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大学数学基礎解説
文献あり

Noether正規化

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$$\newcommand{A}[0]{\mathbb{A}} \newcommand{dto}[0]{\dashrightarrow} \newcommand{OX}[0]{\mathcal{O}_X} \newcommand{OY}[0]{\mathcal{O}_Y} \newcommand{P}[0]{\mathbb{P}} $$

Noetherの正規化定理に関するメモです。
私の勝手な感想ですが、Noetherの正規化定理の証明ってテクニカルで難しいと思うんですよね。
この記事は、そういうテクニカルさを排除したくていろいろ考えてたんですよ〜 (できたかどうかは別にして) っていう記事です。

Mathlogの使い方がわかっていなくて、系のラベリングが間抜けですが、許してください。

準備1

Hilbertの零点定理はNoetherの正規化定理を用いることなく証明できる。
また、以下の定理はNoetherの正規化定理を用いることなく証明できる (説明は省略する):

(I) 形式関数定理はNoetherの正規化定理を用いることなく証明できる。
 (II) 射影的射による連接層の順像が連接層であることはNoetherの正規化定理を用いることなく証明できる。

(I)より、$f:X\to Y$がネータースキームの間の射影的射で$\OY\to f_*\OX$が同型射であるときに$f$の各fiberが連結であることはNoetherの正規化定理を用いることなく証明できる。
これと(II)より、Stein分解をとることによって、$f:X\to Y$の各点のfiberが$0$次元であれば$f$が有限射となることは、Noetherの正規化定理を用いることなく証明できる。

(III) ネータースキームの間の射影的射の各fiberが$0$次元であれば有限射となることは、Noetherの正規化定理を用いることなく証明できる。

準備2

$k$を体、$\P^n$$n$-次元射影空間とする。
$H\subset \P^n$を超平面 (すなわち、一次斉次式の零点集合となるもの) とし、$C\subset \P^n$を閉部分スキームとする。$C\cap H=\emptyset$であると仮定する。
$\P^n\setminus H\cong \A^n$であるため、この同型によって、閉埋め込み$C\subset \A^n$を得る。よって$C$はアフィンである。
一方、$C$$\P^n$の閉部分集合でもあるので、射影的でもある。
従って、$\mathcal{O}_C$の大域切断は有限次元$k$-線形空間であり (準備1 (I)参照)、$C$$0$-次元のスキームとなる。
とくに、

(IV) 射影空間$\P^n$の中の超平面が$1$以上の次元を持つ閉部分スキームと必ず交わることは、Noetherの正規化定理を用いることなく証明できる。

射影空間の中の平面の交差

この節では、$k$無限体$V$$(n+1)$-次元$k$-線形空間、$\P(V)=\mathrm{Proj}(\mathrm{Sym}(V))$を対応する射影空間とする。
また、双対線形空間を$^{\vee}$で表す。

全射$p:V\to W$が与えられているときに、全射$\mathrm{Sym}(V)\to \mathrm{Sym}(W)$が閉埋め込み$\P(W)\subset \P(V)$を引き起こす。
$\P(W)$$\P(V)$内で$\ker(p)$に属する一次斉次式の共通零点として表される線形部分多様体である。
この記事では、簡単のため、このような$\P(W)$$\P(V)$平面と呼ぶこととする。

この節では、平面に関するいくつかの命題を証明する。

$x_1,...,x_N\in \P(V)$を閉点とする。
このとき、$x_1,...,x_N$を通らない超平面が無限に存在する。

双対射影空間$\P(V^{\vee})$の中で、$x_i$を通る超平面のなす集合は閉部分集合となる。補題1はこれから直ちに従う($k$は無限体であることに注意)。

A

$X\subset \P(V)$$r$-次元閉部分スキームとする。
超平面$H\subset \P(V)$であって、$H\cap X$の次元が$(r-1)$以下となるものが無限に存在する。

$X$の各既約成分から一つずつ閉点をとってきて、それらを通らない$H$をとれば、それは所望の超平面である。

B

$X\subset \P(V)$$r$-次元閉部分スキームとする。
$(n-r-1)$-次元の平面$H\subset \P(V)$であって、$X\cap H=\emptyset$となるものが存在する。

$\P(V)$として$H$を考え、$X$として$X\cap H$を考えて、系Aを繰り返し適用することにより、系Bが従う。

射影

$k$を体、$V$$(n+1)$-次元$k$-線形空間、$p:V\to W$を全射とする。$\dim_kW > 0$とする。
全射$p$は閉埋め込み
$$\P(W)\subset \P(V)$$
を引き起こし、$\P(V)\setminus \P(W)$上で定義された有理写像
$$\P(V) \dto \P(\ker(p))$$
を得る。

