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高校数学議論
文献あり

k-リュカ数の四捨五入表示についての考察(その2)

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はじめに

 この記事では 前回の記事 に続いてk-リュカ数の四捨五入表示について私なりに考察した結果を紹介します。
 今回の考察では次のような結果が得られました。

 k-リュカ数Ln(k)の四捨五入表示
Ln(k)=αkn
n0nで成り立つようなn0のうち最小のものをnkとおくと
nk=O(k3)
が成り立つ。

 ただしαkは方程式
fk(x)=xkj=0k1xj=0
の唯一の正の実数解としました。
  前回 ではO(k3logk)であったところがO(k3)になったので多少ましになったと思います。

方針

 今回は 前回の記事 での考察を元にまず以下の結果を示します。

 方程式fk(x)=0αk以外の解に適当に番号を付けてβ1,β2,,βk1とおくと
|βj|<154cos2πjk2k+1
が成り立つ。

 これがわかればk-リュカ数Ln(k)の一般項から
|L(2k+1)n(k)αk(2k+1)n|=|j=1k1βj(2k+1)n|j=1k11(54cos2πjk)n
が成り立つのであとはこれが12未満になるためにはn
n0=O(k2)
以上であれば十分であることを示して命題1を得ます。

argβjの評価

 まずargβjの取りうる範囲について考えてみます。βを方程式
fk(x)=xk+12xk+1x1=0
の解とすると
βk=12β
が成り立つのでした。
 ここでβ=r(cosθ+isinθ)と極座標表示すると上式は
rk(coskθ+isinkθ)=(2rcosθ)+irsinθ(2rcosθ)2+r2cos2θ
と表せ、この両辺の()/()を取ることで
tankθ=rsinθ2rcosθ
つまり極方程式
r=2tankθsinθ+cosθtankθ=2sinkθsin(k+1)θ
が得られます。この方程式からθの取りうる範囲を考えてみましょう。
 いまrθについての周期2πおよび偶関数(グラフがx軸について対称)なので0θπで考えることにします。

g(θ)=2sinkθsin(k+1)θ
0θπにおいて単調増加である。

 和積の公式から
g(θ)=2(kcoskθsin(k+1)θ(k+1)sinkθcos(k+1)θ)sin2(k+1)θ=(2k+1)sinθsin(2k+1)θsin2(k+1)θ
が成り立つことに注意する。
 いま0θπk+1において
((2k+1)sinθsin(2k+1)θ)=(2k+1)(cosθcos(2k+1)θ)=2(2k+1)sinkθsin(k+1)θ0
より
(2k+1)sinθsin(2k+1)θ(2k+1)sin0sin0=0
が成り立ち、また
arcsin12k+1<π212k+1<πk+1
に注意するとπk+1θπ2においても
(2k+1)sinθsin(2k+1)θ>(2k+1)sin(arcsin12k+1)1=0
が成り立つ。
 よってg(θ)=g(πθ)に注意すると0θπにおいてg(θ)0が成り立つことがわかる。

 さてこの補題とr=|β|>0であることからθの取りうる範囲は以下のように評価できます。

 方程式fk(x)=0αk以外の解に適当に番号を付けてβ1,β2,,βk1とおくと
2πjk<argβj<π(2j+1)k+1(1j<k2)
が成り立つ。

 なおk2<j<kにおいてはβj=βkjと定めることで
2πjk>argβj>π(2j+1)k+1
が成り立ちます。

 まず0<θ<πにおいてg(θ)>0なるθの範囲を考える。
 いまπjk+1の前後でのsinkθおよびsin(k+1)θの符号を考えると
limθπjk+1±0g(θ)=
なのでπjk+1<θ<π(j+1)k+1におけるg(θ)のグラフは
θπjk+1πjkπ(j+12)k+12π(j+1)k+1g(θ)02
となりπjk<θ<π(j+1)k+1g(θ)>0の条件になる。
 ここで方程式fk(x)=0αk以外の解
β=r(cosθ+isinθ)(0<r<1, 0<θ<π)
は二つの極方程式
cosθ=14r(r2+41r2k)r=2sinkθsin(k+1)θ(=g(θ))
を満たすのであった。
 いまこのそれぞれの極方程式が表すグラフを考えてみると 前回の記事 の補題3や先の増減表から
πjk<θ<π(j+1)k+1
においてただ一つ交点を持ち(j=0についてはg(θ)>g(0)=2kk+1>1より不適)、また 前回の記事 の補題5から
2πjkπ6k<argβ<2πjk+π6k
であったことに注意するとjが偶数のときその交点は方程式fk(x)=0の解となることがわかる。

