{\sinh^2t+1}\cdot\cosh t\,dt\\[5pt]
&=&\int\cosh^2t\,dt\\[5pt]
&=&\int\frac{1+\cosh2t}{2}\,dt\\[5pt]
&=&\frac t2+\frac{\sinh2t}{4}+C
\eeq$$
となります. ただし2行目から3行目の変形で, 半角公式を使いました.
また, ここで$t$は, $\ds x=\frac{e^t-e^{-t}}{2}$を$t$について解いて$\ds t=\log\big(x+\sqrt{x^2+1}\big)$ と表されます.
${}$
これは高校範囲ではないのですが, 少し面白いと思います.
ここでのオイラーの式とは,
のことです. この式で両辺の逆数を取ると$e^{-ix}=\cos x-i\sin x$となるので, 以下の表示ができます.
と, いうことで, 実は双曲線関数はほとんど三角関数と同じものだったのでした! 実際, 以下の関係式が成り立ちます.
これのせいで, 双曲線関数の公式は, 三角関数の公式の2乗のところの符号が変わっていたりしていたのです.
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ここまで読んで下さった方, どうもありがとうございました! 至らない点がありましたらご指摘願いたいです.
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