2 つの数列
任意の自然数
有界な単調列は収束列であることは既知としてよい。
また,収束列の差の極限値は,極限値の差に等しいという,数列の基本性質を用いると議論がスッキリする。
これは,区間
原典に当たって調べたわけではないので極めて不確かな情報だが,おそらく Bolzano がその原型を最初に使ったのではないかと想像している。後に Weierstrass が使ったかどうかと,Cantor あたりが使ったかどうかも調べたいところである。
実数の連続性に関する公理のうち,どちらかというと「Cauchy 列は収束列である」という Cantor の公理と組み合わせるもののようだが,「有界な単調列は収束列である」という公理とも極めて相性が良いので,今思いついたが,この区間縮小法の原理そのものを実数の連続性の公理の一つとして採用しても良いのではないだろうか。
実数の連続性に関する公理のリストをまとめたものとして,かつて『数学セミナー』に掲載された記事をまとめたとある別冊に,赤摂也の示した(かなりマニアックな!)リストがあるので,それを見直したらフツーに載っていそうな気もするが。その後だいぶ経ってから出版された同氏の『実数論講義』(確か最初は SEG 出版のシリーズの一冊で,最近,日本評論社から再刊された本)を見ても載っているかもしれない。
赤摂也『実数論講義』の p.133 から p.140 にかけて,「区間縮小法の原理」と「Archimedes の公理」を併せたものから「Dedekind の公理」を導く議論が展開されている。関数の連続性に関する基本定理だけでなく,微分学と積分学において高校でも習う基本的な定理がいずれも実数の連続性の公理としての資格を有するという,私には到底思いつきもしなかった(まさに数学基礎論的な?)観点から解析学の基礎的な事柄の間の関連を徹底的に洗い流した赤先生ほどの方が区間縮小法の原理の連続性の公理としての可能性を見逃されているはずなどなかったわけである。
あと,日本評論社のサイトで調べたところ,1976 年に出版された,月刊誌『数学セミナー』の増刊号「数学セミナー・リーディングス」の一冊である『数学学習案内』に収められている赤先生の「微分積分学」と題する記事は,『数学セミナー』1972 年 5 月号 p.2 が初出の同記事を採録したものと思われる。
私は『数学学習案内』と中学生か高校生のころ近所の図書館だったかで出会い,その後,古書店で再開したときは一も二もなく購入し,教科書はろくに読みもしないのに,『数学学習案内』だけはしっかり読み通したものである。
それはともかく,『実数論講義』の前身が SEG Collection として 1996 年に出版されるよりも四半世紀近く前に,赤先生は微分積分学の基礎的な定理たちと実数の連続性の公理の関係性の分析を終えておられたわけである。
なお,これとは異なる方向性ではあるが,Bernays による,解析学を展開するために必要となる公理系の分析や,Bishop らによる構成的な数学 (constructive mathematics) など,覚悟を決めてじっくり学びたいところである。それはまた別の話であるが。