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黄金比および Lucas 数, Fibonacci 数の定義と再帰性

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黄金比の累乗 黄金比の累乗
前提知識 : 漸化式, 数学的帰納法
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黄金比

黄金比 黄金比
上の図の示すように, 正なる数$a,b$によって表された比率$a:b$が比例式
$$ \begin{align} a:b=b:(a+b) \end{align} $$すなわち
$$ \begin{align} \left(\frac{b}{a}\right)^2=\frac{b}{a}+1 \end{align} $$を満足するとき, これを黄金比 (golden ratio, aurea ratio) あるいは中末比, 外中比と言って, 比の値$a/b$もまた黄金比と言う.

黄金比

二次方程式$x^2=x+1$の二つの解のうち正なるものを黄金比, 負なるものを共役黄金比と呼んで, それぞれ$\phi,\bar{\phi}$と表す.

黄金比は, 下の図のように正五角形 (正五芒星) の至る箇所にて線分長の比率として現れることが知られている. これは, 正五角形の対角線がそれぞれの内角を三等分し, 三角形の相似関係から$a:b=b:(a+b)$なる線分長の関係式が導かれることに由るものである.
正五角形 正五角形

以下が成りたつ.
$\quad(1)\quad\displaystyle\phi=\frac{1+\sqrt{5}}{2},\ \bar{\phi}=\frac{1-\sqrt{5}}{2}.$
$\quad(2)\quad1.6180<\phi<1.6181.$
$\quad(3)\quad-0.6181<\bar{\phi}<-0.6180.$
$\quad(4)\quad\phi+\bar{\phi}=1,\ \phi\bar{\phi}=-1.$

$(1),(2),(3)\quad$ (省略). $\quad\Box$

$(4)\quad$二次方程式の解と係数の関係式より導かれる. $\quad\Box$

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Lucas 数列と Fibonacci 数列

黄金比$\phi$の累乗は, 有理数$a,b$を用いた$\dfrac{a+\sqrt{5}b}{2}$の式形に表せば, 順に
$$ \begin{align} \phi^0&=\frac{2+0\sqrt{5}}{2}\ (=1),\\\\ \phi^1&=\frac{1+1\sqrt{5}}{2}\ \left(=\frac{1+\sqrt{5}}{2}\right),\\\\ \phi^2&=\frac{3+1\sqrt{5}}{2}\ \left(=\frac{3+\sqrt{5}}{2}\right),\\\\ \phi^3&=\frac{4+2\sqrt{5}}{2}\ (=2+\sqrt{5}),\\\\ \phi^4&=\frac{7+3\sqrt{5}}{2},\\\\ \phi^5&=\frac{11+5\sqrt{5}}{2},\\\\ \phi^6&=\frac{18+8\sqrt{5}}{2}\ (=9+4\sqrt{5}),\\\\ \phi^7&=\frac{29+13\sqrt{5}}{2},\\\\ \phi^8&=\frac{47+21\sqrt{5}}{2},\\\\ \phi^9&=\frac{76+34\sqrt{5}}{2}\ (=38+17\sqrt{5}),\\\\ \phi^{10}&=\frac{123+55\sqrt{5}}{2},\\\\ \phi^{11}&=\frac{199+89\sqrt{5}}{2},\\\\ \phi^{12}&=\frac{322+144\sqrt{5}}{2}\ (=161+72\sqrt{5}),\\\\ &\ \ \vdots \end{align} $$のように計算される. $\sqrt{5}$の無理数性に留意して, 任意の$n\in\mathbb{Z}_{\geqslant0}$について
$$ \begin{align} \phi^n=\frac{a\_n+\sqrt{5}b\_n}{2} \end{align} $$なる有理数列$(a_n)_{n\geqslant0},(b_n)_{n\geqslant0}$を定めれば, 恒等式$\phi^{n+2}=\phi^{n+1}+\phi^n$の成立のため
$$ \begin{align} \begin{cases} a_{n+2}=a_{n+1}+a_n\\\\ b_{n+2}=b_{n+1}+b_n \end{cases} \end{align} $$を得, 再帰的に, $a_n,b_n$はいずれも整数値のみを取りうることが判る. これらの数列$(a_n),(b_n)$を, 十九世紀フランスの数学者 François Édouard Anatole Lucas および十二世紀, 十三世紀イタリアの数学者 Leonardo Fibonacci (Leonardo Pisano) に因んで, それぞれ Lucas (の) 数列, Fibonacci (の) 数列と言い, 記号では$(L_n),(F_n)$と書きあらわす.

