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複素解析:正則関数のL^p収束極限も正則関数

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この記事では、以下の定理を証明する。

ΩCを領域とし、1p<+とする。Ω上の正則関数の列{fi}iNΩ上の(複素数値)可測関数f
limi+fifLp(Ω)=0
を満たすとする。ここで、uLp(Ω)=(Ω|u|p)1pである。このとき、fはあるΩ上の正則関数とほとんど至るところ一致する。

証明では以下の定理を使う。

ΩCを領域とする。Ω上の正則関数の列{fi}iNΩ上の(複素数値)関数fがあり、Ω上で広義一様にfifと収束すると仮定する。このとき、fΩ上の正則関数である。

定理1の証明

定理2より、{fi}Ω上広義一様収束し、その収束先f^fとほとんどいたるところ一致することを示せばよい。そのためにまず、各点zΩのある近傍U上のLノルムに関して{fi}がCauchy列であることを示す。

Ω上の正則関数gに対して、平均値の不等式より
|g(w)|1πr2ζB(w,r)|g(ζ)|dλ(z)
が成り立つ。1p+1q=1を満たすqを取ると、Hölderの不等式uvL1uLpvLqにより、右辺は
1πr2gLp(B(w,r))1Lq(B(w,r))=1πr2(πr2)1/qgLp(B(w,r))
で抑えられる。

B(z,2r)Ωとなるようにr>0を取る。このとき、wB(z,r)に対してB(w,r)B(z,2r)Ωであるから、そのようなwに対して、
|g(w)|(πr2)1/q1gLp(B(w,r))(πr2)1/q1gLp(Ω)
と抑えられる。したがって、
supwB(z,r)|g(w)|(πr2)1/q1gLp(Ω)
という評価が得られる。

上の式でg:=fifjとおくことにより、{fi}Ω上のLpノルムに関してCauchy列であれば、B(z,r)上のLノルムに関してもCauchy列であることが分かる。仮定より、{fi}Ω上のLpノルムに関してCauchy列であるから、{fi}B(z,r)上のLノルムに関して一様収束する。定理2より、{fi}の一様収束極限として正則関数f^を取ることができる。一方、Lp収束する関数の列は部分列を取ればほとんど至るところで各点収束するので、ほとんど至るところf=f^が成り立つ。

定理1の系として、次のことが成り立つ。

ΩCを領域とし、1p<+とする。このとき、Ω上のLpノルムが有限であるような正則関数のなす空間Apは、Lpノルムについて閉集合である。特に、ApΩ上のLpノルムに関してBanach空間となる。

ひとこと

試験的にあっさりめの記事を書いてみようと思ってやってみましたが、「a.e.で一致する関数を同一視するかどうか」という微妙な問題があり、あまり気軽には書けませんでした……。

投稿日:2021131
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