これは指数関数の第2弾のおまけになります。よかったら読んでみてください。
前回は対数関数、つまり$\log x$についてはあっさりと終わってしまったので少し補足をしたいとおもいます。
さて前回は指数関数の逆関数として対数関数を定義しました。であれば逆関数の関係にあるのですから対数関数から指数関数が定義できてもおかしくないはずです。今回はそれをやっていきましょう。
さて指数関数を対数関数から定義するには指数関数を持ち出さず対数関数を定義する必要があります。それについては積分表示を用いましょう。
$x>0$について
$$\log x =\int_1^x\frac{1}{t}\ dt$$
が成り立つ。
証明は微分積分学の基本定理によります。上の等式が成り立つのは指数関数の逆関数として定義した事により、逆関数の微分法が使えるからです。ですが、別に右辺の積分を考えるのは指数関数など出さなくても考える事ができるわけです。という事でこの右辺の積分で対数関数を定義します。
$x>0$について
$$\log x =\int_1^x\frac{1}{t}\ dt$$
と定義する。
さてこのように定義すると$\log x$は次のような性質を持ちます。
$x, y>0$とする。この時次が成り立つ。
(1)$\log x$は狭義単調増加であり、微分可能である。
(2)$log x+\log y=\log (xy)$が成り立つ。
(1)は積分の単調性と微分積分学の基本定理より明らかです。
(2)を示します。$u=xt$と置換すると$t$が$1$から$y$で変化するとき、$u$が$x$から$xy$で変化することがわかります。よって
$$\int_1^x\frac{1}{t}\ dt= \int_x^{xy}\frac{x}{u}\times\frac{1}{x}\ du =\int_{x}^{xy}\frac{1}{u}\ du=\log (xy)-\log x$$
よって(2)が得られます。(証明終了)
ということで、対数関数は狭義単調増加なので、逆関数が値域の範囲で存在します。ここで気になるのはこの逆関数、つまりは指数関数の値域はきちんと$\mathbb{R}$になっているのかということです。
$\log$は明らかに連続であるので
$$\lim_{x\to +0}\log x=-\infty,\ \lim_{x\to\infty}\log x=+\infty$$
が示せれば中間値の定理から$\mathbb{R}$が値域であるといえます。これについては次の判定法を用いましょう。
$f$が$[1, \infty)$で連続かつ単調減少な非負関数であるとする。このとき、広義積分
$$\int_1^{\infty}f(x)\ dx$$
と級数
$$\sum_{n=1}^{\infty}f(n)$$
の収束発散は一致する。
$k=1,2\ldots $とします。このとき$[k, k+1]$上では
$$f(k+1)\leq f(x)\leq f(k)$$
となります。これより、
$$f(k+1)\leq \int_{k}^{k+1}f(x)\ dx\leq f(k)$$
なのでこれを$k$について足し合わせると
$$\sum_{k=1}^{\infty}f(k+1)\leq \int_{1}^{\infty}f(x)\ dx\leq \sum_{k=1}^{\infty}f(k)$$
が成り立ちます。したがって、
$$\sum_{k=1}^{\infty}f(k+1)=\sum_{k=1}^{\infty}f(k)-f(1)$$
に注意すればどちらか一方が収束するとき他方も収束することがわかります。(証明終了)
これよりとくに$1/t$は単調減少かつ$[1, \infty)$連続で非負な関数なので
$$\sum_{n=1}^{\infty}\frac{1}{n}$$
と収束発散が一致します。上の級数は調和級数とよばれる有名な級数で発散することが知られています。一般には$\log$を用いてその発散を示すことが多いですが、今の場合、それは循環論法となってしまいます。そこで次の収束判定法を用います。
数列$\{a_n\}_{n=1}^{\infty}$に対して、
$$\sum_{n=1}^{\infty}a_n,\ \sum_{n=1}^{\infty}2^na_{2^n}$$
の二つの級数の収束、発散は一致する。
証明は参考文献をご覧ください。
さて、これを用いると
$$\sum_{n=1}^{\infty}2^n\frac{1}{2^n}=+\infty$$
より調和級数は正の無限大の発散することがわかります。
これより特に
$$\lim_{x\to\infty}\log x=+\infty$$
が成り立つことがわかります。また同様に
$$\lim_{x\to +0}\log x=-\infty$$
が成り立つことがわかります。したがって、$\log x$の値域は$\mathbb{R}$となります。
これより指数関数を対数関数の逆関数として定義することで次がわかります。
$\exp x$を$\log x$の逆関数とするとき次が成り立つ。
(1)$\exp x>0$
(2)$\exp(x+y)=(\exp x )(\exp y)$
(3)$(\exp x)’=\exp x$
(1)は$\log x$の定義域が値域となるので明らかです。
(2)を示しましょう。
$$\log (\exp x )(\exp y) =\log (\exp x) +\log (\exp y)=x+y$$
であることに注意すると
$$\exp(x+y)=\exp \log (\exp x )(\exp y) = (\exp x )(\exp y) $$
となります。ゆえに(2)が成り立ちます。
最後に(3)を示します。逆関数の微分法から
$y=\exp x$とおくと
$$(\exp x)’=\frac{1}{\frac{1}{y}}=y$$
となるので結論が得られます。(証明終了)
というわけで、対数関数から指数法則が成り立つことまで確認することができました。一つの関数でも色んな定義の仕方があるとご理解いただけたでしょうか?
ただお節介ながら言わせていただくと、こういう幾つか定義があるような概念のさまざまな定義方法を知ってるから偉いのではありません。大切なことは自分の理解しやすい、あるいは受け入れやすい定義をしっかりと覚えておくことです。そこだけは改めて注意しておきます。
というわけで最後はやかましい終わりにはなってしまいましたが、今回の記事はこれで終わりです。
ではまたいつか。