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大学数学基礎解説
文献あり

n進法レピュニット11...1(n)の素因数とpk+1型の素数の無限性について

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概要

ガロア理論の勉強をしていたら、次の定理を思いついたので、紹介します。

$p$を素数とする。任意の自然数$n$について、$n$$p$で割ったあまりが$1$でないなら、
$$ n^{p-1}+n^{p-2}+\cdots +1 $$
の素因数はすべて、$p$で割ったあまりが$1$である。

証明の概略は、$q$を素数、$\zeta_q=e^{\frac{2\pi\sqrt{-1}}{q}}$とおき、集合
$$ S=\{\zeta_q^{i_1}+\cdots +\zeta_q^{i_p},\cdots ,\zeta_q^{(q-1)i_1}+\cdots +\zeta_q^{(q-1)i_p}\} $$
の元の個数$|S|$を考えると、$q$$n^{p-1}+n^{p-2}+\cdots +1$を割り切るとき、$|S|=(q-1)/p$となることを示します。

さらに、この系として、$pk+1$型の素数が無限に存在することを示します。

証明

$p=3$の場合

例として、$p=3$の場合で考えましょう。次の節で記すように、一般の$p$でも同様に示せます。

唐突ですが、$q$を素数、$\zeta_q=e^{\frac{2\pi\sqrt{-1}}{q}}$とおき、集合
$$ S=\{\zeta_q^{i}+\zeta_q^{j}+\zeta_q^{k},\zeta_q^{2i}+\zeta_q^{2j}+\zeta_q^{2k},\cdots ,\zeta_q^{(q-1)i}+\zeta_q^{(q-1)j}+\zeta_q^{(q-1)k}\} $$
を考えます。$i,j,k\in\{1,2,\cdots ,q-1\}$で、すべて異なるとします。なので、$3< q$です。$p=3$だから$3$つ足しています。この大きさ$|S|$を考えることで、定理1が示されるのです。$|S|$を考えるには、重複を調べればよいです。したがって、
$$ \zeta_q^{si}+\zeta_q^{sj}+\zeta_q^{sk}=\zeta_q^{ti}+\zeta_q^{tj}+\zeta_q^{tk} $$
なる$s≠t\in\{1,2,\cdots ,q-1\}$の条件を考えることが目先の目標になります。$\zeta_q^{si}= \zeta_q^{ti}$$\zeta_q^{sj}= \zeta_q^{tj}$$\zeta_q^{sk}= \zeta_q^{tk}$は成り立たないので、上式が成り立つのは、次の2つの場合のいずれかです。

