ここでは東大数理の修士課程の院試の2006A03の解答例を解説していきます。解答例はあくまでも例なので、最短・最易の解答とは限らないことにご注意ください。またこの解答を信じきってしまったことで起こった不利益に関しては一切の責任を負いませんので、参照する際は慎重に慎重を重ねて議論を追ってからご参照ください。また誤り・不適切な記述・非自明な箇所などがあればコメントで指摘していただけると幸いです
$K$を体とし、$V$を$K$線型写像$K^3\to K$全体の為す$K$線型空間とする。$f_1,f_2,f_3\in V$を取り、$K^3$の部分線型空間
$$
W_1=\mathrm{Ker}(f_2)\cap \mathrm{Ker}(f_3)
$$
$$
W_2=\mathrm{Ker}(f_3)\cap \mathrm{Ker}(f_1)
$$
$$
W_3=\mathrm{Ker}(f_1)\cap \mathrm{Ker}(f_2)
$$
をとる。このとき以下の条件
は同値であることを示しなさい。
(i)から(ii)を示す。まず$W_1\subseteq W_2$であるとする。このとき条件(i)の単射性から$W_1=0$である。しかし$\mathrm{Ker}(f_2),\mathrm{Ker}(f_3)$のいずれも$3$次元空間の次元$\geq2$の部分空間なので、これはあり得ない。よって$w\in W_1\backslash W_2$を取ることができる。ここで$a_1f_1+a_2f_2+a_3f_3=0$なる$a_i\in K$を取ったとき、$a_1f_1(w)=0$かつ$f_1(w)\neq0$であるから$a_1=0$が従う。以上の議論を$1,2,3$を入れ替えて行えば$a_2=a_3=0$も従う。よって(ii)が示せた。
次に(ii)から(i)を示す。まず$\mathrm{Ker}(f_i)$たちが$0$以外の共通の元$w\in K^3$を持つとすると、$w$に於いて$0$にならない線型写像$K^3\to K$を$f_i$たちの和として表せないので(ii)に矛盾する。よって$\mathrm{Ker}(f_i)$たちの共通部分は$0$である。ここで$w_i\in W_i$を$w_1+w_2+w_3=0$を満たすように取ると、
$$
f_1(w_1)=f_1(w_1+w_2+w_3)=0
$$
であるから、
$$
w_1\in \mathrm{Ker}(f_1)\cap W_1=0
$$
つまり$w_1=0$が従う。以上の議論を$1,2,3$を入れ替えて行えば$w_2=w_3=0$も従う。よって包含の誘導する線型写像$W_1\oplus W_2\oplus W_3\to K^3$は単射である。ここで$W_i$たちは次元$\geq1$の部分空間であったから、同型であること、つまり(i)が従う。