京大の望月新一先生が証明した「ABC予想」ですが,その楕円曲線論における応用例として【Szpiro予想】がありますので,その証明も含めて紹介します。
また記事の後半では,【Szpiro予想】を用いてフェルマーの最終定理を眺めてみます。
既に色々な媒体で様々な方が紹介しているABC予想ですので,主張だけおさらいしておきます。
各正の実数
を満たす
を満たすように
多くの記事では煩雑を避けるために
また,
「強いABC予想」がフェルマーの最終定理の部分的な系になっていることは有名で,例えばMathlogには ABC予想IIを用いたフェルマー予想の証明(n≧6) にて簡潔な紹介がなされています。
しかしこの記事では,いわゆる「弱いABC予想」のみを扱っており,望月先生が証明したのは「弱いABC予想」の方です。
以下,有理数体
各正の実数
が成り立つ。ここで
ABC予想を用いてSzpiro予想を証明してみます。
なる関係式があった。
◉まずは
とする。このとき
を満たす。
と書き表せる。ここで
であることが明らかに分かる。すなわち以下の3つの不等式が立つ。
少し変形して,
と書き表せる。①の両辺を
となる。
を得るから,Szpiro予想が正しいことが分かった。
◉
【Szpiro予想】からフェルマーの最終定理を眺めることが出来ます。
正の整数
「十分大きい」ってなんだよ!どのくらいだよ!と突っ込まれるかもしれませんが,それは
正の整数
楕円曲線
とおく。この
なる不等式がある。今回の場合を考えると,
である。
一方,導手
が言え,
楕円曲線論における【Szpiro予想】が,ABC予想の系として成り立つことが分かりました。ちなみに【Szpiro予想】が真である場合,ABC予想において
[1]はABC予想を証明するために用いた「IUT理論」の概略を一般向けに解説したもので,直観的な説明が多く読みやすい物と思います。タイトルだけ見ると少しアレな本に思われるかもしれませんが 非常に良書です。高校1年生レベルの数学を知っていれば読み切ることが可能な本で,手に取る価値は大いにあります。
[2],[3]はSzpiro予想の証明を参考にしたものです。[2]は楕円曲線の教科書,[3]は望月先生の,「宇宙際Teichmuller理論」の6番の論文です。