この記事ではヴァンデルモンド行列$V_n(\x)$の逆行列$V_n(\x)^{-1}$の各成分を具体的に求めます。
まずヴァンデルモンド行列とは次のような行列のことを言うのでした。
体$K$上のベクトル$\x=(x_1,x_2,\ldots,x_n)$に対し
$$V_n(\x)=
\begin{pmatrix}
1&x_1&\c&x_1^{n-1}\\
1&x_2&\c&x_2^{n-1}\\
\v&\v&\d&\v\\
1&x_n&\c&x_n^{n-1}\\
\end{pmatrix}$$
と定まる行列のことをヴァンデルモンド行列と言う。
$x_1,x_2,\ldots,x_n$がそれぞれ異なる必要はありませんが、$V_n(\x)$が逆行列を持つ、つまり
$$\det V_n(\x)=\prod_{1\leq i< j\leq n}(x_j-x_i)\neq0$$
となる必要十分条件としてそれぞれ異なるものとしました。
そしてその逆行列$V_n(\x)^{-1}$は以下のように求まります。
$f(x)=\prod^n_{j=1}(x-x_j)$について
$$\frac{f(x)}{x-x_j}=\sum^{n}_{i=1}c_i^{(j)}x^{i-1}$$
とおくと
$$V_n(\x)^{-1}=\left(\frac{c_i^{(j)}}{f'(x_j)}\right)_{1\leq i,j\leq n}$$
が成り立つ。
また$f(x)=\sum^{n}_{i=0}c_ix^i$とおくと
$$f(x)=(x-x_j)\frac{f(x)}{x-x_j}$$
より
$$c_i=c_i^{(j)}-x_jc_{i+1}^{(j)}$$
という漸化式が成り立つので、$c_n^{(j)}=c_n=1$および$f(x_j)=\sum^{n}_{k=0}c_kx_j^k=0$に注意すると
$$c_i^{(j)}=\sum_{k=i}^{n}c_kx_j^{k-i}=-\sum^{i-1}_{k=0}c_kx_j^{k-i}$$
つまり$V_n(\x)^{-1}$は以下のようにも表現できます。
$$f(x)
=\prod^n_{j=1}(x-x_j)
=\sum^{n}_{i=0}c_ix^i$$
とおくと
\begin{align}
V_n(\x)^{-1}
&=\left(\frac{\sum_{k=i}^{n}c_kx_j^{k-i}}{f'(x_j)}\right)_{1\leq i,j\leq n}\\
&=\left(\frac{-\sum^{i-1}_{k=0}c_kx_j^{k-i}}{f'(x_j)}\right)_{1\leq i,j\leq n}
\end{align}
が成り立つ。
任意のベクトル$\y=(y_1,y_2,\ldots,y_n)$に対し
$$g(x_j)=y_j\qquad(j=1,2,\ldots,n)$$
なる$n-1$次関数
$$g(x)=\sum^n_{i=1}a_ix^{i-1}$$
を考えると、その係数$\a=(a_1,a_2,\ldots,a_n)^T$は線形方程式
$$V_n(\x)\a=\y$$
によって求められるのでこれを解くことで
$$g_\y(x)=\sum^n_{i=1}\l(\sum^n_{j=1}(V_n(\x)^{-1})_{i,j}\cdot y_j\r)x^{i-1}$$
を得る。
またラグランジュの補間公式から
\begin{align}
g(x)
&=\sum^n_{j=1}\frac{y_j}{f'(x_j)}\cdot\frac{f(x)}{x-x_j}\\
&=\sum^n_{i=1}\l(\sum^n_{j=1}\frac{c_i^{(j)}}{f'(x_j)}y_j\r)x^{i-1}
\end{align}
とも表せるので$g(x)$の$y_jx^{i-1}$の係数を比較することで
$$(V_n(\x)^{-1})_{i,j}=\frac{c_i^{(j)}}{f'(x_j)}$$
を得る。