前の記事aで考えた問題について、条件を満たす分割が存在すると仮定する。Pisot 数の最小値に関する Siegel の定理を用いて、このとき必ず$m\le3$であることを示す。
$$
H_{n,m}(X)=X+X^2+\cdots+X^n-m
$$
とおく。
$H_{n,m}$は$(0,1)$にただ一つの零点$\alpha$をもち、それ以外の零点$z$はすべて$|z|>1$を満たす。
$H_{n,m}$は正の実軸上で狭義単調増加であり、$H_{n,m}(0)<0< H_{n,m}(1)$だから、$(0,1)$の零点$\alpha$は一意である。
あとは$H_{n,m}(z)=0,\ |z|\le1$なら$z=\alpha$であることを示せばよい。
$$
(X-1)H_{n,m}(X)=X^{n+1}-(m+1)X+m
$$
より、$r=|z|$とおけば
$$
(m+1)r=|z^{n+1}+m|\le r^{n+1}+m.
$$
したがって
$$
f(r)=r^{n+1}-(m+1)r+m\ge0
$$
である。一方、$f(\alpha)=f(1)=0$であり、$f$は$(0,\infty)$上狭義凸だから$\alpha< r<1$で$f(r)<0$である。よって$r\le\alpha$または$r=1$である。
$r=1$なら上の三角不等式で等号が成立し、$z^{n+1}=1$となる。したがって
$$
(m+1)z=z^{n+1}+m=m+1
$$
より$z=1$だが、$H_{n,m}(1)\ne0$なので矛盾する。ゆえに$r\le\alpha$を得る。
そこで不等式
$$
m=|z+z^2+\cdots+z^n|
\le r+r^2+\cdots+r^n
\le\alpha+\alpha^2+\cdots+\alpha^n
=m
$$
はすべて等号であり、$r=\alpha$かつ三角不等式の等号条件から$z>0$である。よって$z=\alpha$となる。
$\alpha$の最小多項式を$U$とすると、前の記事の議論より$U$は$U(0)=-1$を満たす整数係数モニック多項式である。したがって$\alpha$は代数的単元であり、$\beta=\alpha^{-1}>1$も代数的整数と分かる。
さらに、$\alpha$の自分以外の共役$\alpha'$はすべて$|\alpha'|>1$だから、$\beta$の自分以外の共役はすべて$\left|\frac1{\alpha'}\right|<1$を満たす。従って$\beta$は Pisot 数である。
問題の分割が存在するならば$m\le3$に限られる。
Pisot 数の最小値を$\rho$とする。Siegel の定理により$\rho=1.324717957\ldots$であり、$\rho$は$X^3-X-1$の正の実根である。したがって$\beta\ge\rho$となる。一方、
$$
m
=
\sum_{k=1}^n\alpha^k
=
\sum_{k=1}^n\beta^{-k}
<
\sum_{k=1}^{\infty}\beta^{-k}
=
\frac1{\beta-1}
$$
なので、
$$
m
<
\frac1{\beta-1}
\le
\frac1{\rho-1}
=
3.0795\ldots
$$
を得る。
従って、$m\ge4$の場合には分割は存在しない。残るのは$m=2,3$の場合だけである。