概要
今回は、コルンブルムによる合同ゼータ関数の一つ
を紹介します。は素数、は素多項式で、です。
私自身、ゼータ関数のことは超初歩的なことしか知らない初心者ですが、たまたまこれを知って、代数のよい復習にもなる面白い話題だと思ったので、記事にすることにしました。そのため、私の代数の復習の目的が大きいので、ゼータ関数と直接は関係ない代数の説明が少々長くなりますが、ご了承ください。
素元分解の一意性からの導出
くどいようですが、が一意分解環であることから簡単に説明します。多項式環は、通常の多項式の割り算により、ユークリッド環になります。ユークリッド環は単項イデアル整域、単項イデアル整域は一意分解環であるので、は一意分解環です。したがって、リーマンゼータ関数のオイラー積と同様の計算が成り立ちます。
モニックな上次多項式は、係数の取り方に注目して個あるので、で
と計算されます。
次の素多項式の個数からの導出
次に、別の方法でを求めてみたいと思います。素多項式に関する積を、次数ごとに行う方法です。
すると、
とおけば、
となります。以下、を求めます。
を求める
そのために、まずをで因数分解(素式分解)することを考えます。因数分解は、根を考えることが重要です。上最小分解体をとし、における根の集合をとしましょう。すると明らかに、
となります。は重根を持ちません。なぜなら、となり、が重根ならに矛盾するからです。ということは、の元の上最小多項式全体の集合をとすれば、の元すべての積が、の素式分解を与えることになります。
そこで、を決定する前に、その準備として、であることを示しておきます。が体であることを示せば、はの根をすべて含む最小の体ですから、に一致することになります。を取ると、でであることに注意して、
となるので、は和と積について閉じており、の部分環になります。なら、
が成立するので、が体であることが示されました。これは位数の有限体ですから、と書くことにします。
に戻ります。実は、は、の約数次の既約モニック多項式全体の集合に一致します。後者をとおいてを示しましょう。
について。を任意に取ると、のにおける根の一つをに添加した体は、の中間体になります。すると、より、拡大次数はの約数になります。しかし今、ですから、です。よってが示されました。
について。を任意に取ると、の約数を用いて、と書けます。の根の一つをに添加した体は次拡大なので、位数の有限体となります。よって、ラグランジュの定理から、となり、とおくと、
であるので、です。したがって、の根はの元になり、は最小多項式だから、となります。
以上により、の素式分解
が得られました。両辺の次数を比較すれば、
となります。ゼータ関数の計算にはここまでで十分なのですが、これはの乗法的関数ですので、一応、メビウスの反転公式を用いて、
とすることができます。
を求める
を変形します。とおき、右辺の対数を取ると、
以上より、
と求まりました。
おわりに
とても面白い計算だと思いました。ゼータ関数に魅せられる人が多いのもわかる気がします。
読んでいただきありがとうございました。