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逆像の面白い性質

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$$\newcommand{Coker}[0]{\mathrm{Coker}} \newcommand{F}[0]{\mathbb{F}} \newcommand{Hom}[0]{\mathrm{Hom}} \newcommand{Ker}[0]{\mathrm{Ker}} $$

はかいしんさんのツイート
https://twitter.com/code_1623/status/1357238255893110785?s=20
を読んで写像の逆像の面白い性質を知ったので、それについて書こうと思います.

$A,B$を集合とし、$f\colon A\to B$を写像とします.すると冪集合の間には逆像をとる写像
$$ f^*\colon P(B)\to P(A);~V\mapsto f^{-1}(V) $$
が誘導されます.実は次のようなことが成り立ちます.

  1. $f$が単射であることは$f^*$が全射であることと同値である.
  2. $f$が全射であることは$f^*$が単射であることと同値である.

全射と単射が入れ替わっていることに注意します.この定理自体は愚直に考えれば証明できますが、ここでは代数の知識を使って綺麗に証明したいと思います.

集合$S$に対して全単射
$$(\F_2^{\oplus S})^\vee\to P(S);~g\mapsto \{s\in S\mid g([s])=1\}$$
が存在することに着目する.ただし$({-})^\vee$$\mathbb{F}_2$ベクトル空間の双対を表す.

写像$f\colon A\to B$$\F_2$線型写像$\varphi_f\colon \F_2^{\oplus A}\to \F_2^{\oplus B}$を誘導し、$f$の単射性・全射性は$\varphi_f$の単射性・全射性と同値である.また$\varphi_f^*\colon (\F_2^{\oplus B})^\vee\to (\F_2^{\oplus A})^\vee$は上記の全単射により$f^*\colon P(B)\to P(A)$に対応する.よって主張は以下の補題から従う.

$k$を体とする.$\varphi\colon V\to W$$k$ベクトル空間の間の線型写像とし、$\varphi^*\colon W^\vee\to V^\vee$をその双対写像とする.このとき、

  1. $\varphi$が単射であることは$\varphi^*$が全射であることと同値である.
  2. $\varphi$が全射であることは$\varphi^*$が単射であることと同値である.

$k$$k$加群として入射的なので、完全列
$$ 0\to \Ker~\varphi\to V\to W\to \Coker~\varphi\to 0 $$
より完全列
$$ 0\to (\Coker~\varphi)^\vee\to W^\vee\to V^\vee\to (\Ker~\varphi)^\vee\to 0 $$
が得られる.主張はここから直ちに従う.

投稿日:202124

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J_Koizumi
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