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素数は無限個存在する

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$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathrm{div}} \newcommand{division}[0]{÷} \newcommand{grad}[0]{\mathrm{grad}\ } \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{rot}[0]{\mathrm{rot}\ } \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

素数とは

素数とは,1と自分自身以外に約数を持たない正の整数である。例としては,$2,3,5,7,11,13,17,19,23,\cdots$が挙げられる。これまで,素数にまつわる様々な定理が証明されてきたが,素数の規則性についてはまだ解明されていない。ミレニアム懸賞問題の1つである「Riemann予想」が解かれれば,素数の規則性が解明されるのではないかと言われているが,未解決である。

素数は無限個存在する

「素数は有限個しか存在しないのか?」という素朴な疑問が生まれる。結論は素数は無限個存在する。この事実は紀元前から知られており,様々な数学者によって証明がなされた。

Euclidによる証明(最もシンプルで有名!)

Euclid

素数が有限個($n$個)存在すると仮定する。その素数全体を$p_{1}, p_{2}, \ldots , p_{n}$と表すことにする。ここで,
$$ p := p_{1} p_{2} \cdots p_{n} + 1 $$
という数を考えると,$p$はいずれの$p_{i}\ (1 \leq i \leq n)$でも割り切れない。よって,$p$$n+1$個目の素数となるが,これは素数が$n$個であることに反する。よって,素数は無限個存在する。

Eulerによる証明

Euler

素数が有限個($n$個)存在すると仮定する。その素数全体を$p_{1}, p_{2}, \ldots , p_{n}$と表すことにする。素因数分解の一意性により,
$$ \prod_{i=1}^{n} \sum_{k=1}^{\infty} \dfrac{1}{p_{i}^{k}} = \sum_{k=1}^{\infty} \dfrac{1}{k} $$
この式の右辺は調和級数であり,無限大に発散する。左辺については等比無限級数の公式から
$$ \prod_{i=1}^{n} \sum_{k=1}^{\infty} \dfrac{1}{p_{i}^{k}} = \prod_{i=1}^{n} \dfrac{p_{i}}{p_{i}-1} $$
であり,これは有限確定値である。これは右辺が発散することに反する。よって,素数は無限個存在する。

Fermat数を用いた証明

Fermat数とは,
$$ F_{n} := 2^{2^{n}} +1 $$
を満たす数である。例えば,$3,5,17,257,\cdots$はFermat数である。この数から素数の無限性が証明できるというのだから驚きである。

まず,Fermat数の漸化式を与えよう。$2^{2^{n}}+1 = \left( 2^{2^{n-1}} \right)^2 + 1$であることに注意すると,
$$ F_{n} - 2 = 2^{2^{n}} - 1 = (2^{2^{n-1}} + 1)(2^{2^{n-1}} - 1) = F_{n-1}(F_{n-1}-2) $$
よって,次の漸化式
$$ F_{n} - 2 = F_{n-1}(F_{n-1}-2) $$
が得られる。この漸化式を順次適用すると
$$ F_{n} - 2 = F_{n-1}(F_{n-1}-2) = F_{n-1}F_{n-2}(F_{n-2}-2) = \cdots = F_{n-1}F_{n-2} \cdots F_{2} F_{1} F_{0} (F_{0} -2) $$
となる。$F_{0} = 2 + 1 = 3$なので,次の命題が得られる。

Fermat数の漸化式

$$ F_{n} = \begin{eqnarray} \left\{ \begin{array}{ll} F_{n-1}F_{n-2} \cdots F_{2} F_{1} F_{0} F_{0} + 2 & (n \geq 1)\\ 3 & (n = 0) \end{array} \right. \end{eqnarray} $$

命題1を使えば,次の命題が証明できる。

相異なる0以上の整数$m, n$に対して,$F_{m}$$F_{n}$は互いに素である。

$m$$n$は入れ替えても一般性を失わないので,$m < n$とする。命題1より
$$ F_{n} = F_{n-1}F_{n-2} \cdots F_{m} \cdots F_{1} F_{0} + 2 $$
が成り立つ。ここで,$F_{m}$$F_{n}$を共に割り切る素数が存在するとし,それを$p$とする。このとき,上の式の右辺第1項は$p$で割り切れる。$F_{n}$$p$で割り切れるが,右辺第2項の$2$も割り切らなければならないので,$p=2$であることがわかる。一方,$F_{m}$$F_{n}$は定義よりどちらも奇数なので,素因数$2$を持たない。よって,$F_{m}$$F_{n}$は互いに素である。

この命題2が証明できれば,素数の無限性が証明できる。

素数の無限性

各Fermat数$F_{n}$($n \geq 0$)に対して,その素因数$p_{n}$をそれぞれ1つ選ぶ。命題2より,Fermat数は互いに素なので,これにより得られた素数$p_{1}, p_{2}, \ldots $はいずれも相異なる。Fermat数は無限に存在するので,このようにすれば無限に素数を生成できる。よって,素数は無限個存在する。

投稿日:2021317

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