|2021^a-20^b-21^c|の最小値を求める

797

はじめに

こんにちは. kkkaaaです. この記事では私がTwitterで2021年1月1日に投稿した自作問題を解説します. そこで私は「この問題についてはMathlogで数日後に解説を投稿する予定です。」と書いたのですが, 記事の内容をある時は増やし, 翌日にその部分をカットする, といった無駄な作業をしながら冬休みが終わり, JMOでバタバタしたり, と結局投稿が2ヶ月後になってしまいました.
私の投稿が遅すぎて, 解いてくださったtyamadaさんがこの問題についてMathlogに投稿しています.
https://mathlog.info/articles/1822

問題

$a, b, c$ を正整数とする.
$| 2021^{a} - 20^{b} - 21^{c} |$
の最小値を求めよ.

(解答をすぐに見たくない人もいると思うので少し行間をあけておきます. )

解答

$k = 2021^{a} - 20^{b} - 21^{c}$ とおく.
$(a, b, c) = (2, 2, 5)$ のとき, $| k | = 60$ である.
$| k |$ の最小値が $60$ であることを示す.
$k = | 2021^{a} - 20^{b} - 21^{c} | \equiv 0 (\mod 20)$ より, $k = 0, \pm 20, \pm 40$ のそれぞれについて, 条件をみたす正整数 $(a, b, c)$ が存在しないことを示せば十分である.
いずれの場合も条件をみたす正整数 $(a, b, c)$ が存在すると仮定する.

$k = 0$ のとき
$2021^{a} - 20^{b} - 21^{c} = 0$ である.
$2021^{a} \equiv 20^{b} (\mod 7)$ より $a$ は $3$ の倍数である.
しかし, これは $21^{c} = 2021^{a} - 20^{b}$ が $19$ の倍数になることに矛盾する.
$k = 20$ のとき
$2021^{a} - 20^{b} - 21^{c} = 20$ である.
$2021^{a} \equiv 20^{b} - 1 (\mod 3)$ より $a$ は偶数である.
しかし, これは $2021^{a} + 1 \equiv 20^{b} (\mod 7)$ に矛盾する.
$k = - 20$ のとき
$2021^{a} - 20^{b} - 21^{c} = - 20$ である.
$2021^{a} \equiv 20^{b} + 1 (\mod 3)$ より $a$ は奇数である.
しかし, これは $2021^{a} - 1 \equiv 20^{b} (\mod 7)$ に矛盾する.
$k = 40$ のとき
$2021^{a} - 20^{b} - 21^{c} = 40$ である.
$2021^{a} \equiv 20^{b} + 1 (\mod 3)$ より $a$ は奇数, $b$ は $2$ 以上である.
$2021^{a} + 2 \equiv 20^{b} (\mod 7)$ より $a$ は $3$ の倍数である.
$21^{c} \equiv - 2 (\mod 19)$ より $c \equiv 10 (\mod 18)$ .
しかし, これは $2021^{a} \equiv 21^{c} (\mod 8)$ に矛盾する.
$k = - 40$ のとき
$2021^{a} - 20^{b} - 21^{c} = - 40$ である.
$2021^{a} \equiv 20^{b} - 1 (\mod 3)$ より $a$ は偶数である.
$2021^{a} - 2 \equiv 20^{b} (\mod 7)$ より $a$ は $3$ の倍数である.
$21^{c} \equiv 2 (\mod 19)$ より $c \equiv 1 (\mod 18)$ .
よって, $2021^{a} - 21^{c} \equiv 20^{b} (\mod 8)$ より $b = 1$ .
ゆえに, $2021^{a} + 2 \equiv 21^{c} (\mod 9)$ より, $c = 1$ であるが, $2021^{a} = 1$ となるため矛盾する.

したがって $| k |$ の最小値が $60$ であることが示された. (証明終)

問題(追加)

これだけだと物足りない(？)ので, せっかくなので $| 2021^{a} - 20^{b} - 21^{c} | = 60$ となる正整数の組 $(a, b, c)$ は $(2, 2, 5)$ 以外に存在するかについても考えてみます.

