代数学の基本定理の短い証明を紹介します.実はBrouwerの不動点定理を少し拡張したものを用いるとすんなり示せてしまいます.
$D^2=\{z\in \mathbb{C}\mid |z|\leq 1\},~S^1=\{z\in \mathbb{C}\mid |z|= 1\}$と定義します.
$n\geq 1$とし、$q\colon D^2\to D^2$を連続写像とすると、$z^n+q(z)$は$D^2$内に零点を持つ.
全ての$z\in D^2$に対して$z^n\neq -q(z)$であると仮定して矛盾を導く.$-q(z)$を始点とし$z^n$を通る半直線と$S^1$の交点を$h(z)$と定めると連続写像$h\colon D^2\to S^1$が得られる.$h|_{S^1}$は$z\mapsto z^n$と表せるので写像度$n$だが、$h|_{S^1}$は可縮な空間$D^2$を経由するので写像度$0$であり矛盾する.
$n\geq 1$とし、$a_0,\dots,a_{n-1}\in \mathbb{C}$とする.このとき$z^n+a_{n-1}z^{n-1}+\dots+a_0$は$\mathbb{C}$内に零点を持つ.
必要ならば$z$を$Rz~(R\gg 0)$に置き換えることで$\sum_i|a_i|\leq 1$としてよい.$q(z)=a_{n-1}z^{n-1}+\dots+a_0$に対して定理1を適用すれば主張が得られる.