こんにちは.
いきなりですが, という関数は, 回合成すると恒等写像に戻ります.
次にという関数を考えると, これは回合成すると恒等写像に戻ります.
では一般に, 回合成して初めて恒等写像になる関数はどのようなものがあるでしょうか.
完全に一般の関数だとそれはあるでしょうが考えるのが難しいので, 以下では一次分数変換に限定し, また実数係数のものを考えます. (そうしないと, という自明な例が存在してしまうので.)
証明(クリックして開く)
まず前提として,
実数係数の一次分数変換全体の成す群(積は合成による)は,
一次分数変換の合成は行列の積で計算できるというやつです. 証明は省略します. (
Wikipedia
参照)
ということで, 行列 がを満たすが存在する必要十分条件が上のように書けることを示します.
(の証明)
ですから, 最小多項式はの約数であり平方因子を持たないので, は(複素数の範囲で)対角化可能です. そこで固有値をとすると
が成り立ちます.
ここでとは実数係数2次方程式の解より共に実数かまたは共役な複素数です.
・共に実数の場合
が恒等写像でないことからなので, が奇数の場合はこれはあり得ず, が偶数の場合はとは倍の関係にあります.
・共役な複素数の場合
が正と負の場合があることに注意して, とはの実数倍とその共役になります.
いずれのパターンでも と書くことができます.
ここで
より(なので)
となり, 示されました.
(の証明)
逆に, が成り立つとき となるので, 特にでは対角化可能であり, なのでです.
ということで, 実数係数の範囲では任意に対して回合成して初めて元に戻る一次分数変換があることがわかりました. これを整数係数に限定すると次のようになります.
整数係数の一次分数変換に対し, となる最小のはに限る.
これは,
私の過去の記事
によりなるが上記に限られることからわかります.
ということで, 回合成して初めて元に戻る関数はというと, となるを持って来れば良いので, 例えば などになります.(信じられません!)
ここまで読んでくれた方, ありがとうございました.