概要
本稿では,関数空間上のBorel集合族をdyadic pointに着目して具体的に書き下す.
距離空間としての
上の実数値連続関数全体の集合をと書く.
とする.定義より,,である.また,ならば,任意のに対してゆえである.さらに
が成り立つ.以上より,は上の距離である.
以下,距離空間を単にと書く.
を書き下す
準備
任意のに対してとなるようなが存在することを示せばよい.とおくと,よりである.このとき,を満たすに対して,
となるからすなわちである.従って,はの開集合である.
任意のに対して,となるようなが存在する.さらに,を満たすが存在する.このときであるから
が成り立つ.は可算であるから,右辺は可算和となっている.
はの開区間の可算和で表せるから,となるような()が存在する.このとき である.に対してはの開集合であるから,はの開集合である.
dyadic pointと
位相空間に対して,の開集合をすべて含む最小の-加法族をと書く.を上のBorel集合族と呼ぶ.
とする. の開集合に対してはの開集合であるから,はの開集合をすべて含む.さらに,は上の-加法族である.実際,
が成り立つ. 以上よりである.すなわちとなり,結論を得る.
に対して とおく.このとき,各は上の-加法族である.
である.また,に対してのとき である.さらにのとき
である.以上より,は上の-加法族である.
に対して とおく.また, と定める.
がを満たすとき,あるが存在してが成り立つ.よって,特に任意のに対してすなわち が成り立つ.これはであることに他ならない.ゆえに が得られる.一方,が上式の右辺に属するとき, あるが存在して,任意のに対してすなわちが成り立つ.ここで,任意のおよびに対して,を満たすをとると,実数列はに収束する.よって,より となる.すなわちであるから
が得られる.以上より
が従う.
をの開集合とすると, 任意のに対して となるようなが存在する.を満たすをとると である.上の有理係数多項式全体はの稠密部分集合であるから,を満たすが存在する.このとき,に対して が成り立つからとなる.よって
が得られる.ここで,およびはともに可算集合であるから,上式の右辺は可算和となっている. さらにである. 従ってが成り立つ.
に対して
であることに注意すると,ゆえ,に対してが成り立つ. よってである.一方,の任意の開集合はに属するからも成り立つ.以上よりである.
補遺:の可分性
補題8の証明において「上の有理係数多項式全体はの稠密部分集合である」ことを用いた.この節では次に示すWeierstrassの多項式近似定理を認めて,この事実を証明する.
Weierstrassの多項式近似定理
を閉区間上の実数値連続関数とする.このとき,任意のに対してを満たすような実係数多項式が存在する.
とするとき, 任意のに対してを満たすような有理係数多項式が存在する.
Weierstrassの多項式近似定理より, 任意のに対してを満たすような実係数多項式が存在する.このとき,各に対してを満たすが存在する.そこでと定めると,任意のに対して
が成り立つ.ゆえにを得る.
上の有理係数多項式全体はの可算稠密部分集合である.従って,は可分である.
任意のおよびに対してを満たすようなが存在する.よってであるから,はの稠密部分集合であり,特には可算である.