このような導入は数列$(L_n),(F_n)$の満足する漸化式のみならず初期値の必然性をも理解するにあたり極めて自然で重要なるものであるが, 現実このような定義による認識はあまり広くに及んでいないように思われる. 遺憾ではあるが, ここでは線型回帰数列としての$(L_n),(F_n)$の性質に定義を明けわたし, 上記をそこから証明される定理と見なす.

整数列$(L_n)_{n\geqslant0},(F_n)_{n\geqslant0}$であって, 漸化式および初期値
$$ \begin{align} \begin{cases} L_{n+2}=L_{n+1}+L_n,\quad L_0=2,\ L_1=1\\\\ F_{n+2}=F_{n+1}+F_n,\quad F_0=0,\ F_1=1 \end{cases} \end{align} $$によって定められるものそれぞれ Lucas 数列 (の正部分), Fibonacci 数列 (の正部分)と呼び, その項を Lucas 数, Fibonacci 数と呼ぶ.

先にも見たように, 各数列は
$$ \begin{align} &(L_n)_{n\geqslant0}=2,1,3,4,7,11,18,29,47,76,123,199,322,\ldots,\\ &(F_n)_{n\geqslant0}=0,1,1,2,3,5,8,13,21,34,55,89,144,\ldots \end{align} $$のように始まる.

黄金比の累乗

任意の$n\in\mathbb{Z}_{\geqslant0}$に対して, $\begin{cases}\displaystyle\phi^n=\frac{L_n+\sqrt{5}F_n}{2}\\\displaystyle\bar{\phi}^n=\frac{L_n-\sqrt{5}F_n}{2}\end{cases}$が成りたつ.

$n=0,1$のときは正しい. それぞれの等式について, ある$n+1,n$について等式が成りたつならば, それらを辺々足しわせることで$n+2$の場合が得られるので, 再帰的に命題は示された. $\quad\Box$

定義式$\phi^2=\phi+1$の両辺に$\phi^n$を掛けて得られる等式$\phi^{n+2}=\phi^{n+1}+\phi^n$を用いており, $\bar{\phi}$についても同様である.

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負数インデックス

Lucas 数列や Fibonacci 数列が$n\geqslant0$において満たしていた諸性質を崩すこと無く$\mathbb{Z}$の全域にまでインデックスを拡張するには, それらにとって充分であるような条件, すなわち定義を引きつげばよろしい. そこで, 次のように Lucas 数列および Fibonacci 数列をいま一度定義する.

整数列$(L_n),(F_n)$であって, 漸化式および$L_0,F_0,L_1,F_1$の値
$$ \begin{align} \begin{cases} L_{n+2}=L_{n+1}+L_n,\quad L_0=2,\ L_1=1\\\\ F_{n+2}=F_{n+1}+F_n,\quad F_0=0,\ F_1=1 \end{cases} \end{align} $$によって定められるものそれぞれ Lucas 数列, Fibonacci 数列と呼ぶ.

これに従えば, $n\in\{-1,-2,-3,-4,-5\}$のときは
$$ \begin{align} &L_{-1}=L_1-L_0=-1,\\\\ &L_{-2}=L_0=L_{-1}=3,\\\\ &L_{-3}=L_{-1}-L_{-2}=-4,\\\\ &L_{-4}=L_{-2}-L_{-3}=7,\\\\ &L_{-5}=L_{-3}-L_{-4}=-11,\\\\ &\ \\\\ &F_{-1}=F_1-F_0=1,\\\\ &F_{-2}=F_0-F_{-1}=-1,\\\\ &F_{-3}=F_{-1}-F_{-2}=2,\\\\ &F_{-4}=F_{-2}-F_{-3}=-3,\\\\ &F_{-5}=F_{-3}-F_{-4}=5 \end{align} $$と計算され, 等式$L_{-n}=(-1)^nL_n,\ $$F_{-n}=(-1)^{n+1}F_n$の成立が察せられるであろう.

