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高校数学解説
文献あり

1+2+3+4+5=1+2+4+8とかについて

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$$\newcommand{beku}[1]{\displaystyle\overrightarrow{\vphantom{b}\mbox{$#1$}}} \newcommand{bekutoru}[1]{\displaystyle\overrightarrow{\vphantom{b}\mbox{#1}}} \newcommand{bm}[1]{\boldsymbol{#1}} \newcommand{bunsuu}[2]{\dfrac{\,\lower.44ex{#1}\,}{\,\raise.10ex{#2}\,}} \newcommand{Deg}[0]{^{\circ}} \newcommand{dsqrt}[1]{\displaystyle\sqrt{\,#1\,}} \newcommand{gauss}[1]{\left[\mkern1mu {#1}\mkern1mu\right]} \newcommand{kaku}[1]{\angle\mbox{#1}} \newcommand{kumiawase}[2]{\mathord{{}_{#1}\kern-.12em{}\text{C}_{#2}}} \newcommand{mdot}[0]{\!\cdot\!} \newcommand{sankaku}[1]{\triangle \mbox{#1}} \newcommand{suuretu}[1]{\left\{#1\right\}} \newcommand{tsqrt}[1]{\textstyle\sqrt{\,#1\,}} \newcommand{zyunretu}[2]{\mathord{{}_{#1}\kern-.12em{}\text{P}_{#2}}} $$

はじめに

この記事ではこんな等式たちで遊んでみます。
$$\style{font-family:inherit}{\text{(⭐)}}\left\{ \begin{alignat}{9} 1&&=&1\\ 1+2&&=&1+2\\ 1+2+3+4+5&&=&1+2+2^2+2^3\\ 1+2+\cdots+89+90&&=&1+2+2^2+\cdots+2^{10}+2^{11} \end{alignat}\right. $$
$1$から$N$までの自然数の和が,初項$1$公比$r$(上の例は$r=2$)項数$M$の等比数列の和に等しい等式を作って遊ぼう!という脳死記事です。つまり,次の等式を満たすような正の整数の組$(r,\;N,\;M)$を考えます。$$ \style{font-family:inherit}{\text{(🍀)}\quad }1+2+\cdots+N=1+r+r^2+\cdots+r^{M-1} $$

$\bm{r=2}$のとき

まずは具体例として,$r=2$のときを考えます。すなわち,次の等式を満たす正の整数$N,\;M$を求めればよいです。$$ \bunsuu12N(N+1)=2^M-1 $$
これを少し変形しますと,
\begin{align} \bunsuu12N(N+1)&=2^M-1\\ 4N^2+4N&=2^{M+3}-8\\ (2N+1)^2&=2^{M+3}-7 \end{align}
となりますので,$2^{M+3}-7$が平方数となるような$M$を決定することが必要です。
この問題の結果には名前が付いています。

Ramanujan-Nagell's theorem

方程式$2^n-7=x^2$を満たす正の整数の組$(n,\;x)$は,以下の$5$組のみ存在する。$$ (n,\;x)=(3,\;1),\;(4,\;3),\;(5,\;5),\;(7,\;11),\;(15,\;181) $$

この定理 1 を認めれば,$(N,\;M)$の組としては$$ (N,\;M)=(1,1),(2,2),(5,4),(90,12) $$のみとなります。故に$r=2$のときに🍀を満たすものは⭐で提示したものしか存在しないことが分かりました。
なお$\text{Nagell}$による証明(英語版)は,参考文献[1]を参照ください。その論文でやってることをざっくり説明すると,整数環$\mathcal O_{\mathbb Q(\sqrt{-7})}$が類数$1$であることを用いて,$\bunsuu{1+\sqrt7}{2}$$n$乗における考察に帰着して問題を解いています。

$\bm{r=3}$のとき

$r=3$のときは,次の等式を満たす$(N,\;M)$を求めればよいです。$$ \bunsuu12N(N+1)=\bunsuu{3^M-1}{2} $$

$\bm{r=3}$のときは自明なものだけ

$N(N+1)=3^M-1$を満たす正の整数の組$(N,\;M)$は,$(N,\;M)=(1,\;1)$に限る。

命題 2

の証明は長くありませんのでここに記述します。

$M=1$のときは$N=1$のみ。

$M\geq2$とすると,$9$を法とした合同を考えることで,$$ N(N+1)\equiv 8 \pmod 9 $$
でなければならない。しかし,$N(N+1)$$9$で割った余りは$0,2,3,6$のいずれかであることが計算によって分かる。故に$M\geq2$の時に$N(N+1)=3^M-1$を満たす$N$は存在しない。