$$ \begin{eqnarray} \left\{ \begin{array}{l} si\equiv tj\\ sj\equiv tk\\ sk\equiv ti \end{array} \right. ...(1) \ or \ \left\{ \begin{array}{l} si\equiv tk\\ sj\equiv ti\\ sk\equiv tj \end{array} \right. ...(2) \end{eqnarray} \mod q $$
どちらの場合も、辺々をかけて、
$$ s^3ijk\equiv t^3ijk\\ \therefore s^3\equiv t^3\ \therefore (st^{-1})^3\equiv 1 $$
となります。いま、$s\not \equiv t$つまり$st^{-1}\not \equiv 1$としているので、$x^3-1=0$$\mathbb{F}_q$に、$1$以外の根をもつことが必要になります。$x^3-1=(x-1)(x^2+x+1)$より、$x^2+x+1$$\mathbb{F}_q$において根を持つかどうかが鍵となります。根を持たなければ、$(1),(2)$式が成立することはないので、$S$に重複はなく、$|S|=q-1$となります。
根を持つとき、その一つを$\omega$とおくと、もう一つは$\omega^2$です。(この$\omega$$\left(-1+\sqrt{-3}\right)/2$とは関係ありません。$\omega^2+\omega+1\equiv 0$となるような整数のことです。)$st^{-1}\equiv \omega$すなわち$s\equiv \omega t$のとき、$(1),(2)$式は、
$$ \begin{eqnarray} \left\{ \begin{array}{l} \omega i\equiv j\\ \omega j\equiv k\\ \omega k\equiv i \end{array} \right. \ or \ \left\{ \begin{array}{l} \omega i\equiv k\\ \omega j\equiv i\\ \omega k\equiv j \end{array} \right. \end{eqnarray} \mod q \Leftrightarrow i\equiv \omega^2 j\equiv \omega k\ or \ i\equiv \omega j \equiv \omega^2 k \mod q $$
であり、$st^{-1}\equiv \omega^2$すなわち$s\equiv \omega^2 t$のとき、$(1),(2)$式は、
$$ \begin{eqnarray} \left\{ \begin{array}{l} \omega^2 i\equiv j\\ \omega^2 j\equiv k\\ \omega^2 k\equiv i \end{array} \right. \ or \ \left\{ \begin{array}{l} \omega^2 i\equiv k\\ \omega^2 j\equiv i\\ \omega^2 k\equiv j \end{array} \right. \end{eqnarray} \mod q \Leftrightarrow i\equiv \omega j\equiv \omega^2 k\ or \ i\equiv \omega^2 j \equiv \omega k \mod q $$
となります。つまり、$i\equiv \omega j\equiv \omega^2 k$のときは、
$$ \zeta_q^{si}+\zeta_q^{sj}+\zeta_q^{sk}=\zeta_q^{\omega si}+\zeta_q^{\omega sj}+\zeta_q^{\omega sk}=\zeta_q^{\omega^2 si}+\zeta_q^{\omega^2 sj}+\zeta_q^{\omega^2 sk} $$
と、$S$$3$つの元が等しくなり、また等しいのはこのような$3$つ組以外にありません。$i\equiv \omega^2 j\equiv \omega k$の場合も同様です。よって、$i\equiv \omega j\equiv \omega^2 k$または$i\equiv \omega^2 j\equiv \omega k$のとき、$|S|=(q-1)/3$となります。これは整数ですから、$q\equiv 1\mod 3$です。すなわち、$x^2+x+1$$\mathbb{F}_q$に根を持つならば、$q\equiv 1\mod 3$であることが分かりました。(ただし、$3< q$です。)そして、これは、任意の自然数$n$に対して、$n^2+n+1$$3$より大きい素因数は$3$で割ったあまりが$1$ということであり、$n\not \equiv 1\mod 3$という条件で、$n^2+n+1$$3$以下の素因数を持つことを排除しているので、定理1(の$p=3$の場合)が示せたことになります。

一般の$p$の場合

$p=3$のときと全く同じなので、概略だけ書きます。集合
$$ S=\{\zeta_q^{i_1}+\cdots +\zeta_q^{i_p},\cdots ,\zeta_q^{(q-1)i_1}+\cdots +\zeta_q^{(q-1)i_p}\} $$
の元の個数$|S|$を考えます。$p< q$です。
$$ \zeta_q^{si_1}+\cdots +\zeta_q^{si_p}=\zeta_q^{ti_1}+\cdots +\zeta_q^{ti_p} $$
となる条件を考えることにより、$x^{p-1}+x^{p-2}+\cdots +1$$\mathbb{F}_q$に根を持つとき、その一つを$z_p$とおくと、例えば$i_1\equiv z_pi_2\equiv \cdots \equiv z_p^{p-1}i_p$のとき、
$$ \zeta_q^{si_1}+\cdots +\zeta_q^{si_p}=\zeta_q^{z_psi_1}+\cdots +\zeta_q^{z_psi_p}=\cdots =\zeta_q^{z_p^{p-1}si_1}+\cdots +\zeta_q^{z_p^{p-1}si_p} $$
と、$S$$p$個の元が等しくなります。したがって、$|S|=(q-1)/p$となります。すなわち、$x^{p-1}+x^{p-2}+\cdots +1$$\mathbb{F}_q$に根を持つならば、$q\equiv 1\mod p$であることが分かります。(ただし、$p< q$です。)これは、$n^{p-1}+\cdots +1$$p$より大きい素因数は$p$で割ったあまりが$1$であるということです。そして定理1の条件「$n$$p$で割ったあまりが$1$でない」によって、$n^{p-1}+\cdots +1$$p$以下の素因数を持たないことが、以下のように示されます。
$n^{p-1}+\cdots +1$$p$以下の素因数$r$を持つと仮定します。$n\equiv 1\mod r$なら、$n^{p-1}+\cdots +1\equiv p\not\equiv 0\mod r$より矛盾なので、$n\not \equiv 1\mod r$です。$(n-1)(n^{p-1}+\cdots +1)=n^p-1$より、仮定は$n^p-1\equiv 0\mod r$と同値です。$n$$r$と互いに素なので、$n^k\equiv 1\mod r$なる$k\in \{1,\cdots,r-1\}$がただ一つ存在し、$p$$k$の倍数となります。$p$は素数、$k< p$より、$k=1$となりますが、$n\not \equiv 1\mod r$より矛盾です。
以上により、定理1が示されました。

