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この記事では, $\cos$の無理数性についての証明を書こうと思います.
この証明は私が思いついたものではないのですが, すごいと思ったのでここに書こうと思います.
主張は以下です.
ただし, $2\pi\,\Q$とは, $2\pi$の有理数倍の数全体の集合のことです. 即ちこの主張は, $\cos$(有理数)${}^\circ{}$が有理数であるのは有名角に限られる, というものです.
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(証明)
$\Leftarrow$は明らかなので, $\Rightarrow$を示します.
ある$\theta$が $\cos\theta\in\Q\ \wedge\ \theta\in2\pi\,\Q$ を満たすと仮定します.
$a_n=\cos2^n\theta$とおきます. $a_0=\cos\theta,\ a_{n+1}=2a_n^2-1$ となります.
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まず, 初項と漸化式より帰納的に$a_n\in\Q$が分かります.
次に, $\theta\in2\pi\,\Q$ であることから, $\cos2^n\theta$の取り得る値は有限個であることが言えます. (これは, $\frac{2^n\theta}{2π}$の小数部分が有限通りしかないことからわかります.)
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従って, 自然数$l,m$であって, $l< m$かつ$a_l=a_m$となるものが存在します.
ここで, $a_l,a_{l+1}\ldots,a_m$のうちで, 既約分数表示したときの分母が最大であるものを$a_k$($l\leqq k< m$)とし, $\ds a_k=\frac qp$ とおきます. ただし, $p$は自然数, $q$は整数, $p$と$q$は互いに素であるとします. ($q=0$のときは互いに素の条件は無しです.)
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すると, $\ds a_{k+1}=2a_k^2-1=\frac{2q^2-p^2}{p^2}$ となりますが, $a_l,a_{l+1}\ldots,a_m$のうちで分母の最大値は$p$であったので, 少なくとも$2q^2-p^2$は$p$で割り切れなくてはいけません.
従って, $2q^2$は$p$で割り切れなくてはいけません. $p,q$が互いに素であったことと $q\leqq p$ に注意すれば, このような$p,q$は
$$ (p,q)=(p,0), (1,\pm1), (2,\pm1)$$
に限られることが容易に分かります. 即ち
$$ \frac qp=\cos2^k\theta=0,\pm\frac12,\pm1$$
が分かりました.
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ところでこのような$2^k\theta$に対して半角の公式を適用していくと, $\cos\theta$は上の値以外の有理数には成り得ないことが簡単に分かります.
従って, $\ds\cos\theta=0,\pm\frac12,\pm1$ であることが証明されました.
$$ \Box$$
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読んで下さった方, ありがとうございます.
私もこんなすごい証明を考えられるようになりたいものです.
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