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C[0,1]のBorel集合族を具体的に書く

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概要

本稿では,関数空間C[0,1]上のBorel集合族をdyadic pointに着目して具体的に書き下す.

距離空間としてのC[0,1]

[0,1]上の実数値連続関数全体の集合をC[0,1]と書く.

f,gC[0,1]に対してd(f,g)=supx[0,1]|f(x)g(x)|と定める.このとき,dC[0,1]上の距離である.

f,g,hC[0,1]とする.定義よりd(f,g)=d(g,f)d(f,g)0d(f,f)=0である.また,d(f,g)=0ならば,任意のx[0,1]に対して|f(x)g(x)|=0ゆえf=gである.さらに
d(f,h)=supx[0,1]|{f(x)g(x)}+{g(x)h(x)}|supx[0,1]{|f(x)g(x)|+|g(x)h(x)|}supx[0,1]|f(x)g(x)|+supx[0,1]|g(x)h(x)|=d(f,g)+d(g,h)
が成り立つ.以上より,dC[0,1]上の距離である.

以下,距離空間(C[0,1],d)を単にC[0,1]と書く.

B(C[0,1])を書き下す

準備

t[0,1]に対して,写像πt:C[0,1]Rπt(f)=f(t)により定める.

t[0,1]と開区間(a,b)Rに対して,逆像πt1((a,b))C[0,1]の開集合である.

任意のgπt1((a,b))に対して{fC[0,1]:d(f,g)<r}πt1((a,b))となるようなr>0が存在することを示せばよい.r=min{bg(t),g(t)a}とおくと,a<g(t)<bよりr>0である.このとき,d(f,g)<rを満たすfC[0,1]に対して,

  • f(t)g(t)ならばa<g(t)f(t)f(t)g(t)<rbg(t)よりf(t)<b
  • f(t)<g(t)ならばf(t)<g(t)<bg(t)f(t)<rg(t)aよりa<f(t)

となるからa<f(t)<bすなわちfπt1((a,b))である.従って,πt1((a,b))C[0,1]の開集合である.

Rの任意の開集合Oは開区間の可算和で表せる.

任意のyOに対して,{xR:|xy|<ry}Oとなるようなry>0が存在する.さらに,yry<py<y<qy<y+ryを満たすpy,qyQが存在する.このときy(py,qy)Oであるから
O=yO(py,qy)が成り立つ.Qは可算であるから,右辺は可算和となっている.

t[0,1]Rの開集合Oに対して,逆像πt1(O)C[0,1]の開集合である.

ORの開区間の可算和で表せるから,O=n=1(an,bn)となるような(an,bn)Rn=1,2,)が存在する.このとき πt1(O)=πt1(n=1(an,bn))=n=1πt1((an,bn)) である.n=1,2,に対してπt1((an,bn))C[0,1]の開集合であるから,πt1(O)C[0,1]の開集合である.

dyadic pointとB(C[0,1])

位相空間Xに対して,Xの開集合をすべて含む最小のσ-加法族をB(X)と書く.B(X)X上のBorel集合族と呼ぶ.

t[0,1]BB(R)に対してπt1(B)B(C[0,1])である.

A={BB(R):πt1(B)B(C[0,1])}B(R) とする. Rの開集合Oに対してπt1(O)C[0,1]の開集合であるから,ARの開集合をすべて含む.さらに,AR上のσ-加法族である.実際,

  • πt1(R)=C[0,1]B(C[0,1])よりRA
  • AAのときπt1(Ac)=πt1(A)cB(C[0,1])よりAcA
  • A1,A2,Aのときπt1(An)=πt1(An)B(C[0,1])よりAnA

が成り立つ. 以上よりB(R)Aである.すなわちA=B(R)となり,結論を得る.

n=0,1,に対して Fn={{fC[0,1]:f(k2n)Bk,k=0,1,,2n}:B0,B1,,B2nB(R)}={k=02nπk2n1(Bk):B0,B1,,B2nB(R)}とおく.このとき,各FnC[0,1]上のσ-加法族である.

C[0,1]={fC[0,1]:f(k2n)R,k=0,1,,2n}Fnである.また,j=1,2,に対してFj={fC[0,1]:f(k2n)Bk(j),k=0,1,,2n}Fnのとき j=1Fj={fC[0,1]:f(k2n)j=1Bk(j),k=0,1,,2n}Fn である.さらにF={fC[0,1]:f(k2n)Bk,k=0,1,,2n}Fnのとき
Fc=k=02n{fC[0,1]:f(k2n)Bkc}Fnである.以上より,FnC[0,1]上のσ-加法族である.

n=0,1,に対してDn={k2n:k=0,1,,2n} とおく.また,D=n=0Dn と定める.

fC[0,1]r>0に対して{gC[0,1]:d(f,g)<r}σ(Fn:n1)である.