ちなみに、$n^{p-1}+\cdots +1$$n$進法で$11\cdots 1_{(n)}$($p$桁)と表せますから、定理1は、$11\cdots 1_{(n)}$の素因数に関する定理と言えます。タイトルはそういう意味です。

(追記)
上の、「$x^{p-1}+x^{p-2}+\cdots +1$$\mathbb{F}_q$に根を持つならば、$q\equiv 1\mod p$である」の証明は、群の知識があれば、次のようにする方が、見通しがよかったです: $x^p-1$$\mathbb{F}_q$$1$以外の根を持つということなので、$\mathbb{F}_q^{\times}$が位数$p$の元を持ちます。したがって、$p|q-1$です。

具体例

$n=10,p=5,7,11,13$で確かめてみましょう。

$$ 11111=41×271 $$
ともに$5$で割って$1$あまります。

  • $$ 1111111=239×4649 $$
    ともに$7$で割って$1$あまります。
  • $$ 11111111111=21649×513239 $$
    ともに$11$で割って$1$あまります。
  • $$ 1111111111111=53×79×265371653 $$
    すべて$13$で割って$1$あまります。

美しいですね。

$pk+1$型の素数の無限性

定理1を用いると、(少し工夫を要しますが、)任意の素数$p$に対して、$pk+1$型の素数が無限に存在することが示せます。

任意の素数$p$に対して、$pk+1$型の素数は無限に存在する。

定理1より、$n\not\equiv 1\mod p$のとき、$f(n)=n^{p-1}+n^{p-2}+\cdots +1$の素因数はすべて、$pk+1$型である。$n_1=2$は定理1の条件を満たすので、$f(n_1)$の素因数はすべて$pk+1$型である。次に、$n_2=2f(n_1)$とすると、$f(n_1)\equiv 1\mod p$より、$n_2$も定理1の条件を満たすから、$f(n_2)$の素因数は$pk+1$型である。さらに、$f(n_2)=f(2f(n_1))\equiv 1\mod f(n_1)$だから、$f(n_2)$の素因数は$f(n_1)$の素因数と重複しない。同様にして、$n_{i+1}=2f(n_i)$とすると、$f(n_{i+1})$の素因数は$pk+1$型であり、$f(n_1),\cdots ,f(n_i)$の素因数と重複しない。したがって、$pk+1$型の素数は無限に存在する。

ガロア理論から見直す

定理1の証明を、ガロア理論の視点で見直してみましょう。$S$とは、ガロア群$G=\mathrm{Gal}(\mathbb{Q}(\zeta_q)/\mathbb{Q})$による$z=\zeta_q^{i_1}+\cdots +\zeta_q^{i_p}$の軌道$G\cdot z$に他なりません。その位数$|G\cdot z|$$z$$\mathbb{Q}$上最小多項式の次数であり、$\mathbb{Q}(z)/\mathbb{Q}$の拡大次数です。当然、$\mathbb{Q}(z)$$\mathbb{Q}(\zeta_q)$の部分体ですから、$[\mathbb{Q}(\zeta_q):\mathbb{Q}]=[\mathbb{Q}(\zeta_q):\mathbb{Q}(z)][\mathbb{Q}(z):\mathbb{Q}]$が成り立ちます。したがって、$[\mathbb{Q}(z):\mathbb{Q}]=|G\cdot z|$$[\mathbb{Q}(\zeta_q):\mathbb{Q}]=q-1$を割り切るのです。そして、与えられた$p$に対して、「$x^{p-1}+\cdots +1$$\mathbb{F}_q$に根を持つ」という条件を満たす$q$を選べば、$|G\cdot z|=p$となる$z$が存在するという訳です。

おわりに

ガロア理論を勉強しているとき、はじめは何が何だかわかりませんでしたが、具体例を考えてみると、その偉大さがわかってきました。やはり具体例を自分で作ってみることは大切ですね。

読んでいただきありがとうございました。

参考文献

[1]
雪江明彦, 整数論1 初等整数論からp進数へ
投稿日:202136

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