インデックスの符号の反転公式

任意の$n\in\mathbb{Z}$に対して, $\begin{cases}L_{-n}=(-1)^nL_n\\ F_{-n}=(-1)^{n+1}F_n\end{cases}$が成りたつ.

$n=0,1$のときは正しい. それぞれの等式について, ある$n+1,n$について等式が成りたつならば, それらを辺々足しわせることで$n+2$の場合が得られ. また辺々を引けば$n-1$の場合が得られるので, 再帰的に命題は示された. $\quad\Box$

インデックスの符号の反転は整数論的にも大いなる意義を有する. たとえば, あらゆる整数$n$について
\begin{align} n\equiv1\ \ ({\rm mod}\ 6)\Longrightarrow F_n\equiv1\ \ ({\rm mod}\ 4) \end{align}が成立することが判明しているとき, $n$$-n$に置きかえることによって
\begin{align} n\equiv5\ \ ({\rm mod}\ 6)\Longrightarrow F_n\equiv1\ \ ({\rm mod}\ 4) \end{align}を直ちに示すことができる.

黄金比の累乗

任意の$n\in\mathbb{Z}$に対して, $\begin{cases}\displaystyle\phi^n=\frac{L_n+\sqrt{5}F_n}{2}\\\displaystyle\bar{\phi}^n=\frac{L_n-\sqrt{5}F_n}{2}\end{cases}$が成りたつ.

$n=0,1$のときは正しい. それぞれの等式について, ある$n+1,n$について等式が成りたつならば, それらを辺々足しわせることで$n+2$の場合が得られ. また辺々を引けば$n-1$の場合が得られるので, 再帰的に命題は示された. $\quad\Box$

相互関係式

任意の$n\in\mathbb{Z}$に対して, $\begin{cases}L_n=F_{n+1}+F_{n-1}\\5F_n=L_{n+1}+L_{n-1}\end{cases}$が成りたつ.

$n=0,1$のときは正しい. それぞれの等式について, ある$n+1,n$について等式が成りたつならば, それらを辺々足しわせることで$n+2$の場合が得られ. また辺々を引けば$n-1$の場合が得られるので, 再帰的に命題は示された. $\quad\Box$

相互関係式を適用することによって, $L_n$あるいは$F_n$を, 次数を変えることなく$F_{n+1},F_{n-1}$あるいは$L_{n+1},L_{n-1}$の式へと書きかえることができる.

連立漸化式への書きかえ

任意の$n\in\mathbb{Z}$に対して, $\begin{cases}\displaystyle L_{n+1}=\frac{L_n+5F_n}{2}\\\displaystyle F_{n+1}=\frac{L_n+F_n}{2}\end{cases}$が成りたつ.

相互関係式を代入すれば自明な等式と成るので, 同値変形によって証明することができる (詳細略). $\quad\Box$

これは, $\overrightarrow{x}_n=\left(\begin{array}{c}L_n\\F_n\end{array}\right)$と置けば
\begin{align} \overrightarrow{x}_{n+1}=\left(\begin{array}{cc}1/2&5/2\\\\1/2&1/2\end{array}\right)\overrightarrow{x}_n \end{align}と表現することもでき, 各変量の持つ情報を大きくしたことによって, 一つ階数の低い二項間漸化式により表現されたと解することができる.

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投稿日:2020117
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ゆう
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好きな整数は 0, 1, 1, φ, 2, 5, 6, 12, 89 など. || フィボナッチ数列 bot (@Aureus_N) 管理人. || hatena blog || indeterminate equations involving Fibonacci numbers || Disquisitiones Arithmeticae...

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