こんにちは. Kikachuです.
初等幾何研究シリーズ第3弾です.
今回はタイトルにあるように謎の点 $X(222)$ の作図定理を見つけたのでそれを紹介していきたいと思います.
では, 早速見ていきましょう!
まずは,見つけた定理を紹介しようと思います.
$\triangle ABC$ の内心を $I$ とおく.$\odot ABI$の $I$ についての接線と $BC,CA$ の交点をそれぞれ $D,E$.$\odot BCI$の $I$ についての接線と $AB,CA$ の交点をそれぞれ $F,G$.$\odot ACI$の $I$ についての接線と $AB,BC$ の交点をそれぞれ $H,J$ とする. $\triangle CDE,\triangle AFG,\triangle BHJ$ の外接円をそれぞれ, $\omega_C,\omega_A,\omega_B$ とする.このとき, $3$円 $\omega_C,\omega_A,\omega_B$ の根心が $X(222)$ に一致する.
これは,どうやって見つけたのかというと・・・・・・・・・・・・・・・
寝てたら思いつきました!(割とガチ)
嘘おっしゃんない( ^ω^)・・・
夢の中に出てきたのはこの形ではなく,$\triangle ABC$ の内心を $I$ とおいて,$\odot ABI$の $I$ についての接線と $BC,CA$ の交点をそれぞれ $D,E$とする.というところまででした.始めはOMCで使えそうじゃん!と思っていました.しかし,研究者魂みたいなものを感じて円を3つにしてみました.ここで最近のマイブームである根心を取ってみよう!となりました.すると今回の結果を得ました.
ざっくりとした経緯はこんな感じです.
では,これを証明していこうと思います.
まずは, $X(222)$ とはどのような点なのかを見ていきましょう.
$X(7)$(ジェルゴンヌ点)を基準とする $X(56)$ のチェバ共役点
定義を見ても,いまいちピンとこないと思うので一つずつ見ていきましょう.
まず, ジェルゴンヌ点とは以下のような定義でした.
$\triangle ABC$ において,その内接円と $BC,CA,AB$ の接点$D,E,F$があり, $AD,BE,CF$ は共点.
$G$がジェルゴンヌ点
今回の点$X(222)$はこの点$X(7)$の親戚に当たります.では, その家系図を紐解いていきましょう.
次に, $X(56)$について見ていきましょう.ETCでは次のような定義になっています.[2]
外接円 $\Gamma$ と内接円 $\omega$ の外相似中心
どういうこと?みたいになると思います.言い換えると,X(56) は、外接円の中心 $O$ と内接円の中心 $I$ を、半径 $R:r$ に外分する点という意味になります.
$X(56)$の意味 Chat GPT君に作図してもらいました
さらにこれに関してチェバ共役という操作を与えます.チェバ共役ってなんぞやという人が大半だと思うので,まずはチェバ三角形(cevian triangle)と反チェバ三角形(anticevian triangle)について説明します.
三角形 $ABC$ とその内部の点 $P$ を考えます. 直線 $AP$ と辺 $BC$ の交点を $D$, 直線 $BP$ と辺 $CA$ の交点を $E$, 直線 $CP$ と辺 $AB$ の交点を $F$ とする.
このとき, 三角形 $DEF$ を $P$ の cevian triangle(チェバ三角形) と呼ぶ.
これはよく見慣れているのではないかと思います.
では,反チェバ三角形とはどのような図形なのでしょうか?
三角形 $ABC$ と点 $Q$ を考える.
直線 $AQ$ と辺 $BC$ の交点を $D$ とし,直線 $AQ$ 上に,$Q$ と調和共役な点 $A'$ を,$A,D$ に関して取る。すなわち,
$ (A,D;Q,A')=-1 $とする.
同様に,直線 $BQ$ と辺 $CA$ の交点を $E$,直線 $CQ$ と辺 $AB$ の交点を $F$ とし,
$ (B,E;Q,B')=-1,\qquad (C,F;Q,C')=-1 $
となる点 $B',C'$ を取る.