次の条件をみたす正整数の組 $(a, b, c)$ を求めよ.
$| 2021^{a} - 20^{b} - 21^{c} | = 60$

(解答をすぐに見たくない人もいると思うので少し行間をあけておきます. )

解答(追加)

$2021^{a} - 20^{b} - 21^{c} = 60$ のとき

$2021^{a} + 3 \equiv 20^{b} (\mod 21)$ より, $a \equiv 5 (\mod 6)$ かつ $b$ は奇数である.
$21^{c} \equiv 2021^{a} - 4 \equiv 7 (\mod 19)$ であるため, $c \equiv 6 (\mod 18)$ .
$c$ が $2$ 以上であるため, $20^{b} \equiv 5 (\mod 9)$ より $b \equiv 5 (\mod 6)$ .
$2021^{a} - 20^{b} - 21^{c} \equiv 8 (\mod 13)$ より, $a \equiv 11 (\mod 12)$ , $c \equiv 2 (\mod 4)$ .
しかし, これは $2021^{a} - 21^{c} \equiv 12 (\mod 16)$ に矛盾する.

$2021^{a} - 20^{b} - 21^{c} = - 60$ のとき

$2021^{a} - 3 \equiv 20^{b} (\mod 21)$ より, $a \equiv 2 (\mod 6)$ かつ $b$ は偶数である.
$21^{c} \equiv 13 (\mod 19)$ であるため, $c \equiv 5 (\mod 18)$ .
$20^{b} \equiv 4 (\mod 9)$ であるため, $b \equiv 2 (\mod 6)$ .
$2021^{a} - 20^{b} - 21^{c} \equiv 5 (\mod 13)$ より, $a \equiv b (\mod 12)$ , $c \equiv 1 (\mod 4)$ .
$b$ が $2$ 以上であるため, $2021^{a} - 21^{c} \equiv 4 (\mod 16)$ より, $a \equiv 2 (\mod 4)$ .
$2021^{a} - 20^{b} \equiv - 5 (\mod 17)$ より, $a \equiv 2 (\mod 8)$ かつ $b \equiv 2 (\mod 16)$ .
ここで $2 < b$ と仮定する.
$21^{c} \equiv 21 (\mod 32)$ より, $c \equiv 1 (\mod 8)$ .
ここまでの議論より, $a \equiv 2 (\mod 24)$ , $b \equiv 2 (\mod 48)$ , $c \equiv 17 (\mod 24)$ である.
Fermatの小定理より $2021^{24} \equiv (- 16)^{24} \equiv 2^{96} \equiv 1 (\mod 97)$ より, $2021^{a} \equiv 62 (\mod 97)$ .
Fermatの小定理より $20^{96} \equiv 1 (\mod 97)$ であるため, $20^{48} \equiv \pm 1 (\mod 97)$ より, $20^{b} \equiv \pm 12 (\mod 97)$ .
(実際には $20^{48} \equiv - 1 (\mod 97)$ . )
$21^{24} \equiv 22 (\mod 97)$ より, $21^{c} \equiv \pm 29, \pm 41 (\mod 97)$ .
しかし, これらは $2021^{a} - 20^{b} - 21^{c} \equiv - 60 (\mod 97)$ に矛盾.
ゆえに $b = 2$ であり, $2021^{a} - 21^{c} = 340 = 2021^{2} - 21^{5}$ .
$mod 243$ での $2021$ の位数, すなわち $2021^{d} \equiv 1 (\mod 243)$ となる最小の正整数 $d$ を考える. 明らかに $d$ は偶数である必要がある.
LTEの補題より $v_{3} (2021^{d} - 1) = v_{3} ((2021^{2})^{\frac{d}{2}} - 1) = v_{3} (2021^{2} - 1) + v_{3} (\frac{d}{2})$ より, $d = 162$ .
( $v_{3} (n)$ は $n$ が $3$ で割り切れる回数を表す. )
$2021^{a} \equiv 2021^{2} (\mod 243)$ で, $a \equiv 2 (\mod 162)$ .
Fermatの小定理より $2021^{a} \equiv 2021^{2} (\mod 163)$ .
よって $21^{c} \equiv 21^{5} (\mod 163)$ .
$mod 163$ での $21$ の位数は $27$ であるため, $c \equiv 5 (\mod 27)$ である. ( $162$ の約数のみを調べればよい. )
$a \equiv 2 (\mod 162)$ , $c \equiv 5 (\mod 54)$ より, (頑張って計算すると)
$2021^{a} \equiv 459, 322, 193 (\mod 487)$
$21^{c} \equiv 119, 369, 338, 336, 383, 9, 32, 222, 140 (\mod 487)$
よって, $a \equiv 2 (\mod 486)$ , $c \equiv 5 (\mod 486)$ .
Eulerの定理より $2021^{486} \equiv 1 (\mod 729)$ .
よって $21^{c} \equiv 21^{5} (\mod 729)$ であるため $c = 5$ となり, $a = 2$ が決定される.