射影

この有理写像を、$\P(W)$を中心とする射影という。

$k$を無限体、$V$$(n+1)$-次元$k$-線形空間、$X\subset \P(V)$$r$-次元閉部分スキームとする。
系Bより、$(n-r-1)$-次元平面$H\subset \P(V)$であって、$X\cap H = \emptyset$となるものが存在する。
$H$は平面であるので、ある$(n-r)$-次元$k$-線形空間への全射$V\to W$が存在して、$\P(V)$の閉部分スキームとして$\P(W)\cong H$となる。
$K=\ker(V\to W)$とおけば、$\dim_k(K) = r+1$である。
また、$X\cap \P(W) = \emptyset$であるため、$\P(W)$を中心とする射影と閉埋め込み$X\subset \P(V)$の合成は射
$$f:X\to \P(K)$$
を与える。

$f$は有限射である。

準備1 (III)より、補題2を示すためには、$f$のfiberの次元が$0$であることを示すことが十分である。
従って、とくに、補題2を示すためには、基礎体$k$は代数閉であると仮定しても一般性を失わない。

曲線$C\subset X$$f$により一点$x\in \P(K)$へと写されると仮定する。
$x\in \P(K)$は全射$k$-線形空間の$K\to k$と対応し、$K\subset V$に沿ったpush-outをとることによって、$(n-r+1)$-次元$k$-線形空間$W'$への全射$V\to W'$を引き起こす。
よって平面の包含
$$\P(W)\subset \P(W')\subset \P(V)$$
を得る。
$C\subset X \subset \P(V)$$f$によって一点$x$へと写されるので、$C\subset \P(W')$である。
また、$\P(W)$$\P(W')$の超平面であるため、準備2 (IV)より、$C\cap \P(W)\neq \emptyset$である。一方、
$$C\cap \P(W)\subset X\cap \P(W) = \emptyset$$
であるため、これは矛盾である。
以上で補題2の証明を完了する。

Noether正規化

$k$を無限体、$A$を有限型$k$-代数とする。
$X_0=\mathrm{Spec}(A)$とおく。
位相空間としての$X_0$の次元を$r$とおく。
閉埋め込み$X_0\subset \A^n$を一つ選ぶ。
座標関数を$x_1,...,x_n$とする。
開埋め込み$\A^n\subset \P^n$をとって、$X_0$の閉包を$X$とする。
このとき、$X$のどの既約成分も無限遠超平面$(x_0=0)$に含まれることはないため、$X\cap (x_0=0)$$(r-1)$-次元であり、$X$$\P^n$$r$-次元閉部分スキームである。
$(x_0=0)$$X\cap (x_0=0)$に対して系Bを用いることで、無限遠超平面の中の$(n-r-1)$-次元平面$H\subset (x_0=0)$が存在して、
$$H\cap X = \emptyset$$
が成り立つ。
$\P(V)$の平面としての$H\subset \P(V)$は、$(n-r)$-次元$k$-線形空間$W$への全射
$$p:V=H^0(\P^n,\mathcal{O}_{\P^n}(1))\to W$$
と対応し、$H\subset (x_0=0)$であることは、$p(x_0)=0$を意味する。
$V'\subset V$を座標関数$x_1,...,x_n$によって生成される部分線形空間とする ($x_0$以外のところ)。

$K=\ker(p)$とおく。
$p(x_0)=0$であるので、$x_0\in K$である。
従って、$K = kx_0 + K\cap V'$が成り立つ。
$K\cap V'$の部分は$x_1,...,x_n$の一次斉次式を基底とする$r$-次元$k$-線形空間である。
補題2より、$H$を中心とする射影
$$X\to \P(K)$$
は有限射である。
$\P(K)$の中で$(x_0=0)$の補集合はちょうど$\mathrm{Spec}(k[K\cap V'])$であるため、よって、これを$(x_0=0)$の外へと制限することによって、有限射
$$X_0 \to \mathrm{Spec}(k[K\cap V'])$$
を得る。
$K\cap V'$の基底の$A$での行き先をそれぞれ$a_1,...,a_r$とすれば、$a_1,...,a_r$$k$上代数的に独立であり、さらに射
$$k[a_1,...,a_r] \subset A$$
は有限射となる。◻︎

参考文献

投稿日:202135

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