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高校数学解説
文献あり

1+2+3+4+5=1+2+4+8とかについて

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はじめに

この記事ではこんな等式たちで遊んでみます。
(⭐){1=11+2=1+21+2+3+4+5=1+2+22+231+2++89+90=1+2+22++210+211
1からNまでの自然数の和が,初項1公比r(上の例はr=2)項数Mの等比数列の和に等しい等式を作って遊ぼう!という記事です。つまり,次の等式を満たすような正の整数の組(r,N,M)を考えます。(🍀)1+2++N=1+r+r2++rM1

r=2のとき

まずは具体例として,r=2のときを考えます。すなわち,次の等式を満たす正の整数N,Mを求めればよいです。12N(N+1)=2M1
これを少し変形しますと,
12N(N+1)=2M14N2+4N=2M+38(2N+1)2=2M+37
となりますので,2M+37が平方数となるようなMを決定することが必要です。
この問題の結果には名前が付いています。

Ramanujan-Nagell's theorem

方程式2n7=x2を満たす正の整数の組(n,x)は,以下の5組のみ存在する。(n,x)=(3,1),(4,3),(5,5),(7,11),(15,181)

この定理1を認めれば,(N,M)の組としては(N,M)=(1,1),(2,2),(5,4),(90,12)のみとなります。故にr=2のときに🍀を満たすものは⭐で提示したものしか存在しないことが分かりました。
なおNagellによる証明(英語版)は,参考文献[1]を参照ください。その論文でやってることをざっくり説明すると,整数環OQ(7)が類数1であることを用いて,1+72n乗における考察に帰着して問題を解いています。

r=3のとき

r=3のときは,次の等式を満たす(N,M)を求めればよいです。12N(N+1)=3M12

r=3のときは自明なものだけ

N(N+1)=3M1を満たす正の整数の組(N,M)は,(N,M)=(1,1)に限る。

この命題2の証明は長くありませんので,証明します。

M=1のときはN=1のみ。

M2とすると,9を法とした合同を考えることで,N(N+1)8(mod9)
でなければならない。しかし,N(N+1)9で割った余りは0,2,3,6のいずれかであることが計算によって分かる。故にM2の時にN(N+1)=3M1を満たすNは存在しない。

よってr=3のときの🍀は自明なものしか存在しないことが分かりました。

r=9のとき

次にr=9のときの例を考えてみましょう。例えば次のような例が見つかります。
(🌠){1=11+2+3+4=1+91+2++13+14=1+9+921+2++39+40=1+9+92+931+2++120+121=1+9+92+93+94
🌠から薄々感づくかもしれませんが,こんな結果が得られます。

r=9のときは無限にある

1+2++N=1+9+92++9M1
を満たす組(N,M)は無数にあり,特にMは任意の自然数で,それに対応してN=3M12が定まる。

さくっと命題3も証明しちゃいましょう。

次の方程式を解けばよい。12N(N+1)=9M18
これを8倍して+1をすれば,4N2+4N+1=9M
となり,(2N+1)2=(3M)2なので,N=3M12と求められる。任意の自然数Mに対して3M12は自然数であるから,命題 3 の主張は正しい。

r=9のときの🍀は無数に存在することが分かりました。

発展的な話題

今回はr=2,3,9のときの🍀について考察をしていきました。それぞれ,「非自明な解はあったが有限個しか存在しなかったもの」「非自明な解が存在しないもの」「無限にあるもの」といった場合でした。以下の進展が考えられます。
a
r=9のときのように,任意の自然数Mに対してNを定めることが出来るようなrは他にあるか?他にあるならそれは無数か?
a
r=3のときのように,(N,M)の組が(1,1)しか存在しないrは他にあるか?他にあるならそれは無数か?
a
r=2のときのように,非自明な(N,M)が有限個存在するようなrは他にあるか?他にあるならそれは無数か?

例えば,2r50M<20としたときに,(N,M)=(1,1)以外の解としては以下を発見することが出来ました。(もちろん計算機に任せています。)
(r,N,M)=(2,1,1),(2,2,2),(2,5,4),(2,90,8),=(4,6,3),=(5,3,2),=(9,3M12,M),=(14,5,2),=(20,6,2),=(23,159,4),=(26,37,3),=(27,7,2),=(44,9,2),

やはりM3のときは非自明な雰囲気を感じますね。1+2++158+159=1+23+232+233や,1+2++36+37=1+26+262
なんかは面白い形をしています。

個人的には,こんな予想が成り立つんじゃないかと思っています。

🍀を満たす正の整数解(N,M)は,⑴r=2のときは4組,⑵r=9のときは無数,⑶r2,9のときは高々2組しか存在しない。

これを証明できるのだろうか,考えるのは面白そうです。

ここまでお読みいただきありがとうございました!

参考文献

投稿日:2021119
更新日:113
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ぱるち
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数学屋さんをしています。代数,数論系に興味があり,今は楕円曲線と戯れています。Mathlogは現実逃避用という噂もあります。@f_d00123

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  1. はじめに
  2. $\bm{r=2}$のとき
  3. $\bm{r=3}$のとき
  4. $\bm{r=9}$のとき
  5. 発展的な話題
  6. 参考文献