このとき,三角形 $\triangle A'B'C'$ を $Q$ の anticevian triangle(反チェバ三角形) と呼ぶ。
調和共役とは,例えば$(A,B;C,D)=-1$とあったら,有向線分をもちいて, $\dfrac{\overline{AC}}{\overline{BC}}=\dfrac{\overline{AD}}{\overline{BD}}$が成り立つことを指します.
ここから
$P$ の cevian triangle と $Q$ の anticevian triangle の対応する頂点を結ぶ3直線の共点
ということが分かります.
これで前提知識はそろいました.これを $X(7)$ を基準として, $X(56)$ のチェバ共役をとれば定義1 になります.
$\triangle ABC$ の内心を $I$ とおく.$\odot ABI$の $I$ についての接線と $BC,CA$ の交点をそれぞれ $D,E$.$\odot BCI$の $I$ についての接線と $AB,CA$ の交点をそれぞれ $F,G$.$\odot ACI$の $I$ についての接線と $AB,BC$ の交点をそれぞれ $H,J$ とする. $\triangle CDE,\triangle AFG,\triangle BHJ$ の外接円をそれぞれ, $\omega_C,\omega_A,\omega_B$ とする.このとき, $3$円 $\omega_C,\omega_A,\omega_B$ の根心が $X(222)$ に一致する.
構図
これを今回はなるべく初等的に証明していこうと思います. かなり補助点や補助線を引きます.なぜそこに点をとると上手くいくのかなどの疑問が出てくるかもしれませんが,そういうものだと思って見てください.ここから天下り的な証明を書いていきます.
まず, 補題1を示す.
$\textbf{補題1(混線内接円と接点)}$
$A$-混線内接円を $\gamma_A$, その外接円 $\Gamma$ との接点を $T_A$ とする. $\gamma_A$ が $AB,AC$ に接する点は, それぞれ $F,G$ である.
$\textbf{証明1}$
円 $BCI$ の $I$ における接線は, 接弦定理と内心の角の性質から $AI$ に垂直である. 一方, Baca の混線内接円の作図補題[5]より, $\gamma_A$ の $AB,AC$ との接点を結ぶ直線は $I$ を通り $AI$ に垂直である.
したがって両直線は一致し, 接点は $F,G$ となる. よって
$$\omega_A=(AFG) $$
である. 以下, $B,C$ についても同様に考える. ∎
$\textbf{補題2(Monge の定理)}$
$A,T_A,X(56)$ は一直線上にある。
$\textbf{証明2}$
内接円を $\iota$ とする. 円 $(\iota,\gamma_A,\Gamma)$ を考えると, これらの組の相似中心は, それぞれ $(A,T_A,X(56))$ である.
実際, $A$ は $(\iota,\gamma_A)$ の外相似中心, $T_A$ は $(\gamma_A,\Gamma)$ の外相似中心, $X(56)$ は $(\iota,\Gamma)$ の外相似中心である.
したがって, Monge の定理より $A,T_A,X(56)$ は一直線上にある.
巡回的に, $B,T_B,X(56)$ および $C,T_C,X(56)$ も一直線上にある. ∎
$\textbf{補題3(反転による調和関係)}$
$S_A$ を $\omega_A$ と $\Gamma$ の $A$ 以外の交点とする. このとき $(AB,AC;AT_A,AS_A)=-1$
が成り立つ.
$\textbf{証明3}$
$A$ を中心とする反転を行い, 各点の像を $Y^*$ と書く.
$\Gamma$ は直線 $B^*C^*$ に, $\omega_A=(AFG)$ は直線 $F^*G^*$ に移る. したがって
$$ U=B^*C^*\cap F^*G^* $$
とおけば, $U=S_A^*$ である.
