本記事では、kkkaaa氏が 2021年1月1日に発表した 次の自作問題を取り扱う。
$a, b, c$ を正整数とする。
$$\abs{2021^a-20^b-21^c}$$
の最小値を求めよ。
kkkaaa氏は上記ツイートで数日後にMathlogに解説を投稿すると書いているが、Mathlogにも解説が見当たらない。先日筆者がこの問題を解いたので、本記事で筆者の解を記す。
$$2021^2-20^2-21^5=-60$$
であるから、$\abs{2021^a-20^b-21^c}$ の最小値は $60$ 以下である。また $a, b, c$ は正の整数だから
$$2021^a-20^b-21^c\equiv 1-1\equiv 0\mmod{20}$$
となる。よって $\abs{2021^a-20^b-21^c}$ は $20$ の倍数である。よって
$$2021^a-20^b-21^c\in \{-40, -20, 0, 20, 40\}$$
が正の整数解をもたないことを示せば、$\abs{2021^a-20^b-21^c}$ の最小値は $60$ であることがわかる。以下、このことを示す。
まず、この方程式の正の整数解が存在しない、つまり
$$20^b+21^c=2021^a$$
となる正の整数 $a, b, c$ は存在しないことを示す。そこで、そのような $a, b, c$ が存在するとし、矛盾を導く。実はこの場合が最も難しい。
このとき
$$20+21^c=2021^a$$
となる。
$$2021^a\equiv 20\mmod{3}$$
だから $a$ は奇数である。よって
$$21^c\equiv 2021^a-20\equiv 5^a-4\equiv 1\mmod{8}$$
より $c$ は偶数である。とくに $c\geq 2$ であるから $21^c$ は $9$ の倍数、よって
$$5^a\equiv 2021^a\equiv 20\equiv 2\mmod{9}$$
だから $a\equiv 5\mmod{6}$ でなければならない。しかし
$$3\equiv 5^5\equiv 2021^a\equiv 20\equiv -1\pmod{7}$$
となって矛盾する。
$20^b$ は $8$ の倍数となるので
$$5^a\equiv 2021^a\equiv 21^c\equiv 5^c\mmod{8}$$
である。このことから $a, c$ はともに偶数かともに奇数でなければならない。
$$5^a\equiv 2021^a\equiv 20^b\equiv (-1)^b\mmod{7}$$
より $a$ は $3$ の倍数だから $a$ は $6$ の倍数でなければならない。$c\geq 2$ だから $21^c$ は $3^2=9$ の倍数なので
$$2^b\equiv 20^b\equiv 2021^a\equiv 1\mmod{9}$$
より $b$ も $6$ の倍数でなければならない。よって
$$2021^a\equiv \pm 1\mmod{13}, 20^b\equiv \pm 1\mmod{13}$$
より
$$8^c\equiv 21^c\equiv 2021^a-20^b\equiv 0, 2, 11\mmod{13}$$
となるが、$8^c\equiv 1, 5, 8, 12\mmod{13}$ のいずれかでなければならないから、これは不可能である。
$$5^a\equiv 2021^a\equiv 20^b\equiv \pm 1\mmod{7}$$
より $a$ は $3$ の倍数でなければならないが、 $a$ は奇数だから
$a\equiv 3\mmod{6}$ でなければならない。よって
$2021^a\equiv -1\mmod{9}$ かつ $2021^a\equiv 6^a\equiv 5, 8\mmod{13}$ である。
$c=1$ のとき、
$$20^b\equiv 2021^a-21\equiv 0, 10\mmod{13}$$
でなければならない。しかし
$$2^b\equiv 20^b\equiv 2021^a-21\equiv 5\mmod{9}$$
であるから $b\equiv 5\mmod{6}$ である。よって $20^b\equiv 7^b\equiv 2, 11\mmod{13}$ となって矛盾する。
$c\geq 2$ のとき
$$2^b\equiv 20^b\equiv 2021^a\equiv -1\mmod{9}$$
より $b\equiv 3\mmod{6}$ となる。
