この記事では「円周率」および「以上の整数に対する自然対数」が無理数であることを証明します.ここで紹介する円周率の無理性の証明はBourbakiの教科書に載っているものですが、実はの無理性もほとんど同じように証明できます.見通しがよく覚えやすい方法なので、「円周率の無理性の証明を何か一つ覚えておきたい」という方にもおすすめです.
方針
の無理性の証明の概略は次の通りです.ただし多項式のにおける高階微分係数とはの値のことを指します.
Step 1. を正の有理数とすると、での高階微分係数が全て整数であるような多項式であって、上で非常に小さい正の値を取るものが構成できる.
Step 2. 一方で多項式に対し、の値はでのの高階微分係数を足し引きすることで表せる(ここにという数の特殊性が効いている).
Step 3. が有理数だと仮定し、(1)でとして多項式を取ると、(2)よりは整数となる.一方では上で非常に小さい正の値を取るのでとなって矛盾する.
の無理性の証明もほとんど同じで、用いる積分をに置き換えるだけです.
多項式の構成
まずStep 1を説明します.
有理数および実数に対し、以下の条件を満たす実数係数多項式が存在する:
(1) におけるの高階微分係数は全て整数である.
(2) の範囲でである.
と既約分数表示する.十分大きい正整数に対してが条件を満たすことを示す.
(1) の高階微分係数は
と表せる.右辺にを代入するとの項はとなり、の項は整数となる.同様にを代入しても整数になることが確かめられる.
(2) 定義よりにおいてが成り立つ.右辺はでに収束するので、を十分大きく取ればこの範囲でとなる.
積分値の整数性
Step 2はとても簡単です.
を実数係数多項式とする.のにおける高階微分係数が全て整数ならば、積分値
も整数である.
部分積分を繰り返すと
となり、この値はのにおける高階微分係数の整数係数線型結合で表せるのでよい.
の無理性
が有理数であると仮定して矛盾を導く.命題2より以下の条件を満たす実数係数多項式が存在する:
- におけるの高階微分係数は全て整数である.
- の範囲でである.
命題3よりも整数となるが、2つめの条件よりなので矛盾する.
の無理性
の無理性を示すには命題3の代わりに次の命題を用います.
を実数係数多項式とし、を以上の整数とする.のにおける高階微分係数が全て整数ならば、積分値も整数である.
部分積分を繰り返すと
となり、この値はのにおける高階微分係数の整数係数線型結合で表せるのでよい.
が有理数であると仮定して矛盾を導く.命題2より以下の条件を満たす実数係数多項式が存在する:
- におけるの高階微分係数は全て整数である.
- の範囲でである.
命題3よりも整数となるが、2つめの条件よりなので矛盾する.