次の問題の略解を示しておきます。
「$A$を$n$次正値実対称行列とするとき
$\displaystyle\int_{\mathbf{R}^n} \exp(-(x,Ax))dx $
を求めよ。ただし(・,・)は${\mathbf{R}^n}$の標準内積である。」
【略解】$A$は実対称行列なので適当な直交行列$P$で対角化することができ、その固有値$\lambda_1,\lambda_2,・・・,\lambda_n $は実数である。さらに正値であることから固有値$\lambda_1,\lambda_2,・・・,\lambda_n$はすべて正である。
$PA{^t\!P}=\mathrm{diag}(\lambda_1,\lambda_2,・・・,\lambda_n)=\Lambda$とすると
$\exp(-(x,Ax))=\exp(-(x,{^t\!P}\Lambda Px))=\exp(-(Px,\Lambda Px))$
となるので $y=Px$と変数変換すると
$P$が定める$\mathbf{R}^n$の線形変換は同型写像であり、$\det(P)=±1$であることから$dy=dx$である。
このことから問題の積分は
$\displaystyle\int_{\mathbf{R}^n} \exp(-(y,\Lambda y))dy$
と書き換えられる。
ここで
$\displaystyle(y,\Lambda y)=\sum_{i=1}^{n}\lambda_i {{y_i}^2}$より
$\displaystyle\exp(-(y,\Lambda y))=\prod_{i=1}^{n}\exp(-\lambda_i {{y_i}^2}) $となるので
$\displaystyle\int_{\mathbf{R}^n} \exp(-(y,\Lambda y))dy= \int_{\mathbf{R}^n} \prod_{i=1}^{n}\exp(-\lambda_i {{y_i}^2}) dy= \prod_{i=1}^{n}\int_{-\infty}^{\infty}\exp(-\lambda_i {{y_i}^2}) dy_i$
ここで$\lambda>0$に対して
$\displaystyle \int_{-\infty}^{\infty}\exp(-\lambda y{^2}) dy=\sqrt{\frac{\pi}{\lambda}}$
であることと$\lambda_1\lambda_2・・・\lambda_n=\det(A)$に注意すれば、求める積分値は
$\displaystyle\frac{{\pi^{n/2}}}{\sqrt{\det(A)}}$となる。