gC[0,1]d(f,g)<rを満たすとき,あるn{1,2,}が存在してd(f,g)<r1nが成り立つ.よって,特に任意のdDに対して|g(d)f(d)|<r1nすなわちf(d)(r1n)<g(d)<f(d)+(r1n) が成り立つ.これはgπd1((f(d)(r1n),f(d)+(r1n)))であることに他ならない.ゆえに {gC[0,1]:d(f,g)<r}n=1dDπd1((f(d)(r1n)f(d)+(r1n))) が得られる.一方,gが上式の右辺に属するとき, あるN{1,2,}が存在して,任意のdDに対してgπd1((f(d)(r1N),f(d)+(r1N)))すなわち|g(d)f(d)|<r1Nが成り立つ.ここで,任意のx[0,1]およびn{1,2,}に対して,x[k(n)12n,k(n)2n]を満たすk(n){1,2,,2n}をとると,実数列{k(n)2n}n=1xに収束する.よって,|gf|C[0,1]より |g(x)f(x)|=limn|g(k(n)2n)f(k(n)2n)|r1N<r となる.すなわちd(f,g)<rであるから
n=1dDπd1((f(d)(r1n)f(d)+(r1n))){gC[0,1]:d(f,g)<r} が得られる.以上より
{gC[0,1]:d(f,g)<r}=n=1dDπd1((f(d)(r1n)f(d)+(r1n)))σ(Fn:n1) が従う.

C[0,1]の任意の開集合はσ(Fn:n1)に属する.

OC[0,1]の開集合とすると, 任意のfOに対して{gC[0,1]:d(f,g)<rf}O となるようなrf>0が存在する.0<qf<rfを満たすqfQをとると{gC[0,1]:d(f,g)<qf}{gC[0,1]:d(f,g)<rf} である.[0,1]上の有理係数多項式全体PC[0,1]の稠密部分集合であるから,d(f,Pf)<qf2を満たすPfPが存在する.このとき,gC[0,1]に対して d(Pf,g)<qf2d(f,g)d(f,Pf)+d(Pf,g)<qf2+qf2=qfが成り立つからf{gC[0,1]:d(Pf,g)<qf2}{gC[0,1]:d(f,g)<qf}となる.よって
O=fO{gC[0,1]:d(Pf,g)<qf2}が得られる.ここで,QおよびPはともに可算集合であるから,上式の右辺は可算和となっている. さらに{gC[0,1]:d(Pf,g)<qf2}σ(Fn:n1)である. 従ってOσ(Fn:n1)が成り立つ.

B(C[0,1])=σ(Fn:n1)である.

n=0,1,に対して
Fn={k=02nπk2n1(Bk):B0,B1,,B2nB(R)}であることに注意すると,πk2n1(Bk)B(C[0,1])ゆえ,n=0,1,に対してFnB(C[0,1])が成り立つ. よってσ(Fn:n1)B(C[0,1])である.一方,C[0,1]の任意の開集合はσ(Fn:n1)に属するからB(C[0,1])σ(Fn:n1)も成り立つ.以上よりB(C[0,1])=σ(Fn:n1)である.

補遺:C[0,1]の可分性

補題8の証明において「[0,1]上の有理係数多項式全体PC[0,1]の稠密部分集合である」ことを用いた.この節では次に示すWeierstrassの多項式近似定理を認めて,この事実を証明する.

Weierstrassの多項式近似定理

fを閉区間[a,b]上の実数値連続関数とする.このとき,任意のε>0に対してsupx[a,b]|f(x)P(x)|<εを満たすような実係数多項式Pが存在する.

fC[0,1]とするとき, 任意のε>0に対してsupx[0,1]|f(x)Q(x)|<εを満たすような有理係数多項式Qが存在する.

Weierstrassの多項式近似定理より, 任意のε>0に対してsupx[0,1]|f(x)P(x)|<ε2を満たすような実係数多項式P(x)=j=0dpjxjが存在する.このとき,各j=0,1,,dに対して|pjqj|<ε2(d+1)を満たすqjQが存在する.そこでQ(x)=j=0dqjxjと定めると,任意のx[0,1]に対して
|P(x)Q(x)|=|j=0d(pjqj)xj|j=0d|pjqj||xj|j=0d|pjqj|<(d+1)ε2(d+1)=ε2が成り立つ.ゆえにsupx[0,1]|f(x)Q(x)|supx[0,1]{|f(x)P(x)|+|P(x)Q(x)|}supx[0,1]|f(x)P(x)|+supx[0,1]|P(x)Q(x)|<ε2+ε2=εを得る.

[0,1]上の有理係数多項式全体PC[0,1]の可算稠密部分集合である.従って,C[0,1]は可分である.

任意のfC[0,1]およびn=1,2,に対してd(f,Qn)=supx[0,1]|f(x)Qn(x)|<1nを満たすようなQnPが存在する.よってlimnQn=fであるから,PC[0,1]の稠密部分集合であり,特にPは可算である.

投稿日:2021216
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  2. 距離空間としてのC[0,1]
  3. B(C[0,1])を書き下す
  4. 準備
  5. dyadic pointとB(C[0,1])
  6. 補遺:C[0,1]の可分性