よって$r=3$のときの🍀は自明なものしか存在しないことが分かりました。

$\bm{r=9}$のとき

次に$r=9$のときの例を考えてみましょう。例えば次のような例が見つかります。
$$\style{font-family:inherit}{\text{(🌠)}}\left\{ \begin{alignat}{9} 1&&=&1\\ 1+2+3+4&&=&1+9\\ 1+2+\cdots+13+14&&=&1+9+9^2\\ 1+2+\cdots+39+40&&=&1+9+9^2+9^3\\ 1+2+\cdots+120+121&&=&1+9+9^2+9^3+9^4 \end{alignat}\right. $$
🌠の例から,こんな結果が得られます。

$\bm{r=9}$のときは無限にある

$$ 1+2+\cdots+N=1+9+9^2+\cdots+9^{M-1} $$
を満たす組$(N,\;M)$は無数にあり,特に$M$は任意の自然数で,それに対応して$N=\bunsuu{3^M-1}{2}$が定まる。

命題 3

の証明も長くありません。

次の方程式を解けばよい。$$ \bunsuu12N(N+1)=\bunsuu{9^M-1}{8} $$
これを$8$倍して$+1$をすれば,$$ 4N^2+4N+1=9^M $$
となり,$(2N+1)^2=\left(3^M\right)^2$なので,$N=\bunsuu{3^M-1}2$と求められる。任意の自然数$M$に対して$\bunsuu{3^M-1}{2}$は自然数であるから,命題 3 の主張は正しい。

$r=9$のときの🍀は無数に存在することが分かりました。

発展的な話題

今回は$r=2,3,9$のときの🍀について考察をしていきました。それぞれ,「非自明な解はあったが有限個しか存在しなかったもの」「非自明な解が存在しないもの」「無限にあるもの」といった場合でした。以下の進展が考えられます。
$\phantom a$
$r=9$のときのように,任意の自然数$M$に対して$N$を定めることが出来るような$r$は他にあるか?他にあるならそれは無数か?
$\phantom a$
$r=3$のときのように,$(N,M)$の組が$(1,1)$しか存在しない$r$は他にあるか?他にあるならそれは無数か?
$\phantom a$
$r=2$のときのように,非自明な$(N,M)$が有限個存在するような$r$は他にあるか?他にあるならそれは無数か?

例えば,$2\leq r\leq 50$$M<20$としたときに,$(N,M)=(1,1)$以外の解としては以下を発見することが出来ました。(もちろん計算機に任せています。)
\begin{align} (r,N,M)&=(2,1,1),(2,2,2),(2,5,4),(2,90,8),\\ &=(4,6,3),\\ &=(5,3,2),\\ &=(9,\bunsuu{3^M-1}{2},M),\\ &=(14,5,2),\\ &=(20,6,2),\\ &=(23,159,4),\\ &=(26,37,3),\\ &=(27,7,2),\\ &=(44,9,2), \end{align}

やはり$M\geq3$のときは非自明な雰囲気を感じますね。$$ 1+2+\cdots+158+159=1+23+23^2+23^3 $$や,$$ 1+2+\cdots+36+37=1+26+26^2 $$
なんかは面白い形をしています。

個人的には,こんな予想が成り立つんじゃないかと思っています。

🍀を満たす正の整数解$(N,M)$は,⑴$r=2$のときは$4$組,⑵$r=9$のときは無数,⑶$r\neq2,9$のときは高々$2$組しか存在しない。

これを証明できるのだろうか,考えるのは面白そうです。

ここまでお読みいただきありがとうございました!

参考文献

投稿日:2021119
OptHub AI Competition

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投稿者

ぱるち
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数学屋さんをしています。代数,数論系に興味があり,今は楕円曲線と戯れています。Mathlogは現実逃避用という噂もあります。@f_d00123

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