また, $\gamma_A$ の像である円は, 直線 $AB,AC,B^*C^*$ にそれぞれ $F^*,G^*,T_A^*$ で接する. 接線の長さが等しいことから
$$AF^*=AG^*,\qquad B^*F^*=B^*T_A^*,\qquad C^*G^*=C^*T_A^*. $$
ここで, 三角形 $AB^*C^*$ にメネラウスの定理を適用すると, 上の等式より
$$\frac{\overline{B^*U}}{\overline{UC^*}} = -\frac{\overline{B^*T_A^*}} {\overline{T_A^*C^*}}$$
を得る. これは $(B^*,C^*;T_A^*,U)=-1$ である. 反転で調和関係は保たれるから, $(B,C;T_A,S_A)=-1.$
これを点 $A$ から射影すれば $ (AB,AC;AT_A,AS_A)=-1 $ を得る.∎
$\textbf{補題4}$
$X(56)$ の反チェバ三角形を $A'B'C'$ とする. このとき
$$ AS_A=B'C',\quad BS_B=C'A',\quad CS_C=A'B' $$
が成り立つ.
$\textbf{証明4}$
補題2より $AT_A=AX$ である. 補題3から $(AB,AC;AX,AS_A)=-1. $
反チェバ三角形の定義より、$B'C'$ は $AX$ の調和共役線に一致する. したがって $AS_A=B'C'.$ 残りも巡回的に従う.∎
$\textbf{補題5(根心の存在定理)}$
$ A'\in\operatorname{Rad}(\omega_B,\omega_C), B'\in\operatorname{Rad}(\omega_C,\omega_A), C'\in\operatorname{Rad}(\omega_A,\omega_B). $
$\textbf{証明5}$
補題4と、$A,S_A$ がともに $\omega_A,\Gamma$ 上にあることから
$$ B'C'=AS_A =\operatorname{Rad}(\omega_A,\Gamma). $$
同様に
$$C'A'=\operatorname{Rad}(\omega_B,\Gamma), \qquad A'B'=\operatorname{Rad}(\omega_C,\Gamma). $$
したがって、根心の存在定理より、3円 $\omega_A,\omega_B,\Gamma$ の根心は $B'C'$ と $C'A'$ の交点 $C'$ である. ゆえに
$$ C'\in\operatorname{Rad}(\omega_A,\omega_B).$$
他の2つも巡回的に従う. ∎
$\textbf{補題6}$
内接円が $BC$ に接する点を $P$ とする. このとき
$P\in\operatorname{Rad}(\omega_B,\omega_C) $である.
$\textbf{証明6}$
問題文で定めた $H,J$ を用いる. 円 $(ACI)$ の $I$ における接線 $HJ$ は $BI$ に垂直であり, $IP\perp BC$ である. また, $BI$ は $\angle ABC$ の二等分線だから, $\triangle BPI\sim\triangle PIJ. $ したがって
$ BP\cdot PJ=PI^2=r^2, $
ただし $r$ は内接円の半径である。
同様に、円 $(ABI)$ の $I$ における接線を用いると $\triangle CPI\sim\triangle PID $ より
$ CP\cdot PD=PI^2=r^2. $ ここで, $B,P,J$ は一直線上にあり, $B,J\in\omega_B$ である. また, $C,P,D$ は一直線上にあり, $C,D\in\omega_C$ である. したがって, 有向方べきを用いれば
$$\operatorname{Pow}_{\omega_B}(P) =-r^2 =\operatorname{Pow}_{\omega_C}(P). $$
ゆえに (P) は両円の根軸上にある. ∎
補題5, 6より, $P,A'$ はともに $\omega_B,\omega_C$ の根軸上にある.したがって
$$ PA'=\operatorname{Rad}(\omega_B,\omega_C). $$
巡回的に
$$ QB'=\operatorname{Rad}(\omega_C,\omega_A), RC'=\operatorname{Rad}(\omega_A,\omega_B) $$
も成り立つ.
一方, $P,Q,R$ は内接円の接点からなる $X(7)$ のチェバ三角形であり, $A'B'C'$ は $X(56)$ の反チェバ三角形である. よって, $X(222)$ の定義から $$PA',\quad QB',\quad RC' $$
は $X(222)$ で共点.
これらは3円 $\omega_A,\omega_B,\omega_C$ の根軸そのものであるから、その根心は $\boxed{X(222)} $ である. ∎
いかがでしたでしょうか?
また新たな構図を見つける旅へ出ます.
おわり.
証明を書き直しました.