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部分積分を繰り返してできる級数

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概要

今回は、部分積分を繰り返すことで得られる級数を紹介します。具体的には、簡単な例として、指数関数のテイラー展開
$$ e^x=\sum_{n=0}^{\infty}\frac{x^n}{n!} $$
を作り、同じようにして
$$ \sum_{n=1}^{\infty}\frac{1}{n(n+1)\cdots (n+m)} $$
を求めてみたいと思います。あまり厳密な議論はせず、できるだけ軽い記事にしたいと思います。

準備

これから、部分積分を繰り返すということをするので、計算負荷軽減のため、いわゆる「瞬間部分積分」というものを準備しておきます。詳しくはヨビノリさんの こちら の動画をご覧ください。

可積分な2つの関数の積$fg$を積分することを考えます。ヨビノリさんの動画にならって、$f$$n$回微分したものを$f^{(n)}$と書くことにしましょう。$n$回積分したものは$f^{(-n)}$と書きます。すると、部分積分を繰り返して、
$$ \int fg dx\\ =f^{(-1)}g^{(0)}-\int f^{(-1)}g^{(1)} dx\\ =f^{(-1)}g^{(0)}-f^{(-2)}g^{(1)}+\int f^{(-2)}g^{(2)} dx\\ =\cdots \\ =f^{(-1)}g^{(0)}-f^{(-2)}g^{(1)}+\cdots +(-1)^n f^{(-n-1)}g^{(n)}+(-1)^{n+1} \int f^{(-n-1)}g^{(n+1)} dx $$
となります。つまり、$f$を積分する方と決めておけば、「$f$積分$g$そのまま」から始めて、「$f$積分$g$微分」を符号を反転させながら繰り返せばよい訳です。

指数関数のテイラー展開

$\int e^x dx$をあえて$\int (x)'e^x dx$とみて、部分積分を繰り返します。
$$ \int e^x dx =xe^x-\frac{x^2}{2!}e^x+\frac{x^3}{3!}e^x-\cdots+C =\left(x-\frac{x^2}{2!}+\frac{x^3}{3!}-\cdots\right)e^x+C $$
当然$\int e^x dx=e^x+C'$ですから、$x=0$での値から積分定数のズレを調整すれば、
$$ \left(x-\frac{x^2}{2!}+\frac{x^3}{3!}-\cdots\right)e^x=e^x-1 $$
となり、したがって、
$$ e^{-x}=1-x+\frac{x^2}{2!}-\frac{x^3}{3!}+\cdots $$
を得ます。$x\mapsto -x$と置き換えれば、よく見慣れた指数関数のテイラー展開そのものです。ただし、上の部分積分を繰り返しているところで、誤差項の積分が$0$に収束することを示す必要がありますが、特に難しいことはないので割愛します。以下同様です。

$\sum_{n=1}^{\infty}\frac{1}{n(n+1)\cdots (n+m)}$

同じ方法で、
$$ \sum_{n=1}^{\infty}\frac{1}{n(n+1)\cdots (n+m)} $$
も求められることを見てみましょう。$x^m\log x$を積分します。(積分定数略)
$$ \int x^m\log x dx\\ =\frac{x^{m+1}}{m+1}\log x-\frac{x^{m+2}}{(m+1)(m+2)}\frac{1}{x}+\frac{x^{m+3}}{(m+1)(m+2)(m+3)}\frac{-1}{x^2}-\cdots\\ =\frac{x^{m+1}}{m+1}\log x-\left(\sum_{n=0}^{\infty}\frac{n!}{(m+1)(m+2)\cdots (m+n+2)}\right)x^{m+1}\\ =\frac{x^{m+1}}{m+1}\log x-\left(\sum_{n=0}^{\infty}\frac{m!n!}{(m+n+2)!}\right)x^{m+1}\\ =\frac{x^{m+1}}{m+1}\log x-\left(\sum_{n=0}^{\infty}\frac{m!}{(n+1)(n+2)\cdots (m+n+2)}\right)x^{m+1} $$
一方、$t=\log x$と置換すると、
$$ \int x^m\log x dx =\int e^{mt}te^tdt =\int te^{(m+1)t}dt\\ =t\frac{e^{(m+1)t}}{m+1}-\frac{e^{(m+1)t}}{(m+1)^2} =\frac{x^{m+1}}{m+1}\log x-\frac{x^{m+1}}{(m+1)^2} $$
となるので、積分定数のズレを考慮して、
$$ \sum_{n=0}^{\infty}\frac{m!}{(n+1)(n+2)\cdots (m+n+2)}=\frac{1}{(m+1)^2} $$
形を整えれば、
$$ \sum_{n=1}^{\infty}\frac{1}{n(n+1)\cdots (n+m)}=\frac{1}{m\cdot m!} $$
と求まりました。

おわりに

読んでいただきありがとうございました。

投稿日:2021220

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