Fourier逆変換公式の証明を探していたらA. Robertによる論文(
https://www.semanticscholar.org/paper/A-short-proof-of-the-Fourier-inversion-formula-Robert/10cca45e9e51369c9c240183cfebc04aedf897ba
) を見つけたので, それについて解説したいと思います. 急減少関数$f$のFourier変換は以下のように定義されます.
$$\begin{eqnarray*}
\widehat{f}(y):=\int_{-\infty}^{\infty}f(x)e^{-2\pi ixy}\,dx
\end{eqnarray*}$$
Fourier逆変換公式は, $f(x)=\widehat{\widehat{f}}(-x)$と表せます. Fourier変換の定義からわかる性質, $\widehat{\widehat{f(x+a)}}=\widehat{\widehat{f}}(x-a)$より, $f(0)=\widehat{\widehat{f}}(0)$を示せば十分です.
$$\begin{eqnarray*}
F(x):=\sum_{n\in\mathbb{Z}}f(x+n)
\end{eqnarray*}$$
とすると, これは周期$1$の連続関数なので, Fourier級数展開できて, その係数は
$$\begin{eqnarray*}
c_n&=&\int_0^1F(x)e^{-2\pi inx}\,dx\\
&=&\sum_{m\in\mathbb{Z}}\int_0^1f(x+m)e^{-2\pi i n(x+m)}\,dx\\
&=&\int_{-\infty}^{\infty}f(x)e^{-2\pi inx}\,dx\\
&=&\widehat{f}(n)
\end{eqnarray*}$$
であることより,
$$\begin{eqnarray*}
\sum_{n\in\mathbb{Z}}f(x+n)=\sum_{n\in\mathbb{Z}}\widehat{f}(n)e^{2\pi inx}
\end{eqnarray*}$$
が分かります. ここで, $x=0$として,
$$\begin{eqnarray*}
\sum_{n\in\mathbb{Z}}f(n)=\sum_{n\in\mathbb{Z}}\widehat{f}(n)
\end{eqnarray*}$$
が得られます. (これをPoisson和公式といいます.) これを2回用いて,
$$\begin{eqnarray*}
\sum_{n\in\mathbb{Z}}f(n)=\sum_{n\in\mathbb{Z}}\widehat{\widehat{f}}(n)
\end{eqnarray*}$$
が得られます. ここで$f(x)$を$e^{2\pi iax}f(x)$に置き換えることにより,
$$\begin{eqnarray*}
\sum_{n\in\mathbb{Z}}f(n)e^{2\pi ian}=\sum_{n\in\mathbb{Z}}\widehat{\widehat{f}}(n)e^{-2\pi ian}=\sum_{n\in\mathbb{Z}}\widehat{\widehat{f}}(-n)e^{2\pi ian}
\end{eqnarray*}$$
を得ます. これは$a$についてのFourier級数になっているので, そのFourier係数を比較して, $f(n)=\widehat{\widehat{f}}(-n)$を得ます. $n=0$として, $f(0)=\widehat{\widehat{f}}(0)$を得るので証明が完了しました.