はじめに
この記事はをの関数とした時, 微分方程式を解くことを目的とする. ここでは実数の変数であり, は実数の定数である.
微分方程式を解く
まずは問題を正確に書き直す.
をある実数の定数とする. 実数を変数とする微分可能な関数が常にを満たしているとき, をを用いて表せ.
変数を明記する記法を取れば任意の実数についてを満たしているということである. 最初に一般に広く知られている解法があるのでそれを書くことにする.
変数分離法
を積分定数とする. 即ちこれらは実数の定数である.
からへの変形は置換積分法による. さて, は積分定数であったので任意の実数値を取りうる. 従っても任意の実数値を取りうる. この時であるがとしたも元の方程式の解である. 従っては任意の実数値と取りうる定数として解はと書ける.
とりあえず解くことはできるしこれでもいいと思うかもしれない。しかし大きな問題が一つある. からへの変形で両辺をで割ったがこれがに等しかったならば問題である. 例えば, 次のようなことが起こりうる.
の式はは任意の実数について成り立つ. ところがの式はにおいて成り立たない.
ところが実際, これは問題にならない. 実は「ある一点で」となる時「至る所で」となることが示せるからである. この事実の対偶を取ることで, 常にでない限りはにならないということが分かる.
割りにならないこと
まず示すべきことを明記しよう. などはすでに述べたとおりである.
をある実数の定数とする. かつであるとき常にである.
これを示すために次のテイラーの定理を用いる.
テイラーの定理
nを自然数とする. 回微分可能な関数について, 任意の定数に対してあるがとの間に存在して
が成り立つ. ただしはの階導関数を表す.
この定理の証明は略す. では目的の定理を示そう.
を任意の自然数とする. このときより数学的帰納法を用いてが分かる. 即ち, に対してが成り立つ. これとテイラーの定理からの時あるがとの間に存在して
と表せる. そしてが微分可能であることから連続であり, との間で有界であることが分かる. 即ちある正の実数が存在してが成り立つ. 従って
が任意の自然数に対して成り立つのでとして挟み撃ちの定理から. これはに他ならない.
そして, であったので常にである.
この結果から我々は安心して両辺をで割ることができる. それは常にといういわば, つまらない解を除いてしまえば他のすべては一度もになりえないということによるものである.
おわりに
になりえないことの部分の証明は参考とする文献を見たことがないのでもしかしたらもっと容易で簡潔なものがあるかもしれない. また, この記事を書こうと思った目的は書きたかったからというのもあるが, この部分の証明が書かれているものを見たことがないので書いたというのもある.