前提知識 : 原始 Pythagoras 数の一般形.
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問. 正の整数の対$(a,b)$に関する以下の条件を考えます.
条件一 $a$は奇数である.
条件二 $a$と$b$は互いに素である.
条件三 $a^2+b^2$と$a^2+(2b)^2$は何れも平方数である.
このとき,
$(1)$ 上記三つの条件を充たす正の整数の対$(a,b)$は存在しないことを証明してください.
$(2)$ 条件三を充たす正の整数の対$(a,b)$は存在しないことを証明してください.
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次の定理を用いる.
方程式
$$
\begin{align}
\left(
\begin{array}{l}
x^2+y^2=z^2\\
\gcd(x,y,z)=1
\end{array}
\right.
\end{align}
$$の正整数解は,
$$
\begin{align}
(x,y,z)=(m^2-n^2,2mn,m^2+n^2)\ \mathrm{aut}\ (2mn,m^2-n^2,m^2+n^2)\\
(m>n>0,\ \gcd(m,n)=1\ \mathrm{et}\ m\not\equiv n\ \ (\mathrm{mod}.2))
\end{align}
$$と表示することができる.
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上記三つの条件を充たすような正の整数の対$(a,b)$が存在することを仮定して, それをそのまま$(a,b)$と書く. $a$と$b$が互いに素であることに着目する. $a$は奇数であるから, ここに定理を適用すれば
$$
\begin{align}
\left(
\begin{array}{l}
a=u^2-v^2\\
b=2uv\\
a=x^2-y^2\\
2b=2xy\\
u>v>0\ \mathrm{et}\ x>y>0\\
\gcd(u,v)=\gcd(x,y)=1\\
u\not\equiv v\ \mathrm{et}\ x\not\equiv y\ \ (\mathrm{mod}.2)
\end{array}
\right.
\end{align}
$$の全てを充たす整数の組$(u,v,x,y)$の存在が判る. これより, $b$についての二つの式を合わせて得られる関係式
$$
\begin{align}
(*)\quad2uv=xy
\end{align}
$$を整除の視点から観るのであるが, そのためには, $x$と$y$の偶奇で場合を分けておくべきである.
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このとき$x/2$は整数であるため, $(*)$の式を$uv=(x/2)y$と変形して,
$$
\begin{align}
\left(
\begin{array}{l}
uv=(x/2)y=pqrs\\
u=pq\\
v=rs\\
x/2=pr\\
y=qs\\
\gcd(p,q)=\gcd(p,r)=\gcd(p,s)=\gcd(q,r)=\gcd(q,s)=\gcd(r,s)=1
\end{array}
\right.
\end{align}
$$と分解することができる. これらを, $a$についての二つの式を合わせて得られる等式$u^2-v^2=x^2-y^2$に代入すると
$$
\begin{align}
q^2(p^2+s^2)=r^2(4p^2+s^2)
\end{align}
$$となるので, この等式において整除関係を考える. $q^2$と$r^2$は互いに素であり, かつ
$$
\begin{align}
\gcd(p^2+s^2,4p^2+s^2)&=\gcd(p^2+s^2,3p^2)\\
&=\gcd(p^2+s^2,p^2)\\
&=\gcd(s^2,p^2)=1
\end{align}
$$がなりたつため, 結果
$$
\begin{align}
&q^2(p^2+s^2)=r^2(4p^2+s^2)\\
\Longleftrightarrow\;&q^2=4p^2+s^2\ \mathrm{et}\ p^2+s^2=r^2
\end{align}
$$と進めることができる. 故に$(s,p)$もまた条件三を充たす正の整数の対であることが判った. 加えて, $y$が奇数であるという仮定と分解の式$y=qs$から$s$は奇数であり, これらは互いに素であるため, この対は三つの条件の全てを充たす. 加えて, $p$の値を$b$と比べれば
$$
\begin{align}
p\leqslant pr=x/2< xy=b
\end{align}
$$と小さくなっている点にも留意しておく.
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以降, 先程と似たような文句か続きます. 方針は殆ど同じですので, 少し先まで飛ばしてもらっても理解する分には障りなかろうと思います.
このとき$y/2$は整数であるため, $(*)$の式を$uv=x(y/2)$と変形して,
$$
\begin{align}
\left(
\begin{array}{l}
uv=x(y/2)=p'q'r's'\\
u=p'q'\\
v=r's'\\
x=p'r'\\
y/2=q's'\\
\gcd(p',q')=\gcd(p',r')=\gcd(p',s')=\gcd(q',r')=\gcd(q',s')=\gcd(r',s')=1
\end{array}
\right.
\end{align}
$$と分解することができる. これらを, $a$についての二つの式を合わせて得られる等式$u^2-v^2=x^2-y^2$に代入すると
$$
\begin{align}
q'^2(p'^2+4s'^2)=r'^2(p'^2+s'^2)
\end{align}
$$となるので, この等式において整除関係を考える. $q'^2$と$r'^2$は互いに素であり, かつ
$$
\begin{align}
\gcd(p'^2+4s'^2,p'^2+s'^2)&=\gcd(3s'^2,p'^2+s'^2)\\
&=\gcd(s'^2,p'^2+s'^2)\\
&=\gcd(s'^2,p'^2)=1
\end{align}
$$がなりたつため, 結果
$$
\begin{align}
&q'^2(p'^2+4s'^2)=r'^2(p'^2+s'^2)\\
\Longleftrightarrow\;&q'^2=p'^2+s'^2\ \mathrm{et}\ p'^2+4s'^2=r'^2
\end{align}
$$と進めることができる. 故に$(p',s')$もまた条件三を充たす正の整数の対であることが判った. 加えて, $x$が奇数であるという仮定と分解の式$x=p'r'$から$p'$は奇数であり, これらは互いに素であるため, この対は三つの条件の全てを充たす. 加えて, $s'$の値を$b$と比べれば
$$
\begin{align}
s'\leqslant q's'=y\leqslant y^2< xy=b
\end{align}
$$と小さくなっている点にも留意しておく.
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何れの場合においても, 三つの条件の解$(a,b)$から第二の成分のより小さな解$(a',b')$を構成することができた. ところがこのような構成が
$$
\begin{align}
(a,b)\longmapsto(a',b')\longmapsto\cdots
\end{align}
$$と無限に繰りかえせるということは, 三つの条件を充たす正の整数の対であって, 第二の成分が幾ら小さなものでも存在しうるということである. これは正の整数の集合の性質に反するものであり, 初めの$(a,b)$の存在仮定は偽であったと判る. $\quad\Box$
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条件三を充たす正の整数の対$(a,b)$の存在を仮定して矛盾を示す.
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対$(a,b)$が三つの条件全てに従うことになり, $(1)$での結果に矛盾する.
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この場合, $4(a/2)^2+b^2$と$(a/2)^2+b^2$は共に平方数であり, 対$(b,a/2)$が三つの条件全てに従うことになって, $(1)$での結果に矛盾する.
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$d=\gcd(a,b)$と書くと, 対$(a/d,b/d)$が条件二と条件三に従うことになり, $(1),\ $$(2)(\mathrm{I}),\ $$(2)(\mathrm{II})$での結果に矛盾する.
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何れの場合にも矛盾が有ることが判ったため, 証明は完了した. $\quad\Box$
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