$8^c\equiv 21^c=2021^a-20^b\equiv 0, 3, 10\mmod{13}$ のいずれかでなければならないが、先に述べたように $8^c\equiv 1, 5, 8, 12\mmod{13}$ のいずれかでなければならないから、これは矛盾である。
これらのことから、どの場合にも矛盾をきたすので、
$$20^b+21^c=2021^a$$
となる正の整数 $a, b, c$ は存在しないことがわかる。
$$2021^a-20^b-21^c=20$$
のとき
$$2^a-2^b\equiv 2\mmod{3}$$
なので $a$ は偶数で $b$ は奇数でなければならない。しかし $20^b\equiv -1\mmod{7}$ となるので
$$5^a\equiv 2021^a\equiv 20^b+20\equiv -1+20\equiv 5\mmod{7}$$
より $a\equiv 1\pmod{6}$ となって矛盾する。
$$2021^a-20^b-21^c=-20$$
のとき
$$2^a-2^b\equiv 1\mmod{3}$$
なので $a$ は奇数で $b$ は偶数でなければならない。しかし $20^b\equiv 1\mmod{7}$ となるので
$$5^a\equiv 2021^a\equiv 20^b-20\equiv 1-20\equiv 2\mmod{7}$$
より $a\equiv 4\pmod{6}$ となって矛盾する。
これらのことから、$\abs{2021^a-20^b-21^c}=\pm 20$ となる正の整数 $a, b, c$ は存在しない。
このとき
$$2^a-2^b\equiv 1\mmod{3}$$
なので $a$ は奇数で $b$ は偶数でなければならない。よって
$$5^a\equiv 2021^a\equiv 20^b+40\equiv 1+5\equiv 6\pmod{7}$$
だから $a\equiv 3\mmod{6}$ である。よって
$$2021^a\equiv 7^a\equiv 1\mmod{19}$$
となる。$20^b\equiv 1\mmod{19}$ は明らかだから
$$21^c+40\equiv 2021^a-20^b\equiv 1-1\equiv 0\mmod{19}$$
となるので
$$2^c\equiv -40\equiv -2\mmod{19}$$
より $c\equiv 10\mmod{18}$ となる。とくに $c$ は偶数なので $21^c\equiv 1\mmod{8}$ である。しかし $b\geq 2$ なので $21^c\equiv 2021^a\mmod{8}$ である。さらに $a$ は奇数なので
$$21^c\equiv 2021^a\equiv 5\mmod{8}$$
となり、矛盾する。
$b=1$ のとき
$$2021^a=21^c-20$$
だから
$$5^a\equiv 1\mmod{7}$$
より $a$ は $6$ の倍数である。よって $2021^a\equiv 1\mmod{9}$ なので
$$21^c=2021^a+20\equiv 21\equiv 3\mmod{9}$$
より $c=1$ だから $2021^a=-40+20+21=1$ つまり $a=0$ となり、 $a$ が正の整数であることに反する。
$b\geq 2$ のとき
$$2^a-2^b\equiv 2\mmod{3}$$
なので $a$ は偶数で $b$ は奇数でなければならない。
$$5^a\equiv 2021^a\equiv 20^b-40\equiv -1+2\equiv 1\mmod{7}$$
より $a$ は $6$ の倍数である。よって $2021^a\equiv 7^a\equiv 1\mmod{19}$ より
$$2^c\equiv 21^c\equiv 2021^a-20^b+40\equiv 1-1+2\equiv 2\mmod{19}$$
だから $c\equiv 1\mmod{18}$ でなければならない。とくに $c$ は奇数なので $21^c\equiv 5\mmod{8}$ である。しかし $b\geq 2$ だから、先程と同様に
$$21^c\equiv 2021^a\equiv 1\mmod{8}$$
となり、矛盾する。
結局、
$$2021^a-20^b-21^c=k, k=-40, -20, 0, 20, 40$$
はいずれも矛盾に至るから、$\abs{2021^a-20^b-21^c}$ の最小値は $60$ であることが示された。