 ちなみに増減表におまけとして示したようにr<1という条件から
2πjk<argβj<π(2j+12)k+12
とも評価できる。

n0の評価

 さて 前回の記事 と同じように
Rj=154cos2πjk2k+1
とおくと
14|βj|(|βj|2+41|βj|2k)=cosθj<cos2πjk=5414Rj2k+1<14Rj(Rj2+41Rj2k)
つまり|βj|<Rjが成り立ち(これはk2<j<kにおいても成り立つ)、j=k2のときはargβj=πなので同様にして|βj|<Rjがわかる。以上より命題2を得る。
 命題2を得たいま
|L(2k+1)n(k)αk(2k+1)n|=|j=0k1βj(2k+1)n|j=1k11(54cos2πjk)n
が成り立つので次はこの右辺を評価していこう。

k2π2(1π248)<n
において
j=1k11(54cos2πjk)n<12
が成り立つ。

 まず1j<k4において
1(54cos2πjk)n<14j(j+1)
が成り立つことを示す。
 いまjの取り方より
54cos(2πjk)>54(112(2πjk)2+124(2πjk)4)=1+8π2j2k2(1π23j2k2)>1+8π2j2k2(1π23(k4)2k2)=1+8π2j2k2(1π248)
なのでa=π2(1π248)とおくとk2a<nより
(54cos2πjk)n>(1+8aj2k2)n>1+8anj2k2>1+8j2>4j(j+1)
を得る。
 またk4jk2においても
1(54cos2πjk)n15k2a<14k2(k2+1)14j(j+1)
が成り立っているのでb=k2とおくと
j=1k11(54cos2πjk)nj=1b2(54cos2πjk)n<12j=1b(1j1j+1)=12(11b+1)<12を得る。

 以上より以下の主張を得る。

 少なくとも
k2(2k+1)π2(1π248)<n
においてLn(k)=αknが成り立つ。

ちなみにπ2(1π248)=7.840なのでざっくりk33nくらいで成り立つことになる。

オーダーの評価

 ここでRjの取り方をもっとよくしたらオーダーが変わらないか考えてみよう。つまるところ
cos2πjk=14Rj(Rj2+41Rj2k)
が成り立つように取ってみる。
 このとき
|Ln(k)αkn|<j=1k1Rjn<12
と評価できるとすると、少なくともR1n<12つまり
log2logR1<n
でなくてはならないのでR1=rkとおいてlogrkのオーダーを考えてみよう。

logrk=O(1k3)
が成り立つ。

 いま
rk21rk2k=e2logrke2klogrk=(1+2logrk)(12klogrk)+O((klogrk)2)=2(k+1)logrk+O((klogrk)2)
が成り立つことに注意するとrkの定義式
cos2πk=1rk(1+14(rk21rk2k))
の対数を取ることで
log(cos2πk)=log(1(2πk)2+O(1k4))=12(2πk)2+O(1k4)log(1+14(rk21rk2k))=14(rk21rk2k)+O((rk21rk2k)2)=k+12logrk+O((klogrk)2)
つまり
12(2πk)2+O(1k4)=k12logrk+O((klogrk)2)
と評価できることから主張を得る。

 したがってこの一連の手法ではnk=O(k3)が最良の評価であることがわかる。

参考文献

投稿日:2021131
更新日:2024515
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投稿者

子葉
子葉
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主に複素解析、代数学、数論を学んでおります。 私の経験上、その証明が簡単に探しても見つからない、英語の文献を漁らないと載ってない、なんて定理の解説を主にやっていきます。 同じ経験をしている人の助けになれば。最近は自分用のノートになっている節があります。

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